私の見た「日本郵便」の現実。今回は財務諸表を見ながら、先日報道された「赤字100億円を超える見込み」を考えて見たいと思います。
今回は参考資料をリンクしました。
※郵便事業株式会社(日本郵便)の貸借対照表及び損益計算書
http://www.post.japanpost.jp/about/financial/h2104-h2203.pdf
http://www.post.japanpost.jp/about/financial/h2004-h2103.pdf
http://www.post.japanpost.jp/about/financial/h1910-h2003.pdf
※日本郵政グループのコミュニティサイト
郵便屋さんの瓦版 - 日本郵政:決算 郵便は赤字に転落 金融2社に収益 ...
http://pos-com.staba.jp/wordpress/archives/1380
これによりますと、第3期(2009年度)に特異な「損失」が存在することが判ります。まず、「固定資産処分損」の金額が増えたこと(2008年度 9億7700万円→2009年度 30億4700万円)、昨年度までなかった「貸倒引当金繰入額」と、「関係会社株式評価損」が存在します。これらが恐らく旧「JPエクスプレス」の子会社化に伴う処理の一部だと考えます。
(実は、旧JPエクスプレスは、昨年4月に日本郵便が日本通運が所有していた株式を全て買い取った為にこの時点で日本郵便の完全子会社になったそうです。そのあと、昨年7月に日本郵便に『営業譲渡』されて解散しています。)
因みに営業損益ですが、この時点では赤字額はさほど多くはありませんでした。
※営業損益と最終損益の推移
・2007年度(6ヶ月決算) 営業損益 約1037億円 最終損益 約694億円
・2008年度 同 約448億円 最終損益 約298億円
・2009年度 同 約427億円 最終損益 ▲約474億円 注:▲は損失
・2010年度 同 ▲約1150億円(見込み額)
この赤字拡大の主な原因として私が考えるのは、『郵便収入の減少』『固定資産の償却額の拡大』『人件費の高騰』が挙げられると考えます。
先ず『郵便収入の減少』ですが、これは毎年コンスタントに売り上げる「年賀はがき」「暑中見舞いはがき当の売り上げの減少」や「企業からの郵便差出数の減少」「新規開拓した販売チャネルが必ずしもうまくっていない」ことだと考えるのです。
これらの原因として、「少子高齢化(大量に年賀はがき等を差し出す家庭が少なくなってきた)」と、「広告としての郵便の役割の変化(メールなどへの置き換え)」「費用対効果が弱い(費用が掛かる割に売り上げに結びついていない)」ことがあげられます。
特に「費用対効果が弱い」ことは旧郵政公社時代から問題になっていることで、今までは「黙ってても売れる」といった営業姿勢を「営業しなければ売れない」、といった民間企業の考えに変わっていないことも原因ですが、商品企画がちょっと弱い面があることも否めません。
また、企業がダイレクトメールを差し出すにしても、郵便を大量に差し出すより、はがきにメールやサイトのアドレスを書いておいて、それからネットを見ていったほうが効果があることがわかって、封書だったのがはがきに置き換わっていった事もありますし、カタログを差し出すにも地域や内容によっては郵便よりもメール便で差し出したほうが「安上がり」になるといった事情もあります。
それに決定的な原因として、『郵便は地球温暖化の敵!』といった一部電話会社の主張がマスゴミやネットを通じて大々的に流れ、それを信じ込ませたことも郵便収入を減少させたことだ、と考えます。
しかし、よく考えてください。確かに郵便は輸送にトラックや鉄道貨物・飛行機・船を使いますが、それを使用することで発生する二酸化炭素はたかが知れていて、その発生を抑える技術(電気自動車やハイブリッド車の利用)や郵送手段の効率的利用などで発生を抑えられる筈です。宅配便でも同じようなことが言えるのではないでしょうか?
恐らく、この主張は地球温暖化に名を借りた『コスト削減』としか言いようがありません。現に電話会社やクレジット会社の請求書は次第にネットに置き換わっていく傾向です。
(これにつきましては、消費生活アドバイザーなどは、「自己破産」や「多重債務」を防ぐために紙の請求書が必要、との主張があり、諸外国ではネットと紙の請求書を併用させている方向になってきてます。)
話が長くなりますので、後の2つにつきましては【後】でお話しします。