2月のインド株式市場の分析と今後の展望~果敢に財政削減に取り組むインドの今~ | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

2月のインド株式市場の分析と今後の展望~果敢に財政削減に取り組むインドの今~

先日はインドマーケットについて書きましたが、本日はインドの国内経済のファンダメン
タルとインド経済に大きなインパクトを持つインドの財政状況について考えてみたいと思
います。その際に、インド経済の歴史で、インドは昔は外国資本を導入する事に極度のア
レルギーを持っていた国家で、1989年の経済危機まで経済面は極度の内向きだったこ
とを、まず知っておいてください。そのうえで読んでいただければ幸いです。


インド政府は2011年度(2011年4月~2012年3月)予算案で、財政健全化へ向けた強い取り
組みを表すとともに、中央政府の財政赤字の対GDP 比率が今年度予想の5.1%から4.6%に
縮小するという楽観的な予想を示しました。今回、政府は、経済成長に伴う堅調な税収を
見込む一方で、引き上げ予想が多かった多数の品目の物品税を据え置き、個人所得税の課
税最低限度額を引き上げました。その上で、ハイブリッド車の開発奨励などに重点的に予
算を配分、産業発展と環境問題への配慮を示すなど、成長にも配慮した予算配分を示しま
した。一部には、今回の予算案には若干大衆迎合的色彩があるという意見もありますが、
これは近々行われる主要5州の州議会選挙を睨んだためと見られます。政府によるインフ
ラ支援策が幾つか示されたことも今回の予算案の特徴の一つで、公共投資に前年比+23%
の2 兆1,400 億ルピーを充てるとしています。また、税制面でも①企業が発行するインフ
ラ関連債券への外国資本による投資上限の引き上げ、②既存のメガ・プロジェクトの増強
に必要な国産の資本財に対する物品税の免除、③国道建設のためのバイオアスファルトと
特定機器への基本関税の全額免除、といった改正案が盛り込まれました。ただ、課題は多
く残されています。政府は、農産物の安定供給を確保するために「食糧安全保障法」の成
立を目指していますが、これは歳出の増加に結びつくものです。政府予算案による歳出削
減は、燃料補助金の削減に大きく依存していますが、政府補助金制度見直しに向けた第一
歩として先行が予定されていた燃料価格の自由化は、現在のインフレ加速状況を受けて先
送りされる可能性が出ています。インドでは、第二世代(2G)携帯電話の周波帯域のライ
センス割り当てを巡る不正疑惑を契機に政局が緊迫化しており、シン首相は就任以来の厳
しい状況に直面しています。このため、懸案のモノとサービスの統合税法(GST)が早期に
成立する可能性は低いと思います。GSTが成立するためには、物品、サービスの税収の
州政府と中央政府の配分変更という憲法改正が必要で、議会の圧倒的多数の賛成に加え、
過半数の州議会政府の支持を得ることが条件となっています。一連の不正疑惑を巡り、昨
年末の「冬季国会」は審議が空転し、経済成長を支援する重要法案の審議が先送りされま
した。しかし、ここにきて両院合同委員会が開かれることで与野党が合意するなど、事態
には改善の兆しが見られます。国内でインフレ圧力が高まっていることもあり、政府は今
回の予算案では補助金制度の一段の見直しには着手しませんでしたが、補助金制度の改革
に向けたロードマップを提示しており、裁量的経費の広範に亘る見直しを進める考えであ
ることを示しました。また、政府は、来年度に保有していた国営企業株売却により4,000
億ルピーを調達することを目指していますが、今年度は第三世代(3G)携帯電話の周波帯
域のライセンス収入という税収外歳入が予想を上回ったことで、予定していた売却計画を
次年度に先送りしたことを踏まえると、この目標を達成することは十分に可能と考えてい
ます。予算案が発表された28日(月)の株式市場は、その内容が政府によるインフレ圧力
の緩和や財政赤字削減に対する取り組み姿勢を示すものであったことが好感され、SENSEX
30指数は前営業日比+0.7%で引けました。特に、国内企業に対する加算税の税率が現行の
7.5%から5.0%に引き下げられたことや、適格外国機関投資家による国内投資信託への投
資が解禁されることは、インド市場への投資促進に繋がるとの期待を高めました。



Ken