彩り 2  Taxiより | 旭陽のブログ 別館

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2023.11.2
長年使用していたHNを変えました。

2022.10.2?
突然、
元宝塚星組男役スターの
七海ひろきさんのファンになりました。

誰かのファンになる時、
なぜかいつも突然なんです…

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17日

「今日は遅くなるから、食事は先に済ませてくれ。」
「はい、今日は、お姉様の所によって、…」
「ああ、そうか。
宏章の買い物に付き合う日か。」

有一は、ハンガーにかけてあるスーツを見ていった。
「そのスーツ、今日着ていくつもりか?
いくら姉さんに挨拶するからって、そんな堅苦しくなくていいんだぞ。
ちょっと地味じゃないのか。」

「ええ、でも、ほかに合いそうな服もしまってしまったので。
これのほうが、無難ですから。」

「そうか…?
じゃ、姉さんによろしく。
行ってくる。」
有一は蓉子を抱きしめてキスをした。

「いってらっしゃい。」
蓉子は微笑んで手を振り見送った。


   ---------

「こんにちは。」
「まぁ、いしゃっしゃい。どうぞ。
宏章、蓉子さんよ。」

「引越しの前に、ご挨拶にも伺いませんで、申し訳ありません。」
「急なことだったし、いいのよ。いろいろ準備で忙しいでしょ。
有一には空港で会うことになりそうね。」
「本当に、申し訳ありません。」

「これ、お姉さまのお好きなロールケーキ。いつものですけれど。」
「あら、うれしい。ご馳走様。」

「それにしても、ちょっとみないうちに、ずいぶん奥様らしくなったわね、蓉子さん。
着ている服のせいかしら、ねぇ、宏章。」
「これじゃ、もう蓉子おねえちゃんなんて呼べないわね。おほほ…」

「やだなぁ、母さん、おばさんのことそんな風に呼んだことないよ…。」
「あら、おじさんのことだって、大学に入るまで有一兄ちゃんって呼んでたじゃないの。忘れたような顔をして…。」

「かなわないなぁ、母さんには…。」

「おばさん、早いとこでかけよう。母さんに付き合っていたら、おしゃべりで日が暮れちゃうから。」

「憎まれ口ばかりたたいて。
じゃ、蓉子さん、よろしくお願いしますね。
少し余分にお金を持たせましたから、何着かみてやってくださいな。」

「はい、お姉さま。
では、いってまいります。」


     ---------


「ねえ、これはどうかしら。
これからの季節にいいと思うんだけど。似合うわよ。」

「もう、いいよ。
合コンの服も決まったし、あんまり買い込むと荷物になるから。」

「だって、お姉さまに頼まれたのに…。」

「いいから…、それより、おばさんにプレゼントさせてよ。
アクセサリーは嫌いじゃないでしょ。
指輪はまずいから…、ネックレスなんかどうかな。
いいでしょ。ね、きまり。」

「ちょっと…」

宏章は蓉子の手を握ると強引にアクセサリー売り場のある5階へと向かった。
ジーンズにTシャツの宏章が、スーツ姿の蓉子を連れているさまはちょっとちぐはぐだった。

エスカレーターでも手を離さずに、宏章は蓉子の手の温もりを感じていた。
〈蓉子さん、こんなに小さな手だったんだ…〉



「これなんかどう?」
小さなピンクがかった紅い石がついたネックレスを指差した。
「今日の服装には合わないかもしれないけれど、おばさんに似合うと思うよ。
つけてみれば。
すみません、これお願いします。」

「僕がつけてあげるよ。」
「ありがとう。」

長い髪をよける蓉子の細く白い指がまぶしかった。
蓉子の髪の香りが鼻をくすぐる…。

「いかがですか、おばさま。」
「いいの、ほんとに。」
「お気に召したようだから、これ、いただきます。
プレゼント用に包んでください。」


「ありがとう。」
「ううん。ほんの気持ち。」
〈こんなことしかできないんだ。僕の気持ちを受け取ってください。〉

「おばさん、食事に行こう。」
「なにがいいかな。」


どさくさに まぎれて握る その人の
        手の小ささに 心震える

細い指 髪の香りも この胸に
      思い出として 残してください


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