「鼻血デマ?」に関連して「ヨウ素I131内服による甲状腺癌治療との比較」という話題が
散見されます。議論が少し抽象的ですので定量的なパラメータを用いて整理してみます。

原発事故における放射能被害の評価において医療被曝は比較にも根拠にもなら
ないという事の典型例だと思いますので(今更必要ではないかも知れませんが)
私が理解するところを記載しておきたいと思います


①甲状腺癌の転移巣を狙って高線量のI131を内服する治療があります。
 ヨウ素131を癌に集積させβ線による内部被曝を利用します。
 http://chtgkato3.med.hokudai.ac.jp/kougi/kakuigaku/nuclear14.ppt
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ

②甲状腺癌組織にはI131が集積し半減期7.3日程度滞留するので癌を治療できます。
 尚かつ甲状腺以外の臓器には集積も滞留も少なく(半減期8時間ほど)、
 3日もすれば(生活上の注意は色々とありますが)退院できるそうです。
 http://oncology.jsnm.org/
 http://www.fujita-hu.ac.jp/~ssuzuki/bougo/notification/yakumuhatu70.html
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③もちろん全身被曝もそれなりにします。体重や集積度で内服量は調整する様ですが
 概ね「全身被曝で300mSv程度」「癌患部で100Sv程度」を目指す感じです。
 癌治療では常にそうですが「リスクvs利益」の最適化を図ります。
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 主な副作用は(ヨウ素が集積してしまう)唾液腺炎や比較的被曝の多い「胃」などに
 見られるようです。他臓器の平均で300mSv程度の被曝となりますが、放射線治療では
 出血等の急性障害を起こさない様に「制御」するのは普通の事だと思います。

④前の記事では放射性ダスト濃度が高かった地域での「1つの悪いケース」を想定してみました。
 大気中のダスト濃度や分布、体内(特に肺や鼻腔などの局所?)での集積度を制御どころか
 「把握」すら出来ないのが特に辛いところです。
 http://ameblo.jp/study2007/entry-10925145430.html

 医療被曝と原発事故のリスク評価で決定的に異なる要因として
 ・放射線源の分布が定量も制御もできないこと、
 ・体内への取り込みと局所性が把握しきれないこと、

 の2点は少なくとも考慮すべきだろうと考えます。
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