元気な新興国ブラジルとインド~インドの利上げは前途多難!? | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

元気な新興国ブラジルとインド~インドの利上げは前途多難!?

4連続コラム、3日目の本日と明日は2日にわたってインド市場を見ていきたいと思います。月曜日と火曜日にブラジルを取り上げましたが、本日と明日取り上げるインドも新興国の中では非常に面白い要素を持つ国と言えるでしょう。


現在の状況下でのインド経済の短期的見通しとして言えることは、中東・北アフリカ情勢が緊迫していることなどから原油価格の上昇が続いていますが、インド経済は構造的に原油高の影響を受けやすいため、原油高が続けば財政赤字や経常赤字の拡大、インフレなどに繋がり、経済成長に悪影響を与えることも考えられます。一方、企業業績やモンスーン期の降雨量もインド経済にとって大きな材料となります。特にモンスーン期の降雨量が良好であれば、豊作により農家所得の増加や食料価格の安定に繋がり、国内消費の拡大やセンチメントの改善に繋がることから、その動向に注目が集まります。中長期的にインドが高い経済成長を続けるとの見方に変更はありません。引き続き国内消費の拡大や、インフラ投資の増加、アウトソーシングなどがインド経済における力強い成長要因になると考えられます。インドの中央銀行であるインド準備銀行は、1月に続いて3月にも政策金利のレポ金利とリバース・レポ金利の0.25%引き上げを決定しました。経済成長が加速している中、根強いインフレが続いていることが利上げトレンド継続の原因と見られており、更にまた、インド政府は日本の大地震や中東・アフリカ地域の騒乱の影響に対する警戒感をものともせず、金融引き締め政策を積極果敢に推進していると見られています。インド準備銀行は、リーマン・ショック後の金融緩和政策を2010年3月に転換して利上げを開始、今回は8回目となります。そして、この結果、インド準備銀行による商業銀行向け貸出金利であるレポ金利は6.75%、インド準備銀行が商業銀行から資金を吸収する際に適用するリバース・レポ金利は5.75%となり、2008年以来の高水準となりました。エコノミストの多くは、2月のインフレ率が食料や原油価格の高騰により8.31%に達したことから、「当局の引き締め姿勢は変わらず、年内にあと2回、早ければ5月にも次の利上げがある。」と見ています。また、他のアジア諸国もインドのこうした動きに基本的には追随する姿勢を示していくものとも見られています。これまでのところ、日本の地震災害はインドを含むアジア諸国の経済成長に大きな影響を及ぼしていないし、今後も大きな影響を与えないと見られており、こうしたことから、インドやアジアでは利上げトレンドは続くと見られているのであります。但し、インド財界は工業生産が伸び悩んでいることに懸念を示し、インド準備銀行が利上げを手控えるようロビー活動を展開しているとの見方も出始めています。
また、財界指導者は、最優遇貸出金利の上昇などによる資本コストの急騰に不満を感じていると伝えられており、これがどのような影響を及ぼすかは要注意です。実際に、インド商工会議所のクマール会長は、「投資環境の見通しが日増しに難しくなっている。」と語っていると伝えられており、更なる利上げを阻止する動きを強める姿勢も示しているようで注目されます。一方、経済成長見通しは、国内総生産(GDP)が2010年度の8.6%から来年度(2011年4月~2012年3月まで)は9.25%へ加速する予想となっています。シン首相は、上述したような利上げ政策の示唆がなされている一方でまた、「インフレ抑制に動かなければならないとしても、そうしたインフレ対策は政府が目標とする二桁台の成長を危険にさらすことになる。」との警告とも思われる言葉を発しており、財界の意向に合わせた経済成長を優先する姿勢を示唆しています。しかしまた、政府部内には、「インフレは貧困層を直撃する意味で、成長よりも優先すべき政策である。」とする主張も根強く、その予測と今後の経済政策に関しては様々な見方や意見が出ている点を考えると、先の読みにくい展開となっています。いずれにしも、今回の利上げで、インドは20カ国・地域(G20)の中で金融引き締め政策を最も積極的に推進する国となったと見られている中、「インド国内では、成長か引き締めかの論議が活発に行われており、政策当局がインフレ抑制で一致しているわけではない。」と見ておくべきであり、引き続き、インド政府の金融政策の舵取りに注目していきたいと思います。


以前のコラムでもお伝えいたしましたが、日本の震災で世界経済は回復ペースを鈍化させる可能性に触れましたが、だからと言って世界経済の成長ペースが止まり、逆に縮小するリスクについては私は考えておりません。それと言うのも日本経済の一時的足踏みは生じても世界経済という視点でみれば、米国経済の回復ペースが徐々にですが足腰をしっかりさせつつある点、また欧州は停滞モードから脱却できなくとも、中国を筆頭に依然として利上げスタンスを示し国内経済の過熱モードの適度な冷却化を図る必要性に迫られるほど元気な国もある点です。これらの国々が世界経済の成長を押し上げ、マクロ面でのインフレ圧力になる事を考えると、インドの利上げ姿勢は中国やブラジルと比べると、むしろ後手後手に回っている感さえ否めないと思います。



Ken