彩り 3 TAXIより | 旭陽のブログ 別館

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2023.11.2
長年使用していたHNを変えました。

2022.10.2?
突然、
元宝塚星組男役スターの
七海ひろきさんのファンになりました。

誰かのファンになる時、
なぜかいつも突然なんです…

テーマ:
「少し飲みすぎじゃない?宏章さんには珍しいことね。」
「そうですね。
でも、いいじゃありませんか。もう、こんなこともないだろうし…。
もうすぐ、出発ですね。」

「ええ…。」

二人の視線が会った。
一瞬の沈黙の後…

「ここでいいわ。
後は、タクシーを拾って帰るから。
…大丈夫?
駅まで歩けるの?」

「大丈夫ですよ。ご心配なく。」

「今日は、ご馳走様。
お姉さまに、よろしくね。それから、プレゼント、ありがとう。」

蓉子が右手を差し出すと、宏章がそっとその手を握った。

宏章が握った手が、宏章の手から離れていく…。

「蓉子さん!」

行こうとする蓉子を宏章が呼び止めた。
しかし、宏章は身じろぎもせずただたっている。

蓉子は振り向くとゆっくりと宏章に近づいた。そして、やわらかく宏章を抱きしめた。

「ごめんなさい。
本当に…ごめんなさい。
幸せになって…。」

蓉子は、宏章の胸でそうささやいた。
身体を離すと、蓉子は背伸びをして宏章の頬に優しくくちづけた。

「さようなら。」

蓉子はタクシーを止めると、何事もなかったかのように振り返り、手を振って乗り込み走り去っていった。

宏章は、金縛りにあったようにその場に立ち竦むばかりだった。

〈蓉子さんは僕の心を知っていたんだ。
酔ったふりをして抱きしめようとしたことも…。
愛していることも…。
僕の心の痛みも…。

蓉子さん、ごめんなさい。
僕はずっとあなたのことを苦しめていたんですね。
何も知らずに、自分だけが苦しんでいるつもりで…。〉

蓉子が乗ったタクシーの赤いテールランプを、宏章はじっと見つめていた。


蓉子は、タクシーのシートに身を沈めると懸命に涙をこらえた。
〈宏章さん、ごめんなさい。
私は、あなたの気持ちに答えることができないの。

もしも…もしも出会う順番が違っていたら、あなたに先に出会っていたら、私はきっとあなたを愛したと思う。
けれども、運命は私とあなたのおじ様を先に出会わせてしまった。

私の心には1人の人しか住むことができないの。

宏章さん、私はあなたのことが大好きよ。
でも、あなたには、私の愛する人の甥でいてほしい。
だから、私は旅立ちます。
もう、多分日本には帰ってきません。

そのほうが、私とあなたのためだと思うから。
あなたは、日本で幸せになってほしい。
私の大切な人だから…。〉



一度だけ あなたの名前 呼び止める
       その細い肩 抱きしめたいと

今はもう 出会えたことに 感謝して
       深い縁を 尊く思う