11月20~21日、島根県松江へ米・食味分析鑑定コンクールに行ってきました。
 http://mytown.asahi.com/areanews/shimane/OSK201011200116.html


 参加目的はコンクールそのものより、実際にはそこに集まる農家とかバイヤーさんたちと会って話したり情報交換したりする、ほとんど年1回の同窓会みたいなものなんですけどね。
 けど全国から応募は三千近くあり、国内最高峰の米が集まる、米のコンクールとしては最大と言えるイベントで、興味ある人は是非見に行ってみると良いと思います。来年は群馬県の川場村だそうです。正直言って、毎年場所が辺鄙すぎるんだよなぁ。


 さてここに行くと毎年、応募された米全ての分析データがまとまった資料を貰えるのですが、これってけっこうすごいです。先ほども言ったように三千近い米の、生産地・生産者・米の品種・生産法(一部)と、水分、蛋白、アミロース、脂肪酸、食味計で測った食味値がいちいち載っていて、これを貰って眺めるのも毎年の楽しみになっています。



農家こうめのワイン-コンクールデータ

こんな感じ。写真をクリックすると、切れてる右側も少し見えます。


 で、一人で見てるのもなんなので、ふと思い立ってちょっとデータを抽出してみることにしました。これだけのデータが集まってるものはそうそうないですからね。
 テーマは主に農薬の有無によって食味値への影響はどうあるのか、です。


 条件と説明ですが、

・品種はコシヒカリ限定。


・慣行栽培、特栽(減農薬)、エコ認証、JAS(無農薬)栽培、番外として無肥料栽培の生産に分けてそれぞれの米の食味値を抽出しました。


・・JAS栽培は無農薬と判定しました。JAS栽培と言う言葉は本来ありませんが、農家の間では通りが良いJAS有機栽培のことだと判断しました。さらに言えばJAS有機は必ずしも無農薬ではありませんが、無農薬のところもあり、まあ無農薬に分けました。また慣行などほかのカテゴリにあるものでも特記として無農薬と書いてあれば無農薬として扱いました。
・・特栽は減農薬と判定しました。JAS特別栽培は減農薬と言うか、制度上は有機と減農薬両方を含んでいるのですが、有機はJASで項目が立っているのでこちらを減農薬としました。また、この特栽というのがJAS特栽ではなくただ単に生産者自身が「特別」だと勝手に思ってるものかもしれませんが、これら生産法に関しては自己申告で応募するので特定が不可能なので、エイヤッとこうしました。
・・エコ認証はエコファーマー認定のことだと思います。各県で違いそうですし、基準がどうなのかはよくわからないのですが、まあ項目があったので分離してみました。まわりの環境に配慮した際は米作りにどういう影響があるのでしょうか。
・・無肥料栽培は特記事項にわざわざそう書いてあるものを抜き出しました。また、「自然栽培」と書いてあるものもこちらに入れました。
・・慣行栽培は、簡単に言うと上記以外の全てなのですが、この応募の生産法については自己申告なので、慣行と書いておきながら実際にはJAS特栽(減農薬)に値するような米作りをしている人はザラにいます(例えば、うちがそう)。


・これは「コンクール出品の米」なので、それぞれこだわりの生産者がそれなりに自信のある米で応募しています。なので無農薬だろうが慣行だろうが、普通に言って平均よりかなり良質なサンプルが集まっているはずです。


食味値とは、食味計と言う機械で米の美味しさを数値化したものです。玄米の状態で測られます。これで高得点なら必ず美味しいのかと言えば一概にそうとも言えず、低い点数でも美味しい米もあることはありますが、とはいえこれ以外に美味しさの基準を考えてみたとしても完璧なものなどありえないし、少なくとも条件は全てのサンプルに対等に出来ることが利点です。


 ・・・というように、正直相当アバウトなくくりなのですが、まあためしにということで。


 で、結果を書いてしまうと非常にアッサリなんですが、こうなりました。


○慣行 サンプル数 604
 食味値平均 81.60 標準偏差 4.76


○特栽(減農薬) サンプル数 751
 食味値平均 81.91 標準偏差 4.34


○エコ認証 サンプル数 261
 食味値平均 80.79 標準偏差 3.37


○JAS(無農薬) サンプル数 117
 食味値平均 79.68 標準偏差 6.44


○無肥料 サンプル数 15
 食味値平均 79.07 標準偏差 5.79


 どうでしょうか。慣行と特栽はほぼ互角(特栽のほうがわずかに上)、無農薬は落ちる上にばらつきが激しい。無肥料はもっと低いですが、まあサンプルが少なすぎですかね。もっともサンプル数が少ないのは少ないで、これがいかにニッチな農法かはわかりますが。


 実際にデータを入力しててわかったのは、地域差や生産者・生産グループによる差はけっこうはっきりありました。要するにもともとの環境と、技術の差がかなり大きく影響すると言うことです。今回は群馬県の点数が良かったなぁ。
 
 農薬の影響については個人的にはぜんぜん意外な結果ではなかったんですけど、まったかだか無農薬にしたくらいで美味い米ができるんなら苦労しないんですよ