セロクエルと双極性うつ状態 | kyupinの日記 気が向けば更新

セロクエルと双極性うつ状態

過去ログでは、アステラスはセロクエルの双極性障害のうつ状態への適応追加を諦めたのではないかと書いているが、今後、適応取得を目指すらしい。

薬価改定の際に、「新薬創出加算」という薬価の適応取得を促進される制度があり、つまりバーター取引のようになっている。

言い換えると、

薬価をあまり下げないかわりに、「適応外処方を減らすように治験をして新しい適応を取りなさい」ということであろう。

製薬会社は、その結果、適応外処方が減り、処方量が増え、利益が上がるメリットもある。

この治験が順調にいけば、日本の抗精神病薬では史上初の「双極性障害のうつ状態」に対する適応取得となる。

実は、大塚製薬のエビリファイも同じ適応を取る治験を開始しており、成功すれば取得できるであろう。

前回のエントリではジプレキサは双極性障害の躁状態に適応を取得したとアップしているが、うつ状態には適応はない。実はリーマスもうつ状態には適応が認められていない。

順調にいくなら、2年後か3年後にセロクエルは双極性障害のうつ状態に普通に使えるようになるかもしれない。

実は、今も適応外処方として広く処方されているので、何も変わらないが、このようなことが進んでいかないと、精神医療が良くならない。

セロクエルは双極性障害でなかなかうつから浮上しないタイプの人に有効なことはよく経験するし、そのようなエントリは過去ログにもある。

普通、セロクエルはうつ状態には150~300mg程度の量が目安であるが、たまに600mgくらい使えば様変わりして良い人がいるので驚愕する。セロクエルのうつ状態への作用はリフレックスのテーマにある記事を読むと機序が理解できると思う。

セロクエルの双極性障害への処方のポイントは、何度か扉を叩くことである。

セロクエルに限らず、向精神薬の効果は相対的なものであり、病初期の動きが大きいときは不適切に見えても、時間が経ち病状の趨勢が変化すると、非常に有効な薬に変貌していることはしばしば経験する。

このようなタイプの薬は、例えばルーラン、エビリファイなどの抗精神病薬だけでなく、ラミクタールやトピナなどの新規抗てんかん薬も同様である。

その点で、セロクエルの治験が順調にいくかはやや不安がある。

実力が見えないこともありえるからである。

参考
ジプレキサ、躁状態の効能・効果追加
out of controlですよ
精神科医と薬、エイジング
リフレックスはドパミンを増やすのか?