武田薬品工業さんが、なぜ新卒全員に、なぜTOEIC700点を義務づけたか | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

武田薬品工業さんが、なぜ新卒全員に、なぜTOEIC700点を義務づけたか

武田薬品工業さんが、新卒全員にTOEIC700点を義務付けたというニュースがあります。

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製薬国内最大手の武田薬品工業が、2013年4月入社の新卒採用から、英語力を測る学力テスト「TOEIC」(990点満点)で730点以上の取得を義務づけることが22日、明らかになった。
 通訳業務や海外赴任を前提とする採用を除いて、国内大手企業が新卒採用でTOEICの基準点を設けるのは極めて珍しく、他の大手企業の採用活動にも影響を与えそうだ。

(略)
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2011年1月23日03時05分 読売新聞
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詳しく内情は知らないですし、
そもそも、こういうのはガセネタだったというのが往々にしてあります。

ですが、武田薬品さんに限らず、
 「新卒全員にTOEIC700点義務」 という会社は今後増えてくるものと思います。

それはなぜかを推察しました。



なぜTOEIC700点か。

結論から言うと、ほとんどの業務において、TOEIC700点では英語力として不十分です。
でも、700点というのは妥当な数字です。

なぜかというと、

・700点越え位から、英語を使うメリットが英語を使う苦労よりも大きくなってくる
・だから、700点超えている人に英語業務をやってもらうと、英語使う→英語伸びる→英語もっと使う、という好循環が期待できる
・一方、700点切っている人だと、英語から逃げる→伸びない→英語から逃げ続ける という悪循環なる

もちろん個人差はあるので、かなりざっくり一般化した感じですが、
だいたいは700~800点くらいが目安 かなと思います。



なぜTOEICで測るのか

TOEICは、リーディングとリスニングしか測れません。
一方仕事では、ライティングもスピーキングも大事です。

また、TOEICは、次のどちらの場合でも、英語力を適切に測ることはできません。
・英語を習い始めたばかりの人には難しすぎ (TOEIC400点以下)
・英語がかなりうまい人には簡単すぎ (TOEIC900点以上)

ではなぜTOEICが使われるかというと、メリットが5つあるからです。
1. コストが安くすむ
2. 多くの社員に一度に実施できる
3. 人事部にとっての手間が少ない
4. 評価の客観性が担保しやすい
5. 測りたい英語力の難易度との妥当性が高い

1~3についてですが、人事部の仕事というのは想像以上にたいへんです。
大企業になってくると、万単位の社員に対して共通のモノサシで能力を測る必要があります。
しかも、少ないマンパワーで低コストでやらなければなりません。

4についてですが、何かを測るというのは想像以上にたいへんです。
よくできたテストでないと、英語力が伸びたのに「下がった」という評価が下されてしまいます。

その意味で、TOEICは英語面接などに比べて、評価の客観性が担保しやすいです。
10人にテストをする場合は一人の面接官で測れますが、
1000人にテストをする場合、数十人の面接官が必要です。
数十人の間で評価基準を統一するのは至難の業です。
いっぽう、TOEICはペーパーテストですし、
問題ごとに統計的な難易度がはっきりしているので、
評価の客観性がより高いです。

日本人は英語を3000時間勉強する必要 がありますが、
理論上、TOEICは英語学習時間100時間ごとならばその伸びを測れます。
日本のビジネスパーソンの多くが収まるTOEIC400~900点の間でいうと、
これができるテストは、TOEICを除くとなかなかありません。

もちろん、TOEICには欠点がたくさんあります。
チャーチルはこう言いました。
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けば」
同じようなことがTOEICでも言えると思います。
「TOEICは日本の大企業にとって最悪のテストといえる。TOEIC以外の全てのテストを除けば」



なぜ新卒全員なのか

現在、社内の一部の人しか英語に触れる必要がない会社でも、
社員全員に英語をやってもらった方がよいです。

というのも、
社員全員が英語ができるわけではないということが、
日本企業の世界市場での競争力向上を妨げている からです。

なお、経験則では、
社内の一部の人しか業務で英語を使わない会社が、
昇進基準に何らかのテストの点数を設けずに、
「英語を勉強しろ」 という意識付けを行った場合、
ほとんどのケースにおいて失敗します。

組織を運営するうえでは、
「なぜやらなければならないのか」
「まず目指すべき最小のゴールはどこか」
これらをはっきりさせることは大事だと考えます。



なぜ社員全員ではなくて、新卒全員なのか

これはわかりません。

ただ、おそらく社内の英語アレルギーに配慮したのだと思います。
大企業の強みは一気呵成にがらっと変えることではなく、
様々な人・点に配慮しながら、既存の強みを維持したまま物事を変化させていくことです。

その意味では、新卒はもっとも手を付けやすい分野です。
そして、新卒にTOEICの点数を課して数年たつと、
社内のある程度の人数が英語慣れしたます。
そのころなら、既存社員全員にTOEICの点数を課しても、反発がすくないです。

ただ、イチ零細企業経営者としては、新卒と同時に経営陣にもTOEICを課すべきではと思います。
英語能力向上で一番大事なのはモチベーション。
社員のやる気をどう高めるかを考えると、
企業のトップが必死になっている後姿を見せない限り、
社員も必死になるとは思えません。

その意味では、楽天・三木谷さんの 「英語ができない役員はクビ 」 発言は、
社内向けには説得力が高いです。




以上、長文すみません。

英語の勉強はたいへんですが、英語がいったんできるようになると、未来が大きく広がります。
「日本に最も欠けているのは希望だ」 というのは村上龍さんの言葉です。
おとなり韓国は、世界進出が非常にうまくいっているように見えます。
英語を学習することによって、日本人のプレゼンスも世界で拡大できればいいなと思います。