常連客の弁護士や司法書士らから「ママ」と呼ばれ、慕われ続けた武田初子さん(72)が切り盛りする「喫茶ルナ」(岡山市北区)が、今月23日で閉店する。岡山地方裁判所の近くにある今では珍しい“純喫茶”が、36年の歴史に幕を下ろす。

 「引き際が大事。元気なうちにやめたかったんです」と武田さん。「決めたときはさばさばしていたけれど、閉店の張り紙をしたときはこみあげてくるものがありましたね」という。

 武田さんが店を始めたのは昭和50年1月。近くに裁判所や法務局があり、周辺に弁護士事務所も増え始めたことから、客層は弁護士や司法書士、裁判所職員らが中心になった。

 「この店は本当に憩いの場だった」と話すのは、30年以上も通い続けているという平松敏男弁護士。「家庭的で気軽に入れるお店。わがままも言えるしね」と笑い、「体調が悪いときには、メニューにはないうどんやおかゆも作ってくれて、本当に母親のようだった」と感謝する。

 また、店にマイカップを置いている司法書士の男性(52)も「ママがグチを聞いてくれて、受け止めてくれる。だからこの店はみんなが集まった」といい、「こういう店はほかにない。本当に残念」と閉店を惜しんでいる。

 母の日や誕生日には、常連客から多くの花束が贈られてきた武田さん。「お金は残らなかったけれど、人といういい財産をたくさん頂いた」と誇らしげだ。

【関連記事】
これが山陽・九州新幹線だ 試乗会をレポート
日生のカキオコって何? B-1GPに挑戦
岡山には「桃太郎」がランドセルときび団子
岡山・宗忠神社で「どんど祭」 焼きモチ食べて無病息災
「一票の格差」 続々と「違憲」「違憲状態」判決 
中東の激動に役割果たすシリコンバレー 国際政治と、どう向き合う?

「この記事の著作権は産経新聞 に帰属します。」