リース契約の盲点と、予防策。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

福岡の中心部・天神駅真上の場所にある法律事務所の弁護士です!
日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

テーマ:
TEIKOKU News九州版(3/29版)p6「多重リースの末に ビータの生活」という記事を読んでいました。
多重リースのお話です。

概要としては、1個の物件に、A社をユーザーとする複数のリース契約を絡ませる手法(リース会社B1、B2、B3)でした。具体的には、
①リース会社とディーラーC社間で売買取引が行われる(B→Cに売買代金(お金)が流れる)、
②AとBら間でリース契約が行われる(A→Bらにリース料を支払う)

よくある、リースを利用した資金繰りの事例です。
リースがなんで資金繰りになるのかというと、この事例で言うと、①において、一時的に多額のお金が入る→CからAに資金が還流する(ACはグループ会社)→Aは、ちょぼちょぼとリース会社にリース料を支払う(返済)という流れができるからです。

Aは、一時的に復活するかもしれません。
が、リース料ってのは高く設定されるので(物品を購入する資金の融資ですから)、総支払額は、最初にB→Cに支払われた売買代金より高くなることに決まっています。
つまり、その分のお金を工面できなければ、Aは破綻します。

私が、今回の事例がちょっと特殊だなと思ったのは、以下の点です。
a ACがグループ会社で、C→Aに資金還流があったということ(普通は、Cに相当する立場の人が自分でこれをやることが多い)。
b1個の物件に複数のリース契約が絡んでいたこと。
なんでbみたいなことが起きるのかと思うでしょう?

物品には通常、リース会社が、物件を特定するためのシール等の識別票を貼っています。ところが、リース会社の中には、物件管理が甘く、どの物件をリースしてるんだかわからないのが結構あります(というか、それが普通なのかも)。

しかも、実際に物品が移動するのは、ディーラー(C)とユーザー(A)間ですから、リース会社はそこに関与しないことも多く、Aが検収届をリース会社(B)に出せば、引取り完了とみなして事足れり、とすることが多いと思います。
すると、ユーザーが悪意を持てば、物品がなくてもリース契約ができる=ディーラーに(リース会社からの)売買代金が行き渡る、ということもできます。

ここが、リースの盲点なんですよね。
リース会社が、常に検収に立ち会い、かつ、物品に、剥がせないようなきっちりとした識別票を貼って、物品の製造番号とつなげておけば、ある程度防げる話なのかなと思ったりします。

なお、TEIKOKU Newsの記事では、リース取引の会計処理、すなわち、リースがB/Sの資産・負債に計上される売買取引ではなく、脚注に計上される賃貸借取引であり、多くの会社が脚注を省略して記載しているから、リース残高が第三者にはわからないから、ということを、発覚が遅れた一つの原因として挙げていました。これも面白い視点ですね。
ただ、帳簿までいちいち確認し、リースユーザー側も脚注までいちいち記入処理するというのは、多くの場合、現実的でないような気もします。

そうすると、リース会社側としての予防策は、
1 物品をキチンと管理すること(検収に立ち会う・タグを取り付ける・製造番号まできっちり把握しておく(工 業製品ならこれでいい。ただTEIKOKUNewsで紹介された事例では難しいかも)
2 A・Cに相当する会社の関係を、きっちり調べておくこと。ACがズブズブだと、多重リース・カラリースが  やりやすい。
3 A側でやたらとリースを勧めたり、急に売買の取扱い件数が増えていたりしないか注意する。

といったところになるでしょうか。

リースで頭を痛めるのは、破産の場面だったりします。
物品が特定できないのはつらい。本当に。

AD