昔から若者は怒れるのである。時にはイカレてしまう事もある。若気の過ちとも云うが生涯過ちを犯さない人などいないので、60になって道を踏み外す人だっているからね。

むしろ若い時に散々、はっちゃけたような人に面白い人間も多い。命を落とす事もなく晩年を迎えれば、あの頃は無茶でバカやったなぁなどと笑い話にもなるんろうね。

イスラム事件の北大生も、さんざん莫迦だトチ狂った輩だと揶揄されているよね。テレビで見たニュースでも、どこか痛んでるなぁと思ったけれど。

ニュースで初めは逮捕と出ちゃって実名も出たんだけど、報道のフライングだった。事情聴収だけだったから途中で北大生になったね。元教授もジャーナリストも最初は実名が出てたけど。これは咎められないのかね。

ここでの問題点の一つは、私戦予備罪!ってどんな罪かだよね。聞いたこと無い罪だけど。過去に適用されたことあるのかな。凄い時代になったね。自首すれば刑が免除されるという特殊な罪なんだよね。

これね。
刑法第4章 国交に関する罪 (私戦予備及び陰謀 第93条;外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。

ところが判例がないらしい。昔の北一輝や井上日召、大川周明みたいな人が、自衛隊に強い影響力を持って、国の政策とは別に外国への戦闘準備をさせるようなことを想定した条項なんだろうね。

でも他の法律でイスラム国に参加するのを防ぐことはできないと。そこでやや無理筋だけど私戦予備罪を使おうって事だろうね。それだけ想定されてなかった出来事が起こってるてことだろうが。

取材しただけでガサ入れされて、機材からPCから持って行かれたり、パスポートから携帯まで取上げていいもんなのか。益々、公安の強引は強まるのだろうか

それについて、長くイギリスに住んでるブロガーさんが記事を書いていたんだけど。実は10年ほど前から英国では同様の問題が起きていたんだね。ちょっと長くなるけど。

イギリスではシリアで戦争に参加するジハーディスト(聖戦義勇兵)に多数のイギリス人が含まれていたことが話題になって、連日、テレビや新聞のトップニュースとして取り上げられている。

こういうジハーディストが国内でのテロを実行する可能性があると、イギリス政府は8月29日に英国内のテロ脅威レベルを、「相当(Substantial)」5段階中3番目から「深刻(Severe)」2番目に引き上げたと発表した。

ロンドンのキングスカレッジにある過激化・政治暴力研究国際センター(ISCR)によると、シリア内戦に参加するイギリス出身のジハーディストは2700人あまり存在すると云われていて、外国人ジハーディストの中で最大の数になっているらしい。

同センターは、イギリスのジハーディストの多くはこのようなプロフィールの人物だとしているの。

・男性・20代・南アジア系・高等教育を受けている・国際的なネットワークのある個人や団体とコネクションがある。

20代の男性が多く、南アジア系がほとんどという点が特徴的なんだね。ネットを使いこなせる様な若い人で、まだ独身で、恐らくインドやパキスタン、バングラデシュなどイギリスの旧植民地からの移民二世や三世が少なくないと。

50-60年代に労働力不足のために旧植民地から大量の労働力を呼び寄せたイギリスには、旧植民地出身のイギリス人や、その子孫が大量にいるからね。それでイギリス人がジハーディストになる理由なんだけど。

欧州の若者の過激化を研究して、ジハードに実際に参加した若者と接触しているISCR のShiraz Maher氏は、イギリスの若者がジハーディストになる理由、さらに彼らが外国人ジハーディストの中で特に残虐な理由を指摘している。

ジハードに参加する若者は、初期の頃は海外の砂漠で戦闘に参加するというイメージにロマンを感じていた。もしくは海外のイスラム教徒に対する同情を感じる、けれど実際に活動するうちに、次第に残虐かつ非人間的な思考に変わってくる。

グローバル規模で仲間に繋がりコミュニティに所属することができるという感覚。
忠誠心や義務感さえあれば、イスラム国を設立する仲間だと自称し、所属意識を持つことができる。仲間を助けなければならないと感じる人もいる。

欧州からシリアへ渡航しやすいことも理由のひとつで。イギリス人は中継地のトルコを通過したり滞在するのにビザが必要ないので、シリアやイラクへの渡航が容易でイギリスから距離的にも近い。

更にジハード参加が悪いことだと説得に値する意見がない。現在、中東で起きているジハードに参加するのは悪いことだと十分に説得する意見がないし。また、シリアのアサド政権は市民を殺しているので排除しなければならないという正統な理由もつく。

また、ストリートのギャングと同様の思考で、力を得たいという欲望がある。イスラム国の戦士になる若者は、イギリスでは小売店の販売員とか社会的に力や地位はない。しかし戦士になりシリアで戦闘に参加すれば、他人の生死を左右するという力を持つことができる。戦士としての生活は危険な一方、刺激的でもあるしね。

このように戦士になる若者の多くは、「どこかに所属したい」「イスラム教徒を助けたい」「外国で刺激を得たい」「力を得たい」というある意味「前向きな目的」を持って戦闘に参加しているというわけなんだよね。単に宗教的な目的で参加しているわけではない。ただジハードであると信じているため死を怖れない。

それと英国事情というのもあって。イギリスは日本に比べ、社会における経済格差だけではなく、働く人の賃金格差も大きくて、サービス業や非熟練労働者の賃金は大変安いらしい。

実力主義の社会のため、経営者や上級管理者、専門職などは多額の報酬を得られるが、それ以外は賃金は安い、日本の様に実力主義を押さえ気味にして広く浅く報酬を再配分する、という社会主義的な仕組みとは違って、勝者がすべてを持って行く仕組みだと云う。

でもこれは後に纏めるけど、いまや日本もそうなりつつよね。

そんな仕組みの上、学歴や資格、経験が日本以上に物をいうから仕事の区分けも明確で。叩き上げの販売員が努力の末に上級管理職になるとか、受付嬢だった人が転職してマーケティングの仕事を得るなんてことはあまりない。販売員で仕事をしてしまうと、他の分野の経験をつめないので他業種や他の職への転職はかなり難しくなる。

時給いくらで給料を支払われる非正規雇用だった場合、正規雇用として雇用されることは困難。販売店の店員という仕事はイギリスの平均賃金以下の給料のことが多く。英語でいう所の「デッドエンドジョブ」、つまり、将来性がないどん底の仕事ということになる。

そんな仕事の人々は、政策を決定する力があるわけでもなく、自分がメディアに取り上げられるわけでもなく、シティの銀行員や証券マンの様に大金を稼げるわけでもない。日々命令された仕事をこなし、生活は退屈なルーティーンに支配され、低賃金の仕事を一生やらざる得ないという絶望感が生活を支配してる。それが前のイギリス暴動にも現れていたんだね。

人々の根底には、「社会に対する絶望」と、自己を承認して欲しいと言う「承認要求」がある。その一方で、失う様な重要な人間関係はなく、友達も多くはなく、結婚する相手もいないため、今の生活を失っても特に困らないし恐れる物がない。つまり、いきなり仕事を辞めて、シリアで戦闘に参加して何かあっても自分は困らないということだね。

さて、ここまで英国のこととして取上げた事情は何かに似ているよね。日本でも数年前から話題になっている(無敵の人)と類似している。「無敵の人」ってのは、日本で近年起こった通り魔事件や脅迫事件などの20-40代の男性のプロフィールを指す言葉で。

低賃金の非正規雇用の労働者として働いていたり、無職だったりとキャリア的経済的に恵まれず、配偶者や家族がおらず友人も少なく、人間関係が薄いために事件を起こして何を失っても怖くない、早く死にたいと自分でいっているような人のことを指すんだね。

典型例は「黒子のバスケ」脅迫事件の渡辺博史被告とか。前に記事にも書いたけれど。

「以前、刑務所での服役を体験した元政治家の獄中体験記を読みました。その中に身体障害者の受刑者仲間から「俺たち障害者はね、生まれたときから罰を受けているようなもんなんだよ」と言われたという記述があります。

自分には身体障害者の苦悩は想像もつきません。しかし「生まれたときから罰を受けている」という感覚はとてもよく分かるのです。自分としてはその罰として誰かを愛することも、努力することも、好きなものを好きになることも、自由に生きることも、自立して生きることも許されなかったという感覚なのです。」


あの冒頭陳述書はちょっと衝撃でした。あれだけの陳述書を書ける人が何故という気もしたのよね。反論も多いとおもう。息子ともまったく意見が異なったんだけど。

そこまで極端ではなくても、「何かに頑張ってみたい」「自分を承認して欲しい」「全能感を感じたい」「自分より恵まれている人間を叩きのめしたい」とかの理由で、他人に嫌がらせをしたり、ネットで有名人に粘着するような人もいるよね。

人間関係を壊したり、職場を解雇されたり、訴訟を起こされるというリスクも怖れず、ネットへの差別的な書き込みを繰り返し、在日朝鮮韓国人の人々に嫌がらせを繰り返しているような人々も無敵の人に近いような気がする。

病んでいるといってしまうのは容易だけど、そういう閉塞感と身動きできない情況が、一戦まじえてやろうぜとか、イスラム行って銃乱射してみてぇになっていかないだろうか。

それは間違っていると思うし、そのエネルギーを違う方へ向けられないかとは思うよね。
坂口君みたいに独立国作っちゃおうぜ、とか新しいコミュニティを自分達で立ち上げようとか、もう少し共生的な方へと思うんだけど。

絶望的な世間を作り上げてる大人も、考えなくちゃならないよね。