裁定解消売り | 人間五十年、下天の内を比ぶれば夢幻の如くなり

裁定解消売り

前回「わからない」と開き直ってはみたものの、仮にも投資の世界に身を置く人間として
未来を予測することを決して放棄してはいけない、と。。。

ということで、引き続きまるで当てにならない相場観など。

先週は金曜に休みを取ったり、とマーケットを比較的見る時間があったが、比較的しっかりといった印象。
14日の日経平均-633円安、15日の-1015円安とこの急落の窓を埋める位置で揉み合いとなった。
さすがの激動後でどうなのかわからないが、機関投資家は期末で動くに動けないところもあるかもしれない。
この位置で一旦動きが止まるということは、マーケットが現時点での「取りあえずの適正値」、
という判断をしているのだろう。

先週twitterで個人投資家の方ともやりとりしていたのだが、3/14~の週の大暴落は投資家の投売りが主因では
なかったのではないかと思う。

以下に直近の裁定残(及び信用評価損益率、外国人売買動向)を載せた。
ちなみに裁定残、裁定解消売りとは →http://kabu.user-infomation.com/kabu_225saitei/225saitei_01.htm
(一点補足すれば、今回は相場の先安感で先物のほう現物よりが安くなったのではなく、
 機関投資家のヘッジ売りやロスカットがまず流動性のある先物に一気に入り、現物との乖離が拡大。
 結果それが、SQ前に積み上がってきていた裁定業者の解消売りを誘発したと思われます。)
さらにもう少し補足すると、裁定解消するのに金額上同水準の「先物買い戻し、現物売り」を行う。
理論上マーケットには中立となるはずのそのオペレーションは、インパクトとしてどうしても「現物>先物」となる。
よって、裁定取引は積み上がる過程でも解消される際も、現物の方向にマーケット全体として力が加わる。

     外国人売買動向(差引、万株)   信用評価損益率   裁定残高推移 買残(前週比、億円)
3/18       +8910            -17.08         11978 (-9872
3/11       +184              -10.53          21850 (+113)
3/4        +1636             -7.33           21737 (-2235)
2/25       -1185             -9.51           23972 (-1327)

これはほぼ間違いのない推測だが、あの急落の主因はこの裁定の解消売りだと考えられる。

日経新聞等では「狼狽した外国人投資家や個人投資家の投売り」などという表現も見かけたが、
これは指数押し下げを主導した最も大きな要因ではないと思う。
(少なくとも先導したファクターではないはず。)

確かに地震による経済への打撃、悪影響は発生直後のマーケットの認識よりも遥かに大きかった。
というのも、この大地震から副次的に発生した津波の被害・原発問題は、11日の地震発生(14時40分)から
引けまでの20分では認識されていなかった。
週末を通してこれらが一気に表面化し、津波による被害が当初の想像を遥かに超える程甚大であること、
更には原発による放射能漏洩問題が徐々にリアルでの恐怖を巻き込んで国中、いや世界中に伝播していった。

15日(-1015円安)の日経平均、日経平均先物の安値を見るといかに先物が集中的に売られたかわかる。
           (寄、高値、安値、引値の順)
 日経平均    (9441、9441、8227、8605)
 日経平均先物 (9180、9230、7800、8640)
 安値を見ればわかるが、その差はなんと420円強・・・


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これは忘備録として簡単にこの一週間の動きをメモしたものだが、これでもその乖離の異常さが窺えると思う。
ちなみにわかりやすく日経を例にとってみたが、この日はTOPIX先物でサーキットブレイカーが発動している。
225採用銘柄以外でも強烈な下ヒゲをつけている銘柄が多いのは、これに因る部分も大きいと思われる。

そして、ここから先は推測の域を出ないのだけど、
元々週前半の急落も後半のリバウンドも、取引主体の棲み分けがある程度明確だったんじゃないかと思う。
どういうことかというと、
・指数(INDEX系)→初動:機関、外国人  加速:裁定業者
・超大型株→裁定業者、外国人、年金等
・中小型株→(指数連動型)機関投資家、 個人(信用投げ)
・デリバティブ→初動、中盤:外国人、機関、ディーラー  終盤:+個人(追証絡み)
・新興→ほぼ個人、ディーラー(初期、中盤:追証回避売り、信用買の投げ、強制決済  終盤:一気のリバ取り)
かなり大ざっぱだけど、こんな風にブン投げたもリバも大体同じ住人なのではないか、という気がする。

その後(先週)の動きは、ある程度予想通り、何もかもがリバウンドしたあとに徐々に選別が始まっている。
金曜などコマツやソニーに相当腰の入った資金が入ってきてたし、三菱重工なんかもやたら強い。
このあたりはほぼ間違いなく、先週から強烈に買い越してきている外国人の選択と集中によるものだろう。
外国人の逆張りは最近ではちょっと記憶に無かったので意外だったけど、もしこの水準から更に↑を買ってくる
主体がいるとすれば、それも間違いなく日本人ではない方々だと思う。

一方の先週からの建築系中低位株祭りは、個人やディーラーの遊技場で、やはりこのあたりの動きを見ても
それぞれの棲み分けが明確な気がする。
そして「ソレ以前」にある程度のストーリー仕掛けで上昇していたものは、一通りのリバの後上値の重い展開。。

ここからは、各銘柄の参加投資主体(住人)の判定とそのマインド、余力等を考慮する局面にきていると思う。
個人的には、一撃のタイミングを狙うようなやり方はしばらく通用しないんじゃないかと見ている。
投資家は中長期買いだが短期で上は買いたくない、というスタンスで比較的一致しているような気がする。
ある程度の押し目を丁寧に拾いつつ、スタンス別に柔軟で意志の強い投資スタイルが試されるのではないか。

じっくり考え、あらゆる角度からしっかり見れば、この混乱の中にいくばくかの光明を見出すのは、
決して雲を掴むようなものではないと思うけれど。。。
だって日本がもう終わりだと思っている人間、この国に誰一人いないよね。