1月にはいり、アルゼンチンの地方において奴隷労働の実態が続いていることが告発されている。この1月31日には、米国に本部を持つ多国籍企業、デュポン関連会社が政府機関によって告発された。この会社の名前はパイオニア、ロサリオ州パラヘ・モンテにおいて、3つのキャンプ地に140人の労働者を住まわせ、トウモロコシの手による採取労働に従事させていた。


告発したのは連邦歳入庁(AFIP)、社会保険総局(DGRSS)を通じて捜査、コルドバ州労働省と裁判所に告発をおこなった。労働者は最低限の安全衛生、労働条件を欠如し、奴隷状態にある。また税の義務を逃れている、というものである。


労働者たちは仲介業のアデコ・スペシャリティーズによって雇われ、サンチアゴ・デ・エステロ州からパイオニアに送り込まれる。薄板で作られた小屋に住まわされるが、これには断熱材が使用されておらず、室内に電気はない。害獣や虫の攻撃から身を守ることもできない。飲料水は地上太陽のもとのタンクのものを利用するが、これは灌漑用水として使用されているものである。トイレに戸はなく、壺があるだけである。契約期間が終わるまで抜け出すことはできず、最短の交通機関まで40キロメートルある。賃金は1日24ドルで最終日まで支払われることはない。しかし植物に傷をつけたとして差し引かれる。その根拠を労働者が知ることはできないため、実際にはいくら支払われるかは最後までわからないという。


連邦歳入庁(AFIP)はこの問題をうけて、デュポン社にたいし、関税の自己申告制度(aduana domiciliaria)を取り消すことを決定した。この関税システム(AD)は、1999年に制定されたもので、第1級の企業にたいして自前の関税事務所をもうけ(AFIPのスタッフとともに)、穀物などの輸出入の量などについて処理するもので、政府にとっては役人を減らすこと、企業にとっては保管のため費用がかからないなどの利点があった。デュポンの取扱額は1億1500万ドルにのぼる。


連邦政府のカルロス・トマダ労働相は、地方における、このような輸出用農作物の生産に従事する農業労働者で奴隷状態にあるものが数千人存在するという見方を示した。農村部のみではなく、都市部の繊維産業なども奴隷状態にある工場が存在している。アルゼンチンでは1853年に奴隷制度が廃止されており、クリスティーナ・フェルナンデス政権は、21世紀になってもなお存続するこのような状態をなくすことを明らかにしている。


アルゼンチンでは最後の軍政(1976-1983)において、当時のホセ・アルフレド・マルティネス・デ・オス経済相によって、労働者の権利を保障するシステムが完全に破壊された。1990年代には新自由主義政策の結果、労働者の35%が失業し、州によっては60%の労働者が職を失った。このことはやがて2001年のアルゼンチンの経済破綻を引き起こすのであるが、労働者の労働条件での弱い立場は引き継がれることになる。


議会に法案が提出されたが、「それには部屋の大きさや、トイレを設置することまで書かなければならなかった。この21世紀のアルゼンチンにおいてである。なぜならこれまで、労働にかかわる条件、生活条件を定めた法律がなかったからである」、トマダ労働相は語った。(0943)


* この記事は、La Jornada, El Pais, Pagina 12, Rebelion, EFE, を参考にしました。