被災地の妊婦さんや子育て中のお母さんへ。 | 山端秀明のバタブロ(センスマプロジェクト)

被災地の妊婦さんや子育て中のお母さんへ。

災害が起こったときのからだと心の健康チェック


妊娠中の方

お腹の赤ちゃんの動きがなくなる/多くなる

胎動(たいどう)を感じている方では、災害時に一時的にお腹の赤ちゃんの動きがなくなったり、逆に多くなることがあります。お腹の赤ちゃんの動きは、お母さんが動いている時よりも、安静にしている時のほうが感じやすいので、しばらく横になって、赤ちゃんの動きに意識を向けてみましょう。1時間ほど様子をみても赤ちゃんが動き出さないようであれば、できるだけ早く医療者(医師、助産師、看護師、保健師)に相談しましょう。


いつもよりお腹が張る/お腹が規則的に張る/お腹が痛い/膣から出血する

災害時にお腹が張りやすくなったり、痛みを伴ったり、出血する方がいます。人によっては、お腹の張りを「お腹が膨らむ」「板みたいに硬くなる」と表現する方もいます。災害時には長時間歩いたり、水汲みや重たい荷物を運ぶ、子どもを抱っこするなど、お腹に負担がかかるような行動が多くなりがちですので、無理しないようにしましょう。お腹の張りが見られる時は、まず安静にして、お腹に手のひらを当てて、何分おきに何秒くらいお腹が硬くなるかをみましょう。

お腹の張りが続く場合は、赤ちゃんが生まれる可能性もあります。特に、おしるし(出血)、破水、規則的なお腹の張り(1時間に6回以上あるいは10分ごと)がある時は出産が近づいたサインです。早めに受診中の病院に連絡をとり、出産の準備をしましょう。受診中の病院に連絡がとれない時は、近所の病院へ連絡しましょう。
いつもよりお腹が張る/お腹が規則的に張る/お腹が痛い/膣から出血する


妊娠中・お産後の方

手が握りにくい/頭が痛い/目がかすむなど

災害時には、配給のお弁当やインスタント食品など偏った食事や塩分のとりすぎ、避難生活のストレスなどで手足がむくんだり、血圧が高くなることがあります。

手が握りにくい、いつもの靴がきつくなるなど、手や足にむくみの症状が出る場合は、横になり、枕などの上に足をのせて足を挙げたり、足のマッサージをして循環を良くしましょう。また、味の濃いおかずや漬け物、炊き出しの汁物は量を減らしたり、塩分を控えた食事に気をつけることが大切です。

また、血圧が高い時にみられる症状として、頭痛や目がチカチカするなどがあります。これらの症状は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と考えられ、妊娠中、出産後にみられます。症状がある時は、出来るだけ早く医療者に相談しましょう。

便秘になる

妊娠中はホルモンの影響により便秘になりやすく、また、産後は会陰部(えいんぶ)の傷が気になり力めなかったり、避難所でトイレを我慢するなどして便秘になることがあります。便秘を予防するために、便意を感じた時にトイレに行く、起床時に冷たい水や牛乳を飲む、繊維の多い野菜や果物をとるなど心がけましょう。これらが困難な時には、一時的に栄養補助食品で食物繊維を摂るのもよいでしょう。また、下剤を使う方法もあるので、医療者に相談しましょう。 便秘になる

腰痛がある


妊娠による影響に加えて、災害時は長時間歩いたり、水運びなどで体に負担がかかることが多くなり、腰痛が出やすくなります。痛みがひどい時は、水運びなど、体に負担がかかる動作は家族の方や近所の人、ボランティアなどに積極的に頼みましょう。また、お腹が張っている時に腰痛が起こることがあります。


おりものが多くなる/陰部が痒い


妊娠中はおりものの量が増えるのに加えて、災害時には断水になることがあり、陰部(いんぶ)の清潔が保ちにくく、痒みを訴える方がいます。炎症を予防するために、こまめに下着を替えたり、おりものシートや使い捨てショーツを利用したりするなど、清潔に保つようにしましょう。

痒みを感じ、白色で酒かすのようなおりものが出る場合は、カンジダ症になっていることが考えられます。この場合、ぬるま湯で洗って陰部を清潔に保ち、できるだけ早く医療者に相談しましょう。

排尿時に痛みがある/トイレに行ってもすっきりしない


災害時はトイレの環境の悪さから、排尿を我慢したり、さらに水分の摂取を少なくすることにより、膀胱炎症状(排尿時の痛みや残尿感)がでることがあります。まずは、水分をできるだけ多く摂るようにしましょう。そして、排尿を我慢しないことが大切です。また、排尿後は清浄綿などできれいに拭き、清潔を保つようにしましょう。1~2日様子を見ても改善しない場合や、発熱や背中、腰の痛みなどがある時は、医療者に相談しましょう。

肛門部が痛い


災害時は、栄養の偏った食事、飲水量が減る、排便を我慢するなどにより、便秘となり、痔(じ)になることがあります。痔(じ)の症状には、肛門部がズキズキしたり、排便時の痛みがあります。痔(じ)が出ている場合は、オリーブ油やハンドクリームなどを患部に塗り、出ている部分を静かに押し込んで様子を見ましょう。また、清浄綿などで肛門部を清潔にし、便秘や下痢にならないように気をつけましょう。痛みがひどい時は医療者に相談しましょう。

眠れない/眠りが浅い/気が滅入る/無気力になる/イライラする/物音や揺れに敏感になる/不安で仕方ない


これらの症状は、災害時には多かれ少なかれ誰にでも起こります。このような症状がある時は、自分の体験や思いを語ることが大切だと言われています。ご夫婦やご家族の間で、お互いの気持ちを話したり、お互い無理をしないように声をかけたり、気遣うことも大切です。

また、災害後は、「眠っている時に何か起こるかもしれない」という不安から眠れないこともあります。このような時には、家族が交代で眠るなどの工夫をした方もいます。自分なりに眠れる工夫をしてみましょう。それでも眠れない時は睡眠剤を飲んで眠る方法もありますので、医療者に相談してみましょう。

これらの症状は2~3ヶ月で自然に治りますが、症状が続く場合はひとりで悩まずに、保健所や心のケアセンターなどに相談しましょう。


お産後の方

熱がある


産後の発熱の原因は、風邪、乳腺炎(にゅうせんえん)、子宮内感染(しきゅうないかんせん)、膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)などの細菌感染が考えられます。


悪露(おろ=膣からの出血)が多くなる/悪露(おろ)がいつもと違う臭いがする


災害時は長時間動いたり、重たいものを持ったりなど無理をしがちです。それにより悪露(おろ)が増えることがあります。また、授乳直後には、ホルモンの影響で悪露(おろ)が多く出ることもあります。しばらく安静にしながら様子をみて、悪露(おろ)が減ってくるようであれば心配ありません。悪露(おろ)の量が夜用ナプキンでも間に合わないぐらい増えたり、直径3㎝以上のレバー様の血の塊が出る場は、子宮の収縮が悪い可能性もありますので、できるだけ早く医療者に相談しましょう。
また、熱があり、悪露(おろ)がくさく臭う時は子宮の中で感染を起こしている可能性がありますので、医療者に相談しましょう。

傷(帝王切開の傷/会陰切開の傷)が痛い


切開したところやその周辺が赤く腫れたり、浸出液が出る時には、炎症や感染を起こしているおそれがあります。できるだけ早く医療者に相談しましょう。

おっぱいが赤く腫れて痛い


おっぱいが赤く腫れて痛い、しこりがある、熱がある(38℃以上)、汚い色の母乳が出る等の場合は、乳腺炎(にゅうせんえん)の可能性があります。汚い色の母乳が出ている場合には、授乳を一旦中止して医療者に相談しましょう。授乳後におっぱいが張って痛みが残る時には、おっぱいが軽くなる程度に手で搾り捨てましょう。

母乳のでる量が少なくなる


人によっては、一時的に母乳のでる量が少なくなる人もいます。そのような時は、授乳を続けながら、不足する分はミルクを足すようにしましょう。粉ミルクは避難所や保健所などで手に入れることが出来ます。また、ゆったりと落ち着いて授乳できる場所が確保できるよう、避難所の責任者に相談しましょう。 母乳のでる量が少なくなる


赤ちゃん

赤ちゃんが寝ない/ぐずぐず言う


赤ちゃんはお腹が空いたり、眠いのに眠れなかったり、お腹にうんちがたまっていたり、ミルクがちょっと足りずに泣くこともあります。眠らない時には、抱っこして話しかけたり、ゆったり接するように心がけましょう。また、布でくるんであげると安らぎます。

おむつかぶれがある/湿疹がある


災害時は沐浴が毎日できなくなり、体の清潔が保ちにくくなります。お尻が赤くただれている場合は、おむつをこまめに替え、毎日短時間でもおむつをはずしてお尻を乾燥させるとよいでしょう。また、お尻や、湿疹(しっしん)が出ている部分だけでも石けんをつけて洗い、よく拭いて、乾燥させましょう。
赤ちゃん



※情報提供:兵庫県立大学 地域ケア開発研究所
災害看護 命を守る知識と技術の情報館
http://www.coe-cnas.jp