on cloud nine - SPACEALC
至福の状態で【語源】《1》ダンテの『神聖喜劇』(The Divine Comedy)の中ではthe ninth heavenが神に一番近く、いちばん幸福であるとされた。《2》米国の気象庁で用いられた雲の種類の9区分から。《3》cloud nineとは積乱雲のことで、非常に高くまで上昇することから。



それはいと高き道であり、地の下を覆い尽くす網であった。

それは雲であり、蜘蛛の巣であった。

それは金の糸で結ばれていたが、光で結ばれてもいた。

それは雷を伝え、波を伝えた。

それは衣の様に柔らかくもあり、石の様に硬くもあった。

それは体験であり、満足であった。

それは欲望を掻き立て、遠くのものを引き寄せた。

それは減らすこと無く使い、使う事で増やした。

それは受ける者であり、授ける者であった。

それは出会う事なしに、出会う事が出来た。

それは問いかけであり、答えであった。

それは多くの知恵を集めたが、多くのまやかしも集めた。

それには議論があり、罵声があった。

それは虹であり、惨事であった。

それは日であり、木であった。

それは炎の綱であったが、触れるためのものであった。

それは孤独を慰めもしたが、炎を呼び覚ましもした。

それには互助が有ったが、策略も有った。

それは一枚の紙の様であり、枠の様でも有った。

それは時に板であり、時に社会であった。

それは世界の全てを収める蔵であり、一人一人の家でもあった。

それは強い力を持つ文字であり、時に音を奏で、そして絵を動かした。

それは印であり、鍵であった。

それは創造を実現し、可能性をもたらした。

それは地の裏をも見通し、未来をも告げた。

それは決して読むことが出来ない言葉で書かれていたが、意味を伝えることが出来た。

それを許されたものは読む事が出来たが、許されなかった者は隔てられた。

それは中央を持たなかったが、数限りない端を持っていた。

それは一つでありながら、世界に遍く(あまねく)存在した。

それは一つが全てであり、全てが一つであった。

それは虚像で有り、そして実像であった。

それは実体を持たなかったが、確かに存在した。

それは一人の一生に満たない時間で、全ての人の歴史を飲み込んだ。

それは人々を育み、そして人々を殺した。

それは神が与えしものでは無く、人の作りしものだった。