★ 一部で「首都圏、特に東京の累積放射性物質の量が跳びぬけて多い」という話が広まって居る様だが、放射線医学総合研究所 が「放射線被ばくに関する基礎知識 第6報 」(pdf版 )において、既に東京都在住者の累積放射線量を算出しているので紹介しておく。
【以下放射線被ばくに関する基礎知識 第6報 平成23年4月22日(金) 20:00更新 より】
(文字修飾は我楽者による)
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3.東京の空間線量は低下する傾向にありますが、一方で長く続いています。東京に住んでいる人の累積の放射線量(3月14日~4月11日の約1ヶ月間)は、およそ何ミリシーベルトですか?
ここでは成人におけるモデルケースについて、体の外から受ける放射線と放射性物質を体の中に取り込むことによって受ける放射線のそれぞれについてお答えします。計算される以下の数値は代表的な放射線量を表し、一人一人については行動や食生活などで大きく違ってきます。
まず大気中の放射性物質によって体の外から受ける放射線量は、文部科学省が発表したデータから累積し、通常時の平均値分を除くと、3月14日以降の約1ヶ月で約16マイクロシーベルトと計算されます(1日8時間屋外に居たとして)。
放射性物質を体の中に取り込むことによって受ける放射線量は水、食べ物、呼吸の3つについて考えます。水道水から受ける放射線量は、1日あたり 1.65リットルの水道水を飲んだとして、東京都が発表したデータを用いると約10マイクロシーベルトと計算されます(5.を参照してください)。
食べ物中の放射性物質から受ける放射線量は食事の習慣や量などで個人差が大きく、さらに難しい推定となります。ここでは仮に、1キログラム当たりのヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134の濃度がそれぞれ20、1、1ベクレルの牛乳、それぞれ2、1、1ベクレルの魚、それぞれ150、 10、10ベクレルの野菜を約1ヶ月間、毎日食べたとします。これによる放射線量は約69マイクロシーベルトと計算されます。
空気中の放射性物質を吸い込むことによる放射線量は、1日あたり22.2立方メートルの空気を吸ったとして、東京都が発表したちりの中の放射性物質のデータを用いると約21マイクロシーベルトと計算されます。
これらを足しあわせると約1ヶ月間で約120マイクロシーベルトを受けたことになります。この放射線量は、東京-ニューヨーク間を飛行機で往復するときに浴びる放射線量※の上限よりも少なく、健康に影響を与えるレベルではありません。ただし、今後も行政機関からの発表に注意し、要請や指導があった場合にはそれに従ってください。
≪一部略≫
4.神奈川、埼玉、千葉、群馬、茨城、栃木はどうでしょう? 通常に生活するのに問題は無いのでしょうか?
文部科学省発表の空間線量率を見る限り、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木はおおよそ東京と同じぐらいと考えて下さい。茨城は、大気中の放射線による線量は、文部科学省が発表したデータから累積し、通常時の平均値分を除くと、データのある3月15日以降で66マイクロシーベルトを超える程度です(1日8時間屋外に居たとして)。普通に生活して下さって問題ありません。
5.自分が生活する地域の累積の放射線量はどうやって把握したらよいでしょうか?
≪以下、計算の方法が記してあるが、自分の頭脳では計算に難が或る為省略≫
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★ なお「首都圏における累積放射性物質が多い」ことを理由に、「雨に当たると火傷などの被害が出るかも知れない」等と言う事を発言している方も居られるようだが、これについても放射線医学総合研究所 が4月8日付で公開している「放射線被ばくに関する基礎知識 サマリー版 第1号(Ver1.0) 」(日本語PDF [347KB] Chinese PDF [401KB] English PDF [196KB] )のQ&Aに以下の様なコメントが掲載されている。
【以下放射線被ばくに関する基礎知識 サマリー版 第1号(Ver1.0) 平成23年4月8日(金) 19:30更新 より抜粋】
(文字修飾は我楽者による)
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2.首都圏に住んでいますが、外出を避けたほうがいいですか? 放射線のレベルが高くなっていると聞きました。大丈夫でしょうか?
事故から現在まで首都圏で観測された放射線の量は微量で、今後事故が大きく拡大しない限りは、普段通りの生活をおくって全く問題ありません。放射線のレベルが通常の10倍あるいは100倍などと聞くと、たいへん高い線量のように感じられると思いますが、実際には健康に影響のないレベルです。
3月15日午前9時から午後5時に東京と栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都7県で計測された放射線レベルでは最大で、1時間あたり 1マイクロシーベルトと報告されています。これは、例えこの放射線レベルで1ヶ月間生活したとしても、合計の放射線量は0.7ミリシーベルト(胃のレントゲン撮影1回分強)で、健康に影響のないレベルです。
またピーク時の値がずっと続くようなことはありません。実際、東京都の発表では、4月6日時点では0.1マイクロシーベルト以下で、3月15日のピークに比べ10分の1以下になっています。
3.首都圏に住んでいますが、事故から数日後に雨に濡れました。健康に影響はないでしょうか?
雨の中にも事故によって放出された放射性物質が含まれていると考えられますが、その量はわずかです。これまで報告されている空気中の濃度から計算すると、雨に濡れて放射性物質が皮膚についたとしても、健康に影響を与えるような量ではありませんので、心配する必要はありません。
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★ 同じく放射線医学総合研究所 は、4月2日付けで『放射線被ばく早見図』を公開している。
日本語 PDF(高解像度) [921KB]
日本語 PDF(低解像度) [442KB]
English PDF(High resolution) [1.23MB]
English PDF(Low resolution) [150KB]
以下に上記早見図をJPEG化したものを貼り付けさせて頂く。
上図ではチェルノブイリ事故の際に最も大きな影響を及ぼした(と言うよりは他の放射性物質による悪影響を自分は知らない)ヨウ素131について、その教訓を元に現在の日本の規制基準値目一杯の放射性ヨウ素131を含む飲食物を1ヶ月間摂取し続けた場合、及び被ばく放射線量0.1μSv/hの場所に1ヶ月居た場合の試算を行っている。
・水;基準値=300Bq/L、1日2L、1ヶ月間飲み続けた場合、被ばく量は0.4mSv
・牛乳;基準値=300Bq/L、1日200ccのみ続けた場合、被ばく量は0.04mSv
・ほうれん草;基準値=2000Bq/kg、1日50gを1ヶ月食べ続けた場合、被ばく量は0.07mSv
・空間線量率0.1μSv/hの場所に1ヶ月間居続けた場合、被ばく量は0.07mSv
これらの被ばく量は飛行機による「東京⇔ニューヨーク」往復の際に浴びる被ばく量(約0.1mSv)と大して変わらない事が読み取れる。
★ 東京電力のホームページに、今ではトップ頁から入ることの出来ない頁(つまり今回の事故以前に作成公開していた)がある。その中の「放射線コーナー Q&A」というコーナーに、「自然放射線 Q4 人間の身体の中には常に放射性物質が存在しているって本当ですか? 」という質問が記されている。
これに対して以下の答えが記してあり、下図が示されている。
【以下、上記頁より】
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私たちは身体の中に数種類の放射性物質を持っていますが、その代表的なものはカリウム40です。カリウムは肥料の三大要素(チッ素、リン酸、カリ)であるように生物には欠かせないもので食品を通じて身体の中に取り込まれます。人間の身体には体重の約0.2%程度カリウムが含まれていると言われていますが、このうちの0.012%が放射線を出すカリウム40です。
その他にも炭素14やポロニウムといった放射性物質が含まれています。
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【以下、上図の品目毎の放射線量を記す。なおこの図は他の電力会社でも使用しており、例えば中部電力では此方 がそれである。】
1)体重60kgの人間の体内放射線量;
・カリウム40; 4000Bq
・炭素14; 2500Bq
・ルビジウム87; 500Bq
・鉛210・ボロニウム210; 20Bq
2)食物中のカリウム40の放射能量(日本)
・干し昆布; 2000Bq/kg
・干ししいたけ; 700Bq/kg
・ポテトチップ; 400Bk/kg
・生わかめ; 200Bq/kg
・ほうれん草; 200Bq/kg
・魚; 100Bq/kg
・牛肉; 100Bq/kg
・牛乳; 50Bq/kg
・食パン; 30Bq/kg
・米; 30Bq/kg
・ビール; 10Bq/kg
★ 最後に「放射線科学センター 」のホームページに「気になる情報」が掲載されていたので、此方も紹介しておく。
【以下「暮らしの中の放射線 46頁『放射性降下物』」(pdf) より文章と図を引用掲載】
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放射性降下物
1950年代末期から1960年代にかけて、世界各地で大型の大気圏内原水爆実験が相次ぎ、いろいろな放射性同位元素が大気中に放出されました。これらは気流に乗って全地球上に広がり、雨などに混じって地上に降ってきて環境の放射線を増す原因となりました。これを放射性降下物(フォールアウト)と呼んでいます。
現在でも、私たちが日常食べている食品にはこの放射性降下物による放射性物質が微量ですが含まれています。
有名なセシウム-137(137Cs)の例を見てみましょう。下の図は東京で測定したセシウムー137の月間降下量と国産穀物中のセシウム-137の量を表わしたものです。セシウム-137の降下量が増えるとその後収穫される米や麦など穀物の中のセシウム-137の量も大きく増加することがわかります。
当然、食品を経由して人間の体内に含まれるセシウム-137の量も増えていきます。下の図はヒューマンカウンタで体内のセシウム-137含有量を調べたものです。1962年で米ソの大気圏内での核実験が停止したので、環境中のセシウム-137の量が減り、それにともなって、体の中のセシウム-137も減ってきています。
セシウム-137と並んで重要なのは、ストロンチウム-90です。半減期が短いものは空から地上に落ちてくる前に放射線を放出して安定同位元素に変化してしまい、直接私たちに影響を与えることはありません。しかし、セシウム-137は30年、ストロンチウム-90は28年と半減期が長いため、この二つは長期にわたって空から降り続け、環境を汚染することになります。
1982年の国連科学委員会の報告書ではこれらの放射性降下物が全人類に与える影響は自然放射線源の約3年分に相当すると推定されています。
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はて?
上に引用したグラフの1960年代のセシウム137月別降下量が、「ギガBq/km~2」単位はどれだけの量なのだ?
「ギガベクレルは10の9乗ベクレル」…その頃は今から見ると、どえらい量が降っていたのではないか?
全人類に与える影響は自然放射宣言の約3年分か…。
そして下のグラフからは「1964年の日本人の体内セシウム-137は1990年の10倍以上」に見えるのは自分だけか…?
それで放射性降下物による直接の健康被害は聞いていないなぁ?
健康に影響を及ぼすには相当な量の放射性降下物質が必要な「気が」する。
【4/25追記】
結局の所、降下放射性物質の量のみで「人体への影響を云々する」事がそもそも間違っているのだろうと素人ながらに感じた次第。
人に対して最も影響を及ぼすのは放射性物質を含む塵の吸入や汚染された飲食物の摂取による内部被ばくだが、単に「放射性降下物が増えた」からと言ってそれが直ちに人体に悪影響を及ぼす訳ではなく、チェルノブイリの事故の様に多量の放射性物質に汚染された飲食物を摂取し続けた際に悪影響が現れると考えるべきだろう。その上現在市場に流通している飲食物の放射性物質の量は、非常に厳しく安全側に立った規制値をクリアしている。何より自然界にも「自然放射能」が存在し、人間の体内にも普通の食物にも放射性物質が常に存在している。
もういい加減、「『ゼロリスクという幻想』は捨てませんか?」と云う話だろうと。
現在被災地周辺の「基準をクリアした生産物を風評被害により忌避」する事は余りにも愚かであり、その行為は被災地復興に対して障害をもたらす「加害者」になっていると認識すべきではないだろうか?
なお自然界に存在する放射性物質として放射性カリウムがクローズアップされている様だが、(これも風評被害か?)Togetterに興味深いまとめが作成されているのでリンクをしておく。是非お読み頂きたい。「バナナの放射性カリウムについて 」