コスモス 今回の東日本大震災に際しては、ガソリンやトイレットペーパー、ミネラルウォーター、食料の買い占め・買い溜めなど各地で消費者のパニック行動が見られました。

多くの人が買い占めや買い溜めに走ってしまう行動原理については、前回の「第三者効果」のブログで説明しましたが、それ以外にも「確証バイアス」という心理的な偏向が働いている可能性があります。

人間は無意識のうちに、自分がそうあって欲しいと願う意見や情報、あるいは自分の信念に合致する意見・情報を選んで、自分が否定したい意見・情報や、自分に都合の悪い意見・情報を排除する傾向があります。これが「確証バイアス」です。

自分の信念に都合のいい意見や情報ばかり集めて、都合の悪い意見や情報は切り捨てるという行為、自分が見たいものだけを見るという行為が繰り返されていくとどうなるでしょうか。

もともと偏り気味であった認識が偏りのある意見・情報で補強されることを通じて、ますます偏向の度合いを強めていき、最終的にその人の状況認識は非常に偏ったものになってしまいます。

 今回の買い占め・買い溜め行動についていえば、現実には物資が不足するほど深刻な状況ではなかったにもかかわらず、危機意識が強まりやすい人は、たくさんある情報の中から危機を煽るような情報だけを無意識のうちに集めてしまい、そうでない情報を捨象してしまうことになります。

その結果、自分の心の中に芽生えていた危機意識が確信へと変わり、実際に買い占め・買い溜め行動に走るということです。 




BRICs経済研究所 代表 門倉貴史