私に詩を教えてくれたのは
粉屋の一匹の老いぼれ犬だ。
尾を振って泥棒にでも首をすり寄せてくる
やくざな老いぼれ犬だった ピンキーは。
ワラ屑をあめ玉のようにしゃぶりながら
私は彼を呼んだ
のろのろと尾を振ってピンキーは
あめ玉をもらおうと近づいた
すばやくピンキーの口にワラ屑を入れてやった
モグモグとワラ屑を噛み 噛みながら
彼は あの老いぼれ犬のピンキーは
ふしぎそうに 私を見上げた
そして あゝ神よ 彼は恥ずかしそうにまばたきした
老いぼれ犬の あのはにかみをたたえたまばたきを
私は十歳だった
粉屋の物置の裏で
涙が出た。
天野 忠