私の考える中東情勢~ワシントンの窓を通して中東を見る~ | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

私の考える中東情勢~ワシントンの窓を通して中東を見る~

4連続コラム、2日目の本日は良くも悪くも中東に深い関わりを持つ米国外交の視点、言
い換えるならば「ワシントンの窓」から覗いてみたいと思います。


当然のことながら、ワシントンを通して世界を見るからには、米国人が持つ独特の感性、
(人によっては歪みと解釈する人もいると思いますが)をも共有してしまうことになりま
す(だからといって、「世界を見る日本人の視点」の方が高尚だというわけでは決してあり
ません)。思うに米国政治の「悪い癖」とは、良くも悪くも比較的理解しやすいものにある
と思われます。それは、あの国ならではの素朴な正義感や、寛大な理想主義や、自己愛の強
さや、実験を怖れない過激さなどの特殊性に由来していると思います。多くの場合、それは
米国以外の国に住む多くの人を辟易させるものであるし、ときには陰謀論的な誤解を招いた
りもする局面があります。けれども、かれらの論理、理屈さえ分かってしまえば、私だけか
もしれませんがさほど腹も立たないものです。しかるに米国政治の悪い癖は、特に中東に関
して遺憾なく発揮されてきました。なぜか米国には中東への妙な思い入れがあり、中東政策
は多くの矛盾を抱えてきました。「中東における唯一の民主主義国」たるイスラエルに肩入
れをする一方で、サウド王家による支配が続くサウジアラビアと特殊な関係を築いてきた歴
史はその典型と言えるでしょう。理解に苦しむような判断ミスもありました。かつてネオコ
ンは「中東の民主化」を外交目標とせよと主張し、ブッシュ大統領は2005年の2期目の
大統領就任演説において、「テロとの戦いのために世界に民主主義を広げる」ことを宣言し
ました。しかるに米国がイラクで払った代償はまことに大きなものでありました。仮に米国
の外交目標が、本当に「中東の民主化」であったとしたら、こんな対比も可能になるとおも
います。直近ではイラクを例に挙げ2003年に大規模な軍事力を行使して独裁者サダム=フ
セインを取り除き、2010年末になってようやく民主的な政権が誕生させました。この成果
をハードパワー外交の成果と言えるでしょう。他方で、最近のエジプトをフェースブックや
ツィッターを普及させたことで、国民が自発的に独裁者を追放しました。これはソフトパワー
外交の成果と言えるでしょう。どちらがより効率的であったかは、比べるまでもありません。
ただし、これをもって本格的なソフトパワー時代が到来と結論するとしたら、重大な誤解を
招くだろう事になる気がします。ハードパワー(軍事力を含む強制的な力)とソフトパワー
(他国を自発的に動かす力)は、相互に代替可能なものではないでしょう。直近のリビア情
勢がいい例で、独裁者で国民の標的になっていても、それを打ち返すだけの軍事力を有して
いる限り、ソフトパワーがオールマイティに通用するとは言い切れないと言えるでしょう。
強いて言えば、軍事力の位置づけが相対的に低下し、先進各国が財政制約に直面して外交に
割けるリソースが限定的になっている今日においては、両方を上手に組み合わせて使うこと
(いうなればスマートパワー)が求められているということでしょう。




Ken