【読書】「般若心経」を読み解く/現代禅研究会 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

「般若心経」を読み解く/現代禅研究会




この本は、臨済宗など禅宗の僧侶が集まって行われている自主勉強会
「現代禅研究会」
の方20名の方の共著です。
般若心経の本はたくさんありますが、
この本、いろんな意味でとてもわかりやすいと思います。

ちゃんと学んだ人に比べたら足元にも及びませんが、
それでもおそらくは一般の人よりも僕は仏教についての知識はあるほうだと思います。
普通の人はそんな人が書いたものを読んでも逆にしっくりこないのではないか、
という気もします。
「お前だけわかった気になってるだろ」という感じで。

「宗教なんて興味がない」
「仏教なんて辛気臭い」
そんな風に思われている方、まずはこのブログを読んでみてください。
その上で、判断されるのがこの本を手に取るかどうかを決めるのがいいと思います。
■ぷぅコッコの一期一会

全体の構成は、般若心経を逐語に切り分け、
それぞれのパーツについて各担当の方が解説を加えるという形になっています。
解説部分はただの逐語訳ではありません。
それそれの方が自分の体験に基づいて日常に即した解説をされています。
場面によっては、般若心経や禅宗という立場も離れ、
真言宗の開祖・空海の話や、
ノートルダム清心学園のの渡辺和子さんの
置かれた場所で咲きなさい
を引用されています。

■『「空」とはどういう意味でしょうか。「固定的な実体がない」というのが、その答えです。(p93)

仏教の教え、般若心経の根本思想は「空」だといわれます。
しかし、これほどわかりにくいことはありません。僕もよくわかっていません(苦笑)
ただ少なくとも「空っぽ」という意味でとらえないようにだけはしたいと思います。
厳密に突き詰めるととんでもなく難しい世界に迷い込みかねないと思いますが、
正規な仏道修行をしている身ではない、俗世を生きる僕たちが、
浮世の処世としてまず覚えておく分には
「固定的な実体がない」
でいいのだと思います。

これって普遍的なことはない、というこで消極的な意味にとらえられがちですがそれは違うと感じています。

別な言い方をすると
「絶えず変化し続けている」(p184)
ということになるのだ、とも書かれています。

たとえば、成長する、ということは変化し続けることです。
いまの自分を固定的にとらえてしまえば成長はあり得ない。
「空」という言葉はそうとらえておくのがいいと僕は思っています。

■しかし、これでわかったと思ってはいけません。温泉のガイドブックを見ても体が温まるわけではありません。『禅関策進』という語録の中では「ただ書物だけにつて語句を読み覚えて、禅道をさぐり求めるようなことはするな。禅道は書物の中にはありはしない」といわれています。「冷暖自知」つまり、水が熱いか冷たいかは自分自身で体験してみなければわからないということです。(p218)

現代は情報があふれている時代だといわれています。
知ろうと思って調べればたいがいのことは「知る」ことはできるでしょう。
ただそれで終わってしまうことが多いのではないかと思うことがよくあります。

本を読みました、新しい知識を得ました、ひとつ賢くなりました。
読書がこれで終わってしまっていることが多くはないですか?
得た知識を使って何かを実践する、そうした体験をしていかないと
本当の意味で知ったことにはならないのではないかと思います。


■苦しいときに楽なことや楽しいことを思うと、とてもつらくなります。また楽しいときに苦しいときのことを思うと、つまらなくなります。苦しいときには苦しいものだ。楽しいときには楽しいものだと腹を据えることです。(p220)

いわゆる「ポジティブシンキング」は
「苦しいときに楽なことや楽しいことを思え」
という考え方だといってもいいと思います。

苦しいことに目を向けるるな、楽しいことだけを考えよ、ということです。
で、僕はこうした考え方がが苦手です(苦笑)。

僕が濃厚に影響を受けている和田裕美さんの「陽転思考」のキーワードは
「事実はひとつ、考え方はふたつ」
人によって受け止め方が違うと思いますが、僕にとっての陽転思考は
「苦しいことは苦しいことだという事実として受け止める」
ところから始まるものだと思っています。


帯には
「20人の禅僧が心に残る出来事から伝える『生きる智慧』」
と書かれていますが、まさにそんな内容でした。

「般若心経」は日本人にいちばん愛されているお経だと言って過言ではないと思います。
日本仏教各宗派、それぞれ重んじるお経は違いますが、
般若心経を重要視しない宗派はひとつしかありません。
神社でもこのお経を読誦するところまります。

それだけ日本に根付いたお経です。
この本と限りませんが、般若心経関連を本を読んでみることは、無駄にはならないと思います。
日本人の根っこの感性に触れることができるかもしれません。

PS
*ちなみに僕の立ち位置は真言密教派なのですが、実は禅宗についてはリスペクトしています。日本人の道徳観・道徳行為が作られるうえで禅宗が果たした役割は大きいと思っています。卑近な例をあげれば、学校で生徒が教室の掃除をする。アメリカではこれは「清掃婦の仕事を奪う行為」として退けられることが多いですが、日本ではそんなことは考えない。やるのが当たり前。これって禅宗の修業から派生したものだ思います。