大切な人とのお別れは、いつなんどき訪れるかわかりません。


 息子は、二回(私の母方の祖母、私の実父)葬儀を経験しています。とてもたいへんな経験でしたが、そこから息子が感じたものは、多かったように感じています。


 もし、近しい身内なら、ご存命のウチに、一度お見舞いに行くこともお勧めします。そうして、やはり経験から「死」という難しいことも理解していくと思います。


 私自身は障害があるなしに関わらず、どんな形であっても、お別れをきちんとする方が良いと考えています。

 それは、自閉症だからではなく、その人との関係において自然なことだと考えるからです。


 その時は、混乱されるかもしれません。けれども、将来的に思っても、親の方に後悔が残りませんし、また、お子さんが納得するためにも、必要なことだと思っています。

 けれども、葬儀に自閉症の子どもを同席させるのは、とてもたいへんなことでしょう。

 少しでも、ご家族もご本人も、楽になるように、自分自身の経験から、準備するものを考えてみました。

 ある親御さんとのメールのやりとりから、書いています。どうぞ、ご参考になさってください。


 また、支援者の方は、お近くでそういうことがあったときは、特別なときだけに、ご家族、ご本人さんのためにも、少しでもいいので、お手伝いしていただければ、さいわいです。



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 準備するものについては、以前、Hさんが急にお葬式をお迎えになったときの書き込みを貼り付けます。自閉症児のMちゃんは、6歳でした。

 ●を付けている行が、準備物です。

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 装備のような特別なシチュエーションのときは、誰彼に、助けてもらいましょうね。

 ●ヘルプに来てくれる人はいませんか?

 ウチの場合は、姉の子ども(大学生)や兄の子ども(中学生)が、関わってくれたので、小2で向かえた祖母の通夜、葬儀もなんとなく、誤魔化しながら出来ました。
 もし、親族におられなかったら、仲の良い同僚や、親御さんに、お子さんのお守り(安全を守る)だけでも、頼まれると助かります。


 また、こんなときだからこそ、ヘルパー制度を利用しましょう。見つからないときは、支援センターに問い合わせをして、紹介をしてもらうことも可能かもしれません。


 だれか、人を捜してみましょう。

 ご実家なのか嫁ぎ先なのかわかりませんが、

●Mちゃんやお兄ちゃんや赤ちゃんが遊んだり、お菓子を食べたりするお部屋を確保して、しんどかったら、そこにいるみたいにしたらいいです。

 そこにずっとヘルパーさんがいてくれたら、Hさんがする役割の時にも、安心です。

 それと、

●Mちゃんがいつも持ってるお気に入りのアイテムは、そばに置いておいてね。
 
 特別な時だからこそ、安心するアイテムは必需品です。

 お葬式と言っても、どこのお宅でも、子どもは天真爛漫なものです。悲しい顔をして欲しいのは大人だけ。やっぱり人が集まってくるザワザワする、そのことによって、興奮して、返ってニコニコしてしまうものです。それは、健常児でも同じなので、Mちゃんが取り立てて、雰囲気を壊すようなことをしても、気にしないでおきましょう。

●ただ、洋服は「白黒(または紺)の服」を着せた方がいいかも知れません。

 それは、みんなが黒い服を着ているので、動いていても違和感がないからです。目立たないそれだけで、親御さんの気持を1つ楽にします。

 嫌がったら、こう言う時は、「2つの黒い服」を用意して、どちらかを着てもらうようにしましょう。ちょっとテクです。
 
●そして、Mちゃん用の「マイ座布団」を用意してください。その方が、座るところがわかりやすく落ち着きます。

 そして、お葬式は、その個人が故人をしのぶものです。ですから、おのおのが、お父様とのお別れをされますので、周囲に気を遣わないように。HさんはHさんなりの、そして、Mちゃんは、Mちゃんなりの「お別れ」が出来たらそれでいいのです。

 ●同じである必要は、ありませんから、どうぞ、お気楽に。それに、それがどんな形 であれ、誰も、それほど、気にしません。

 Mちゃんは、6歳なので、ちょっとお葬式の理解はむつかしいと想います。
 お兄ちゃんは、それなりに理解されるでしょう。お兄ちゃんに、しんどい経験にならないようにしてくださいね。きっと頑張りはるよ。
 あとで、必ず、お兄ちゃんの労をねぎらってあげてください。

 Mちゃんは、意味が理解出来るとは思わないでいいです。ただ、雰囲気は伝わりますから、

●何が起こるのか、次具体的に何したらいいのかを見せておいてください。

 でも、それでも、とっても特別な自体ですから、長時間座ったりするようなことが、 つらかったりしたら、どこかで遊んでも言いようにすること。別に全部参加することが、お子さんにいいことだとは思いませんから。

 お葬式がネガティブな経験になると、いつかまた、どなたかのお葬式を向かえた時に、全部を嫌がるようになりますから、大人の思惑の無理強いはしないようにね。

 でも、きっとMちゃんは、何かを感じ、そして、何かが残ります。

 伝えるのは、

●「いつ」「どこで」「誰と」「何をする」「いつ終わる」「終わったらどうする」です。

 それをスケジュールしていきます。そして、

●して欲しいことは、具体的に伝わるような表現を考えて、絵に描いて(この場合絵に描くのは、わかりやすいです)ください。

 ペンとメモ帳をカバンに入れておいてね。わかんないようなことでも、書いて伝えてね。

●たとえば、「焼香」とか「棺に花を入れる」もね。

●していい状況も、用意しておきましょう。「静かにします」とか「座りましょう」とかも

 親御さんにとっては、真剣な時間であることは、間違いがないのです。だから、不思議と子どもにも、その真摯な態度が伝わっていきます。それは、不思議なほどですから、どうぞ、ご心配ならさずに。

●死というものが、わかりにくい場合は、絵本などを活用します。

 動物ものでもいいので、天に昇っていくイメージをみてもらうようにします。

●ショッキングなシーンは、避けた方が無難と思われたら、そうしてください。

 全部を経験しなくてもいいので、「生きていた人が→亡くなった。だからさよならをしている」ということが、ワンシーンでも記憶に残るように、していきます。


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 <Hさんからのご報告>

葬儀に際しては本当に適切なアドバイスとお気遣いを
ありがとうございました。
アドバイスのおかげで、少しは肩の荷を下ろせて葬儀に
臨めた気がします。
そして私も父との別れがちゃんとできたように思います。

お通夜でMちゃんは棺に父の好きだったお菓子を入れて、
お焼香も煙は怖かったけれどとりあえず真似できました。

式当日は予想以上の混雑で、棺や祭壇の上に上ってしまったMちゃんでしたがやりすぎたかなとも思いますが、棺の窓を開けて「おじいちゃんが、ここにいるから、あがりません。」

と言うと祭壇の近くには行きませんでした。

とりあえず、火葬場にもバスで行きました。
でも、バスで眠ってしまったので、着いたらいきなり知らないところ
になってしまい、棺を送らず、義理の姉と家に帰っていきまた・・・・

Mちゃんは父とそういう別れをしました。

スケジュールの紙、マイ座布団、マイうどん、マイお絵かきセット・・・そして何より主人の姉が大阪からかけつけてくれて、強力なサポーターになってくれたこと・・・これにつきます。

しんどくなっったら、台所の隅のMちゃんの場所か義理の姉と車の中でお絵かきをして、無理せず、MちゃんのペースでMちゃんが葬儀に参加できたのでは・・と思っています。

それと、黒い服これは本当によかったです。
目立たないだけでも気持ちが楽でした。

本当にありがとう。
いざというときに、今回は義理の姉でしたが、サポート出来るよとメールしてくれた親の会の友人など身近なところでのサポーターの存在を本当にありがたく思いました。

アドバイス、ありがとうございました。