欧州債務問題~3グループは何でやられているか? | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

欧州債務問題~3グループは何でやられているか?

4連続コラム、3日目の本日は欧州債務問題、ナゼユーロが大問題なのか?個々の国々をもう少し深く掘って考えてみたいと思います。


先ず欧州連合の経済規模は16200(10億ドル)で米国14000(10億ドル)より大きく、経済圏としては世界最大です。(IMF資料参照) 次にEU圏の中をのぞいてみると欧州連合の経済を100としてその中でそれぞれのメンバー国がどのくらいの比率を占めるかを考えてみると、ドイツが最も大きく、20%を占めています。その次はフランスで16%です。イタリアは3番目で13%です。スペインは4番目で9%です。ギリシャは2%、アイルランドは1.4%に過ぎません。つまり経済の規模から言えばギリシャやアイルランドなど問題にならない規模だということです。ところがアイルランドに対する850億ユーロの救済が発表された同じ日に異変が起きました。それはその日を境としてスペイン、イタリア、ベルギー、フランスなどのソブリン・スプレッドが上昇しはじめたということです。ソブリン・スプレッドというのは国と国の債券、つまり国債同士を比較し、その金利差、つまりスプレッドが拡大しているかどうかを測ることを指します。ソブリンというのは国と言う意味です。


次に財政を考えてみます。どの国も負債が増える傾向にあるけど、ギリシャが一番悪いです。イタリアは歴史的に負債が高いですけど増え方はそれほど多くありません。つまり安定しているわけです。このように変化率に特に注意したいとおもいます。変化率といえば一番急激に純負債が増えているのはアイルランドです。アイルランドは優等生から一転して急激に悪くなっていることがわかると思います。またスペインも優等生だったけど悪化しています。ドイツは一番安定しています。フランスは最近トレンドが悪化しています。さらにスペイン、ポルトガルも悪いです。


次にGDP成長率に注目します。一番ドラマチックに落ち込んでいるのはアイルランドです。ギリシャ、スペインも駄目です。その反面、ドイツは2010年にかけて急角度でGDPがリバウンドしています。これはユーロ安の恩恵をこうむっているからです。2007年までの好景気時代にいちばんGDP成長率が高かった国はアイルランド、ギリシャ、スペインが常に高成長していたことがわかります。それはこれらの国でバブルが起きていたことの証です。実際、不動産ブームがこれらの国では起こりました。逆の言い方をすれば、ブームが大きかった国はその反動としてのファンダメンタルズの悪化も急激だということなのです。イタリアやポルトガルはリーマン・ショックの前は成長率が最低の部類でした。つまり恒常的に低成長という問題を孕んでいるわけです。


経常収支で見ると景気が良かった2007年くらいまではギリシャ、アイルランド、スペインなどの経常収支の悪化が激しかったことがわかります。つまり消費ブームなどがおこっていたわけです。これは共通通貨ユーロを導入し、なおかつ金利がこれらの国の成長やインフレ率に対して低めに設定され過ぎていたことが原因です。一方、ドイツは恒常的に経常黒字を確保している点は重要です。


ギリシャの場合、確かに政府の財政赤字が危機の原因でした。しかしアイルランドやスペインの場合、政府の負債の総額や財政赤字の大きさはずっと健全だと思われてきました。それらの国がいま困難に直面しているのは不動産バブルがはじけて銀行が潰れそうになっているからであり、それを政府が支援したために政府の財政が圧迫を受けたのです。実際、1999年から2008年までの9年間にEUの家計の負債はGDPの50%からGDPの70%へと急増しました。おなじ期間、EUの民間銀行の負債はGDPの250%へと膨らみました。一方で、おなじ期間、EU各国政府の負債のGDP比率は逆に72%から68%へと減少しているのです。つまりEU全体で見れば問題の根源は政府の無責任な財政拡大にあるのではないということです。とりわけアイルランドとスペインではこの期間、政府の負債比率はEU各国の中で最も減少しました。でも不動産バブルが弾けたら不動産取引がらみの税収が蒸発してしまい、それが問題のひとつとなったのです。


整理しなおすとギリシャの問題は政府の財政赤字でした。スペインやアイルランドの場合は不動産バブルでした。しかしイタリアやポルトガルの場合はそもそも経済成長そのものが低いことが最も深刻な問題なのです。このように同じユーロの問題といっても抱えている事情は各国でかなり違うことを認識できると思います。



Ken