企業解読は実践でどの様に使うのか? | 収益プランナー奥村光英の明日のため今できること

企業解読は実践でどの様に使うのか?

奥村光英の財務諸表から読み解く


■企業解読は実践でどの様に使うのか?


「教育産業市場に参入したい、どの様に参入すべきかプランを考えてほしい。」


このような依頼を上司やクライアントから受けてしまった場合、どの様に考えますか?


「少子化で、大学も学生集めに苦戦しているようだし、市場も冷えているのではないか?正直厳しいのでは。」

などと考えてしまい、「困ってしまった。」などと途方にくれてしまいませんか。


実は、このような時にこそ、企業解読が役に立つのです。


そこで今回は、このような依頼があった場合、どの様にプランを考えるべきか、また、その際に企業解読がどの様に役立つのかについて、実践編としてお送りしたいと思います。



■市場分析の意味


○市場分析は「どこからお金をもらうのか」を調べるために行う。


新規に市場に参入しようとした場合、市場の規模や成長性などの分析をまず行うと思います。


しかし、実際には、分析と言っても「市場の規模が大きいから良い。」「市場は小さいけど成長しているから良い。」といったことを確認をするぐらいで、済ましてしまっていることが往々にあるように思います。


もちろん、それでも市場全体の状況を把握することはできますし、間違いではないかもしれません。


ただし、あまり意味があるようには思えません。


そこで、私の場合、市場の分析をする際には、どこから「お金をもらうのか」と言う視点で確認するようにしています。


○市場の規模はお金の流通量を確認するため行う。


例えば、世界中のどこでも売れるような素晴らしい商品が開発できたとしましょう。


ただし、その商品は、少量しか生産できず、売れる地域が限定されてしまとします。


であるならば、少しで高く買ってくれる地域を選定して売らないともったい無いと考えますよね。


そうすると、通貨価値や経済規模などを考えて、北朝鮮で売ろうとするよりも、ヨーロッパやアメリカ、中国などで商売をしたいと考えるはずです。


これが、市場の規模を捉え分析し、参入する市場を選定する意味です。


つまり、市場規模が大きいということは、その市場内で流通しているお金の量が多いということになり、それだけお金を獲得できるチャンスが広がることを意味しています。


逆に市場規模が小さければ、流通しているお金が少ないということですから、どれだけ頑張っても得られるものは少ないでしょうし、自らが拡大するとしても多大な時間がかかってしまいます。


つまり、市場の規模を確認するということは、最も自分にとって都合の良い、お金を得やすい市場を確認するために分析を行うのです。


○市場の成長性は、新規に投資するための資金が出やすいかを確認するために行う。


では、成長性を確認するのは、どの様な意味があるのでしょうか?


先程の事例で、ヨーロッパに参入することを決定したとしましょう。では次に、その中のどの国にアプローチするかが重要となってきます。


例えば、EUから850億ユーロもの支援を受けることになり、緊縮財政を強いられているアイルランドにアプローチするのと、最も財力があり成長しているドイツにアプローチするのでは全く違いますよね。


もっと分かりやすく考えるには、自分の財布でイメージしてみてください。


給与がどんどん上がる事が分かっていたバブルの頃のお金の使い方と、今のような不況下では、お金の使い方が全く違うと思いませんか?


それは、企業にも当てはまることなのです。


つまり、成長している市場にいる企業であれば、積極的に投資をして拡大しようという考えになりますが、逆に鈍っていると感じてしまうとコスト削減に意識が行くことになります。


つまり、成長市場であることは、投資のための資金を獲得しやすくなるということであり、既存の決まった購買だけでなく、新規の購買に対しても資金が出やすくなるということになります。


まとめると、市場の成長度合いを確認するのは、新規参入をした際に、市場内にいる各プレイヤーから、新たな使い道としての資金を獲得しやすいかどうかを確認するために行うということなのです。



■教育産業市場を確認する。


では、教育産業市場を確認していきましょう。


教育産業市場については、教育産業市場に関する調査結果2010(矢野経済研究所調べ)に詳しく掲載されていましたので、そちらにて確認します。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(1)を参照


まず、教育産業の各分野の市場規模推移を確認しました。


学習塾・予備校市場規模推移を確認したところ、少子化の影響がある中、緩やかに減少していることが分かります。


2010年度は若干の持ち直しが予測されていますが、成熟化にあり、急激な成長は見込めない状況です。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(2)を参照


次に、資格取得学校市場規模推移を確認しました。


資格取得は主に社会人が対象となるため、少子化とは直接的に関係はないと考えられますが、こちらも同様に縮小傾向です。


いざなみ景気と言われた状況下においても、景気回復の実感が無い中で、教育への投資が縮小傾向にあったこと、またeラーニングなどの代替手段が出てきたこともその要因であると推測できます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(3)を参照


英会話・語学学校市場規模推移を確認しました。


英会話も同様に市場が縮小する傾向にある状況です。こちらは、2007年頃に起きた、NOVAの問題が記憶に新しいところですが、業界自体が信頼を落としてしまったことと、学習形態が変わっていることも押し下げる要因と考えられます。


一例としては、プロゴルファーの石川遼を採用した通信教育の「スピードラーニング」などがヒットしており、消費者からの需要は依然として高い状況と推察します。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(4)を参照


資格検定試験市場規模推移を確認しました。


こちらは、市場規模そのものが小さいこともありますが、他の市場が縮小傾向にある中、横ばいであることが確認できます。


就職難などが叫ばれる中、能力の証明として資格取得を目指す方が、依然として多く存在していることがその要因と考えられます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(5)を参照


企業向け研修サービス市場規模推移を確認しました。


他の教育産業が伸び悩む中でも成長していた市場であります。ただし、リーマンショックが発生した2008年の後半から急激に市場が縮小していることが分かります。


そのことから、この市場は、市場全体の景気状況に左右されやすい業界であると推察することができます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(6)を参照


e ラーニング市場規模推移を確認しました。

市場が立ち上がったとされる、2005年から2007年にかけて急速に成長を遂げていますが、以降市場が縮小傾向にあります。


まだまだサービスが発展段階であることも考慮しなければなりませんが、ネット上での教育サービスと既存のサービスと比較した場合、教育の効果などに差がある状況なのではないでしょうか。消費者は冷静に判断しているものと考えられます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(7)を参照


社会人向け通信教育市場規模推移を確認しました。


こちらも、他の教育市場と同様に縮小傾向にあります。2008年から2009年にかけて横ばいになってきてはおりますが、急激に復活するとは考えにくい状況です。


資格取得学校市場の縮小と同様、社会人が教育に対してお金を投資しにくい状況下にあることが推察できます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10734350943.html
上記の(8)を参照


最後に、学生向け通信教育市場規模推移を確認しました。他の教育市場が縮小する中、唯一市場が右肩上がりになっていることが確認できます。


不況の折、塾などの箱型サービスの高額な費用負担が難しくなる中、一方では、教育への熱が下がることなく、それらの代替手段として利用されていることが想定されます。


また、eラーニングなどと比較しても、サービスが成熟しており、それが品質への安心感につながり、結果として成長を促進する要因となっているのではないでしょうか。



○市場の内情を推察する。


このように分析すると、様々な状況が見えてきます。市場規模で考えると、学習塾・予備校市場が1兆円ですので、最も大きく旨みがあるように見えます。


ただし、成長性を見てみると、成熟化から衰退期にさしかかっているようにも考えられ、市場内では競合が乱立し、淘汰が進んでいることも想定できます。


一方で、学生向けの通信教育市場を見てみると、教育産業市場内で唯一成長を続けていることがわかります。


他の産業がほとんど縮小する中で成長しているいることを考えると、市場内の企業にとって、最も期待度が高い市場であると考えられます。


○教育産業市場のまとめ


といったように、教育産業市場の状況をまとめると以下のことが推察できます。


1,教育産業市場は成熟しており、全体としては下降傾向である。

2,社会人向けの教育は中でも厳しい状況。

3,塾などの箱物サービスは、価格負担などの問題から厳しい状況である。

4,一方で、eラーニングは新たな市場を創出することが期待されているが現状は、あまりうまくいっていないことが分かる。

5,唯一、学生向け通信教育市場が成長している。


そして、全体として成熟市場にあることから、プロダクトライフサイクルから考えても、各企業とも新しいサービスへの渇望感が想定できます。


そして、業界再編が想定され、勝ち組と組むことが必須要件となることが考えられます。

さらに、唯一成長している、学生向け通信教育市場への投資が、最も各企業とも行い易い状況にあると推察できます。


■市場の分析の正しさを確認する。


ここまで、市場規模や成長度合いを確認し市場分析を行いましたが、これだけではその分析が正しいかの判断まではできていません。


そこで、実際に業界の構成がどの様になっているのかを確認していく必要があります。


まず、一番大きな規模となっている学習塾・予備校市場を確認してみました。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(10)を参照


数多くの企業が参入していますが、この業界が1兆円産業と考えると、飛び抜けた企業は存在していません。


ここから、やはり乱戦状況であることが確認できます。また注目すべきは、ほとんどの企業が、業界内の他の企業と業務・資本提携関係にあり、業界が再編されつつあることです。


このことから、ポーターの成熟期から衰退期におけるリーダーシップ戦略にあるような、リーダーシップをとろうとする企業が現れつつあることが推定できます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(11)を参照


次に、その他の注目すべき業界の構成を確認してみました。


やはり注目すべきは、通信教育におけるベネッセホールディングスです。


もちろん売上規模がずば抜けていることもそうですが、それ以上に、各業界において提携を進めており全面的に展開していることがわかります。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(12)を参照


では、ベネッセホールディングスがどの様な提携関係にあるのかを確認してみました。

明光ネットワークジャパンや東京個別指導学院などと資本提携を結ぶなど積極的に提携を行っていることがわかります。


先程の、売上規模と資本提携の関係などから考えても、業界のリーダーシップをとる企業であると考えるべきです。


以上のことから、市場の分析で推察したとおり、業界が乱戦状況であることが確認できました。


また、通信教育市場を制覇しているベネッセホールディングスが業界でのリーダーシップを取ろうとしていることもわかり、分析の正しさが確認できたことになります。


■参入に当たって目指すべき方向は?


市場の分析から、業界全体としては成熟しており乱戦状況であることが分かりました。


しかし、その中でも通信教育市場は成長をしており、ここには可能性があるように思えます。


さらに、その通信教育市場を確認したところ、ベネッセホールディングスが他企業を抑え、ずば抜けている状況です。


また、企業間の資本・業務提携の状況を確認しても、ベネッセホールディングスは、通信教育事業を軸に、各予備校への出資を積極的に行うなど教育産業業界を制覇しつつあります。


以上の結果から、教育産業への事業参入を検討するためには、単独で市場に参入すると乱戦に巻き込まれるため非常に難しくなります。


一方で、ベネッセホールディングスが業界を制覇しつつあることから、同企業と提携することができるのであれば、通信教育市場の成長性と合わせて考えても、最も可能性が高くなると考えます。


結論として、ベネッセホールディングスとの提携が可能な形での事業参入を検討すべきと考えることができるのです。


では、実際にどの様な事業を検討すべきでしょうか?



■ベネッセホールディングスとの提携の可能性を模索する。


○ベネッセホールディングス全体の状況を把握する。


検討するにあたって、まず、ベネッセホールディングスの状況を解読し把握することが大切です。

ここで、企業解読が役に立つことになります。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(14)を参照


まず、売上と純利益の状況を確認します。ベネッセホールディングスの5年間の売上の推移を確認したところ、2006年から2009年にかけて順調に拡大していることがわかります。


ただし、2009年から2010年にかけては売上高が減少し伸びが止まっており、ここに何らかの作用が働いたことが予測できます。


次に、当期純利益の推移を確認します。売上の増加とは裏腹に、2007年から2009年にかけて、純利益が下がっていることがわかります。


一方で、2009年から2010年にかけては、純利益が倍増しており、これも売上の増加とは真逆を示しています。


ここから、2009年度までベネッセホールディングスは、事業を拡大させることに注力しており、その後、2010年度に一旦整理を行い、利益を生み出す体質に変化させたものと推察することができます。


そして、2010年度に利益を生み出す体質への改革に成功していることが想定できることから、次の新しい施策に踏み出しやすい状況であるとも考えることができます。


○ベネッセホールディングスの各事業の状況を把握する。

次に、各事業の詳細を確認してみます。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(15)を参照


ベネッセホールディングスは、その他事業を除いて、大きく5つの事業で構成されています。


まず主力である教育事業グループを確認すると、全体の売上の6割以上を占める主力の事業となっており、事業の伸びを確認しても、この5年間で500億ほど売上を伸ばしていることがわかります。


また、営業利益を確認しても、売上の拡大とともに営業利益も順調に伸びており好調であることがわかります。

次に、売上が伸びている、シニアカンパニーとW&F(旧LTV)カンパニーを確認します。


両事業とも、売上は順調に拡大していますが、それぞれ全体の1割をしめる程度の売上でしかありません。


また、営業利益を確認しても、シニアカンパニーは収益を確保していますが、W&F(旧LTV)カンパニーは、売上の拡大にも関わらず2期連続の赤字に転落してしまっている状況です。


残る、語学カンパニーとアビバ事業の2つの事業ですが、こちらは売上が縮小傾向にある状況です。


また、営業利益の状況をみても、アビバ事業は不採算部門の整理が完了しようやく黒字になったところであると推察できますし、語学カンパニーは、急速に業績が悪化していることが分かります。


このことから、積極的な投資は考えにくい事業と捉えることができます。


※アビバ事業は、2010年3月31日にスリープログループ株式会社に売却している。


以上を整理すると、教育事業グループは、売上と利益とがしっかりと伸びており、その意味で新規案件などへも投資を行い易い土壌があることを読み取ることができます。


しかし、営業利益が確保できていることが確認できたとしても、企業自体に投資できる資金的な余裕があるかを確認しなければ、適した提案を行うことはできません。


そこで、財務面の活動を解読し、企業の状況を把握する必要があります。


○ベネッセホールディングスの財務的な状況を確認する。


ベネッセホールディングスの財務的な状況を確認するためには、石光仁氏が提唱されるキャッシュパワーステートメント(Cash Power Statement=CPS)を使い、実際に自由に使用できる資金を確認することが最も近道です。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10741783775.html
上記の(16)を参照


分析の結果、安定資金、修正安定資金ともプラスになっており、健全な財務体質であり、手元資金に非常に余裕があることがわかります。


また、その他の特筆すべき数字を確認したところ、ここ10年間で借入金の総額を、約5分の1までに圧縮していることです。


借入金を圧縮することで、利子負担を削減し利益を残しやすい体質へと改革していることが想定できます。


○ベネッセホールディングスの全体分析のまとめ。


以上の分析から、ベネッセホールディングスは、まず、全体としてこの5年間順調に売上を拡大しており、2010年には、利益を残せる体質への転換も完了しています。


一方、各事業を見てみると、主力の教育事業カンパニーが全体を引っ張っており、売上と利益の両面で支えている状況です。


さらに、財務的には非常に健全で、毎年借入金の総額を減額させることに成功しており、自由に使用できる資金を潤沢に確保しています。


つまり、主力である教育事業に関しては、まだまだ拡大させる意欲を持っており、さらにそこへの資金投入の余裕があることも把握することができます。


そして、解読の結果として、ベネッセホールディングスに提案を行うにあたっては、教育事業を伸長させるような提案を行うことが、最も採用される可能性が高くなると考えることができるのです。


では、具体的にどのような提案を行うべきなのでしょうか?詳細の解読を行っていきたいと思います。



○ベネッセホールディングスの教育事業の分析


ベネッセホールディングスの教育事業は、ベネッセコーポレーションが主軸となって展開しています。

それらを整理すると以下の図のとおりとなります。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(17)を参照


ベネッセコーポレーションは、M&Aなどで獲得したいわゆるハコモノの教室事業と、主軸である通信事業、そしてそれらに付随するように、ネットなどを活用したサービスや研究開発事業などを展開していることがわかります。


また世代としては、幼児から社会人、さらには教育関係者まで各世代へ全面的にサービスを展開していますが、やはり主軸となっているのは、幼児から高校生までとなっているようです。


また、前述の市場の分析にて、学生向け通信教育市場を狙うべきとの結果が出ていることから、ここでは、通信教育の分野、かつ幼児から高校教育までの事業での提携を狙うべきと考えます。


となれば、やはり「進研ゼミ」との連携を考えなければなりません。


○通信教育事業の状況の確認


では次に、進研ゼミがどのような状況にあるのかを確認しました。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(18)を参照


10年間の会員数の推移を確認したところ、教育業界は不況と言われるなか、400万人の会員を保持し続けていることがわかります。


さらに内訳を見てみると、小学講座の会員数の伸びが著しく、2002年139万人から、2010年には177万人まで伸びていることがわかります。


ベネッセコーポレーションのホームページによると、実に小学生の4人に1人が講座を受講しているとのこと。


このことから、ベネッセコーポレーションは小学生向けの講座に力をいれていることが伺え、その意味で同講座が狙い目であることわかります。


○進研ゼミ小学生講座の構成の確認


次に、小学講座の構成を確認していきます。進研ゼミ小学講座は、基本コースとオプションとの組み合わせで構成されております。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(19)を参照


つまりユーザーの講座の購読スタイルとしては、基本コースを学習しつつ必要に応じてオプション教材を購入する形になります。


さらに、進研ゼミの顧客単価を確認しました。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(20)を参照


すると驚くことに、ここ6年間で、約800円もの顧客単価の増額に成功しています。


会員数が400万人と考えると、実に月あたり約32億円、年換算で、約384億円もの売上増に成功していることになります。


進研ゼミがロングセラー商品であり、かつ日本経済がデフレ下であるということを考えれば、驚異的といえるのではないでしょうか。


このことからも、ベネッセコーポレーションは、進研ゼミの顧客単価をいかに増やすかということも命題として取り組んでいると考えられます。


○ベネッセコーポレーションの教育事業の状況まとめ


ベネッセコーポレーションでは、幼児から社会人まで各世代へのサービスを展開していますが、中でも力を入れているのは、幼児から高校生までの通信教育事業です。


さらに、その内訳を確認してみると、小学講座の会員数が劇的に伸びており、小学生の4人に1人が受講している状況であることがわかります。


その教育講座の構成は、基本講座とオプションで構成されており、基本講座を受講しつつ、オプション講座を必要に応じて受講する形になっています。


そして、顧客単価の推移を確認すると、6年間で800円もの増額に成功しています。


つまり、ベネッセコーポレーションでは、会員数の増加、特に小学講座の会員数の増加に力を入れており、同時に、顧客単価の増額に取り組んでいることがわかります。


結果、会員数の増加、もしくは、顧客単価の増加に貢献できる何かを提供することが、提携への近道であると想定できます。


■ターゲットの確認をする。


○日本家族構成を確認する


進研ゼミ小学講座の会員数の増加、もしくは、顧客単価の増加を目的とする場合、ターゲットとして考えなければならないのは、小学生を持つ家庭となりますが、そこに絞って調べる前に、その周辺から現状を確認していきたいと思います。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(21)を参照


まず、定量的に理解する意味で、世帯構成がどのように変遷しているのかを確認しました。


総務省の国勢調査によると、夫婦と子供から成る世帯は、平成12年から17年にかけて減少傾向が見え始めておりますが、依然として大きな割合を占めていることがわかります。


一方、注目すべき点としては、ひとりの親と子供から成る世帯が急増していることです。


過去長年にわたって拡大していることからも、平成22年度の調査ではさらに拡大していることが想定でき、この層を無視することはできません。


ひとり親の家庭が増えているということは、両親が揃っている場合に比べて、経済的に厳しいことや、親の時間的な問題から、子供の教育に関しても効率を求められてくることが想定できます。



○時流を確認する。


次に、家族について、定性的な情報を確認したいと思います。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(22)を参照


2010年11月2日 日本経済新聞(電子版)によると、子育ての利便性を求めて住み替える“ヤドカリ家族”が増えているとのこと。


「収入を維持しようと、妻が働きやすい環境を整えることに夫が前向きになり、定住にこだわらず好条件の住まいを求める。」という意識の変化があるとのことです。


働く母親の環境づくりを提案する組織「ママサポ・プロジェクト」が3月に実施した調査では、未就学児を持つフルタイムで働く母親(300人)が時間を増やすために利用、または利用したい具体的なサービスとして1位は「通勤途中にある保育所」(30%)以下「ネットスーパー」「子どもの一時預かり」「掃除代行サービス」「子どもの送迎サービス」と続いています。


ただし、それらすべてを上回ったのが「利用している、利用したいサービスがない」(33%)となっている状況です。


これらの状況から、子育てをしっかりと行ないたいが、母親も働かなければならない状況がある。


結果として、住環境を子どもの成長のタイミングに合わせて変えていくことで、可能なかぎり効率的な生活を実現しようとしているものと考えられます。


○国の政策の確認する。


また、時流を確認する際に、忘れてはならないのが国の政策です。


法律の改正があった場合はもちろんのこと、国が重点的に何かの政策を進めようとした場合、そこには間違いなく大きな流れが生まれます。


直近では、エコポイントや、高速道路の休日割引、たばこ増税といった、実際に大きな影響がある政策転換がありました。このようなものを思い出してもらうとイメージしやすいと思います。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(23)を参照


では、教育に関してどのような取り組みが行われているのでしょうか?確認したところ、大きな取り組みとしては、厚生労働省がイクメンプロジェクトという取り組みを行っています。


「イクメン」とは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと、または将来そうなろうと考えている男性のこと。


つまり、男性の育児へのかかわりを増やそうというプロジェクトを厚生労働省が推進しています。


プロジェクトの趣旨としては、男性の育児休暇取得率の向上が目的となっていますが、少子化対策として、育児に男性が積極的に取り組める様に環境の整備を整えていくとのこと。


さらに、株式会社ベネッセコーポレーションでもこの活動に賛同しており、「社員の仕事と生活との調和が図られることにより、貴重な労働力の継続的な確保とパフォーマンスの維持向上」を基本的な考え方に、男女区別なく、育児・介護の両立支援策や、スーパーフレックス制度・在宅勤務制度等の時間や場所の柔軟性を高める施策を推進しています。


これらのことから、今後は、男性が子どもの教育への関与度合いが一層深まっていくことを想定する必要があります。



○進研ゼミ利用客の確認


また、進研ゼミ小学講座の会員数の増加、もしくは、顧客単価の増加を目的としていますので、当然進研ゼミの利用者を調べる必要があります。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(24)を参照


会員情報については、株式会社ベネッセコーポレーションのホームページに詳細な体験談などが数多く掲載されていますので、そちらを分析しました。


通信教育の目的を安直に考えると、学習=「学力向上」が目的と直線的に考えてしまうところですが、分析の結果、「能力が向上する」以外にも、「継続性や習慣が身につく」「効率的な学習」「達成感を覚える」「忍耐力が身につく」「勉強への好奇心を得られる」「コミュニケーションツールとして使える」「親と一緒に学べる」「スケジュール管理が身につく」といったようなことが求められているということがわかりました。


つまり、サービスを検討するにあたっては、これらを深めるもの、達成を補助するものを検討する必要があると考えることができます。


○ターゲットの確認のまとめ


以上の分析をまとめると、次のような事が浮き彫りになりました。


まず、日本の家族構成として、核家族の拡大はもちろんのこと、今後は、特に母子家庭、父子家庭の拡大が予測されます。


さらに、ヤドカリ家族などが出現してきたことからも、時間的な効率性は一層求められることが想定できることがわかりました。


また、イクメンプロジェクトが推進されることで、男性の子ども教育への関与度の増加することなども予想でき、子供単独での教育という視点だけではなく、親と子で学ぶという視点を将来に向けては、考慮する必要があることがわかりました。


一方で、進研ゼミの会員を分析したところ、純粋な学力向上以外に様々なベネフィットを感じていることが明らかになりました。


結果、直近では「効率」「親子での教育」を考慮しつつ、進研ゼミの会員がもとめるベネフィットを満たすことが求められており、そのようなサービスを検討する必要があることがわかるのです。


■まとめ


○状況を整理する


「教育産業市場に参入したい、どの様に参入すべきかプランを考えてほしい。」


今回、この課題に答えるため様々な分析を行ってきました。


市場分析では、教育はほとんどの業界が衰退気味でありましたが、唯一学生向け通信教育業界が伸びていることがわかりました。


そして、詳細を確認してみると、ベネッセホールディングスが業界の圧倒的リーダーであることが分かり、純粋に参入するのはリスクが高いと判断することができました。


結果、ベネッセホールディングスとの提携することが参入への近道であると考えることができました。


次に、ベネッセコーポレーションを解読してみると、やはり学生向け通信教育事業が伸びており、中でも小学生向けの講座が伸びていることがわかりました。


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(26)を参照


さらに、ベネッセコーポレーションが進研ゼミに関して取り組んでいる方針を確認したところ、大きく2つあり、会員数の増加と、月あたりの平均単価の増額に取り組んでいることがわかりました。


そして、ターゲットは、学力向上だけでなく、「効率性」、「親子での教育」「コミュニケーション」等といったベネフィットを求めていることもわかりました。


○事業の方向性はどうすべきか?


http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10777663359.html
上記の(26)を参照


さて、ここまで、状況が理解できれば、あとは簡単ですね。


ベネッセコーポレーションとの提携を検討するに当たっては、会員数の増加、もしくは、顧客単価の向上を達成するベネフィットをベネッセ側に提供する必要があります。


もちろん、両方を達成できるサービスを提供できるのであれば良いのですが、小学生の4人に1人が利用している中、さらなる会員増を達成することは難易度が高いと考えます。


一方で、顧客単価の向上に関しては、6年間で800円の増加を達成するなど、単価の上昇に関してはベネッセの利用者に受け入れられており、会員増よりは達成しやすいものと考えられます。


つまり、サービスの検討にあたっては、まず顧客単価の向上を実現させることを優先目標とすべきです。

そして、顧客単価を向上することで、その増額分から費用を頂戴することを考えられれば、お互いにWINWINの関係を築くことができるはずです。


結論として、自社の強みの中から、ターゲットのベネフィットを満たし進研ゼミの単価を上げられるようなサービスを検討することができれば、ベネッセコーポレーションとの提携が実現でき、最も良い形で教育業界への参入が可能となるはずです。


○企業解読を活用すれば、意向にあった提案を行う事ができる。


このように、企業解読を活用することで、その企業が求めているものをより明確に知ることができます。


そして、企業が進もうとする方向性にあった提案を行うことで、採用される確立も高めることができるはずです。


ぜひお試しいただければと思います。