(参考:963「フィデル・カストロ、冷笑主義の死の舞踏」)


エジプトとチュニジアで起こったことと違って、リビアはアフリカのなかで人的成長率[IDH]が第1位であり、大陸においてその生活は最も高い期待を持てるものであった。教育と医療は国家によって特別の注意が払われた。人々の文化レベルは疑いもなく高かった。問題は別のところにあった。人々は食料や欠くべからざる社会サービスに不足するものはなかった。国は野心的な生産計画や社会発展のために膨大な外国人労働力を必要とした。


そのためエジプト、チュニジア、中国そのほかの諸国から数十万人の労働者が供給された。莫大な収入と外貨残高は富裕国の銀行預金となり、これらによって消費財、最新兵器を含めて調達したのだが、それはまさに現在、人権の名によって侵略をしようとしている国々から購入したものである。


マスメディアの膨大な虚偽情報の宣伝は、世界の世論に大きな混乱を起こした。時の経過とともに、リビアで起こったことの事実、報道されているなかで真実と虚偽を分別することができるであろう。


誠実で称賛される報道機関、たとえばテレスールは、実際に何が起こっているかを報道するために、レポーターとカメラマンを、活動するグループ、また反対派側に派遣しなければならなかったようだ。


通信が遮断されているなかで、真面目な外交官は命を危険にさらして、日な夜な地域を駆けめぐり、何が起こっているのかを知らせるために出来事を知ろうとした。帝国とその主要な同盟国は、最新式の情報手段を用い、事件についての歪曲した情報を流し、真実の様相を変えることになった。


疑う余地なく、ベンガジで抗議行動をおこなう若者たち、男たち、ベールをするものもしないものも女たちの表情は本当の怒りを表現していた。


このアラブの国におけるいまなお存在する部族性の影響を見て取ることも可能である。たとえ人口のまさに95%がイスラム教を共有しているにせよである。


帝国主義とNATO[北大西洋条約機構]は、アラブ世界において引き起こされた革命的な波を心底から心配した。そこでは先進富裕国の経済を維持させるために、消費する石油の多くが生産されている。リビアにおける国内紛争を利用して、軍事介入しないという選択はなかった。米国当局が最初の段階から発してきた宣言は完全にこの意味においてであった。


その環境は決して容易ではなかった。11月の選挙において右翼共和党は、効果のある打撃をオバマ大統領に与えた。修辞的な表現で言えば。


ファシストグループである「果たされた使命」は、現在イデオロギー的な原理主義、ティーパーティーの支援を受け、現大統領の力を弱め、飾り物にしようとしている。医療プログラムや経済の回復は難しくなっており、財政赤字と統御不能な公債の増大がその歴史的な記録を塗り替えている。


嘘の報道と混乱を作り出したにもかかわらず、米国は中国とロシア連邦を、安全保障理事会において、リビアへの軍事介入の承認に引き込むことはできなかった。代わりに人権委員会においてそれをなしたとはいえ、本来はこの時点で承認を得ようとしたものである。軍事介入については、国務長官の言葉には少しの疑問もない:「いかなる選択肢も放棄していない」。


実際にはリビアはすでに内戦に巻き込まれている。以前に予想していたとおりに。国連はこれを避けるために何もできなかった。事務総長自身が火に多量の燃料を注ぎ込んだこと以外には。


問題は多分かれらの予想に反して、反乱派の指導者自身がこの複雑な問題にかんして、外国軍の介入を拒否すると宣言したことだろう。


いくつもの通信社は、革命委員会のスポークスマンであるアブデルハフィズ・ゴーガが、28日月曜日、「『残りのリビアはリビア人民によって解放されるであろう』」と宣言したと伝えた。


「『トリポリを解放する兵力はある』、ゴーガは反乱派の手中にある街を代表する『全国委員会』の結成の宣言のなかで断言した。


「『情報機関の情報を求めている。しかしいずれの場合も、われわれの空陸海の主権を損なうことはない』トリポリから100キロ東の街における記者会見でこう述べた」。


「反対派の責任者の国の主権に関する頑固さは、ベンガジの国際報道機関への多くのリビア市民の自発的なかたちでの意見表明を反映している」、月曜日[2月28日]AFP通信が報道した。


同じ日、ベンガジ大学政治科学のアベイル・イムネイナ教授が言う:


「リビアには強い国民感情がある」。


「『そのうえイラクの例はアラブ世界全体に恐怖を与えている』、2003年の北米の侵略について強調した。これはこの国に民主主義をもたらし、その後地域全体に伝播するはずであったが、その仮説は実際によって完全に否定された」。


教授は続ける:


「『イラクで何が起きたかを知っている。それは完ぺきな不安定でありまったく同じ道を歩もうとは思わない。北米が来て、カダフィを終わらせようとは残念ながら思わない』専門家は続ける」。


「しかしアベイル・イムネイナによると、『これはわれわれの革命だという感情もある。これはわれわれがやるのがふさわしいのだ』」。


このニュースから少しして、米国の主要な2つの新聞である、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが、この問題で新たな情報を、次の日の3月1日に、DPA通信が伝えた:「リビアの反対派は、西側諸国にたいして、最高指導者ムアマル・アル・カダフィに忠誠を誓う部隊の戦略的拠点を空爆することを要請する見込みであると、本日米国の新聞は伝えた」。


「この問題は、リビアの革命委員会のなかで討論されていると、『ニューヨーク・タイムズ』と『ワシントン・ポスト』はネット版のなかで明らかにしている」。


「『ニューヨーク・タイムズ』は、この議論は、カダフィが再び権力を握る可能性の前に、反乱派の指導者のなかに挫折感が広がっていることを表現していると、説明している」。


「委員会は弁護士、学術者、判事、リビア社会の卓越したメンバーによって構成されている」。


通信は言う:


「『ワシントン・ポスト』によると、反乱派は、西側の支援がないならば、カダフィに忠誠を誓う部隊との戦闘は長引くだろうし、多くの人命が失われることになる」。


このなかで、一人の労働者、農民、建設業者、何らかの生産者、若い学生、あるいは抗議行動に現われていた活動家について触れられていないのが注意を引く。なにゆえ社会の卓越したメンバーによる反乱派が、リビア人を殺すために、米国とNATOに爆撃を要請する、その目的とはなんであろうか?


いつの日か真実を知ることができるであろう。ベンガジ大学政治科学科の教授のような人物をつうじて、かれは雄弁にイラクにおける恐るべき殺人の経験、家屋の破壊、失業、そして数百万人が難民となったことを語った。


今日水曜日、EFE通信はさきの反乱派スポークスマンの声明を伝えたのだが、わたしには月曜日のものと矛盾しているように思う:「ベンガジ(リビア)3月2日、反乱派指導部は本日、国連安全保障理事会にたいして、ムアマル・アル・カダフィ体制の『傭兵にたいして』空からの攻撃をおこなうことを要請した」。


「『われわれの軍隊は防衛的な性格であり、傭兵にたいして攻撃を仕掛けることはできない』、反乱派スポークスマン、アブデルハフィズ・ゴーガは、ベンガジにおける記者会見で認めた。

「『これは否定してきた外国の介入である、戦略的な空からの攻撃とは違う』反対派軍のスポークスマンは強調した。かれはこれまで常に、リビア紛争への外国の軍事介入に反対してきたのである」。


帝国主義者のたくさんの戦争のなかで、これに似ているものはないのか?


スペインの1936年、ムッソリーニの1935年のエチオピア、ジョージ・W・ブッシュの2003年のイラク、米国によって引き起こされた[ラテン]アメリカ人民への1846年のメキシコから1982年のマルビナスにいたるまでの数十の侵略戦争?


もちろん例外なく、ヒロン湾への傭兵による侵略、汚い戦争、そしてわれわれの祖国にたいする封鎖、これはこの4月16日に50年間となる。


すべての戦争において、たとえばベトナムにおいて数百万人の人命が失われたが、正当化がおこなわれ、厚顔無恥な手段がとられた。


リビアにおいて軍事侵略がおこなわれることに何らかの疑問を抱くならば、AP通信の報道はよく伝えられていると思われる。今日伝えられたトップには次のように報じられている:「北大西洋条約機構(NATO)は、取られるべき可能性のあるプランについて、1990年代にバルカンにおいて設定された飛行禁止空域をモデルにして作成された。その場合、国際社会はリビア領空の飛行禁止を強要することになる、と外交官は述べた」。


さらに進めて:「高官は微妙な問題のため名前を明らかにすることを拒んだが、選択肢として検討されるのは、西側同盟軍が1993年ボスニアについて設定した飛行禁止空域が出発点となる。これには安全保障理事会の命令があった。そして1999年のNATOによるコソボの空爆、これには[安保理の承認は]なかった」。


明日に続く。


フィデル・カストロ・ルス

2011年3月2日午後8時19分

(0969)


*この記事は、Fidel Castro の La Guerra inevitable de la OTAN を翻訳したものです。