今日も、発達障害のココロの不思議について考えてみます。発達障害の成長過程において、そこで育った新しい自立した自分が、それまでの幼い自分の心と、どこか分離したように存在する事があるようなのです。今日はそんなお話です。
【ドナ・ウィリアムズの自伝から】
有名な自閉症当事者であるドナ・ウィリアムズさんの自伝には、
ドナ・キャロル・ウィリーという3人の自分が登場しています。
本人の自覚の中で、この3人が切り替わりながら、
日々の暮らしを送る様子が、克明に描かれています。
学童期のウィリアムズさんは、
友人と遊ぶ時など、キャロルという社交的な人格が表に出て、
自閉症そのものの気質を持つドナは、
奥の方で、その様子を伺っているかのようです。
この小説だけを見ていると、これは単純な多重人格なのかと考えがちです。
しかし、そうではないと指摘している方がいます。
ぼくはそれをネット上で、見つけたのですが、ここで引用しますね。
山岸美代子さんという方の文章「つきまという影」からです。
http://3rd.geocities.jp/horidasi1147/totu2.html
**********************************************
正常な人には、まるでドナが「役割演技」のように、三人のキャラクターを
意識して使い分けているように読めてしまいます。
ごっこ遊びすら出来ない自閉症に、超高難易度の「役割演技」など出来ません。
しかし正常な人にとって「感情移入」という手法は日常的であり、
その際ドナの三人と、 正常な人自身の「役割演技」とを混同してしまうのです。
ドナの中の三人とは、実は成長に関わった三大情報元を意味します。
単なる情報の擬人化なのです。(中略)
私の三人とは、
自閉症の私(=生物学的な特徴からくる私)
正常な私(=学校教育によって作られた私)、
大人の私(=成熟した知性を持つ私)
この三人は、恐らく「ココロ」が正常に発達すれば矛盾なく解け合って、
自己意識(=私はこういう人間、なぜなら私は・・)として形成されるべき、
部品に相当し、これが部品のまま一度も完成されず、
ルーズなコロニー状態のまま成長せざるを得なかったのが、
ドナや私などの自閉症だと考えています。
**********************************************
さて、この文章から、
発達障害では、多重人格という事ではなくとも、
ココロの中に、何か不連続なパーツとして、
成長過程で出来てきた、多面的な自分が存在する様子がわかります。
定型発達であれば、こうした部分を同様に持ち合わせてはいるものの、
それは継ぎ目の無いひとつの人格として、
自由に行き来するように切り替わります。
その場その場のTPOにあわせて、
自分の役割切り替えと同じように、
発言や態度も変化していくのでしょう。
しかし、発達障害のココロでは、それは分断されたパーツの様なもので、
その切りかえも余りスムーズなものではなく、
時には、自分では切換えコントロールできないこともあるようなのです。
僕は最初にこのドナの自伝を読んだ時、
虐待がおこした解離現象であり、
単純な多重人格なのだろうと思って読んでいました。
しかし、実際はどうもそれとは違うようなのです。
【人格の多面性が、不連続に分断している発達障害のココロ】
実際僕が知っているある当事者女性は、
大人の自分の事を「花子さん(名前は仮称です)」、
幼いままの自分の事を「花子ちゃん」と呼んで、
僕に説明をしてくださいました。
「そうそう、そういうことは、
私の中の『花子ちゃん』が中々納得してくれないのよね」
・・・などと、おっしゃるのです。
最初僕は、これを単純な心の葛藤の事だと思っていたのですが、
どうも山岸さんのご指摘と同じ事を言っているようなのです。
こうして考えると、発達障害の方が、ひとつの思いにとらわれたり、
そこから中々切りかえられない理由のひとつが見つかったような気もします。
また、パニックなどの問題行動を起こすときに、
普段の人柄とは全く違って、
非常に幼い思考が現れて来る時があるのですが、
その理由が、これなのかもしれません。
余り語られていない事実ではありますが、
発達障害のココロのありようは、
このように定型と違う部分もあるようなのです。
こうしたことを知る事は、
ひとつ扉を開けることに繋がるように感じます。
互いを理解しあって、
誤解や齟齬の無い社会になってほしいと、
僕はつくづく思うのです。
読者アンケートを実施しています。ブログTOPページ に設置しています。
今後の記事執筆の参考にしたいと思います。是非、ご協力お願いします。
皆さんのクリックがとっても励みになります!
【告知です!】
日頃の生活を離れ、ゆったりと過ごすお時間はいかがでしょうか
同じ境遇を持つもの同士、悩みを語ったり、
判らないことを聞いてみたり、
互いの経験を交換し合って、問題をひとつひとつほどいていく・・・・
そんなグループを目指して、開催しています。
2011.04.08(金) 10:00~14:00
大阪市北区・中央区の貸し会議室にて開催!
少人数(10人)制 要予約