リハの3日目の事を読んだある人が、

ツイッターで、「テンションが上がっていくのが分かる。」

と、書いてくださったが、その通りなんだなあ。

リハの3日目あたりから、急に緊張感が出て来て・・・。

ま、これはワンマンなんて久しぶりの僕だけかも知れず、

他のメンバーは分かんないんだけどね。


19日は、休みだったものの

「明日は現地かあ・・・・。」ソワソワドキドキ。

呆れるほどの晴天に、やや癒されたくらいで・・・。


20日は、羽田にお昼前に集合。

飛行機に乗ったのも10年前のサニーデイのツアー以来なので、

第2ターミナルって、何?状態。

京急で早めに行ったら、高橋女史と出くわした。

女史は女史で、このメンバーのツアーを仕切るのは初めてで、

「誰それは遅刻魔」とか分からなくて不安そうだった。


昔のツアーで、誰かがそうだった記憶は無かったので、

「ダイジョブだと思いますよ。」と伝え、

一緒に軽い朝食を摂った。

程なく下山君が来て、花田君が来て、朝本夫妻が来た。

穴井さんは、「急に飛行機が怖くなった。」とかで、

新幹線で、すでに九州に向かっている。


はず。


搭乗手続きを終えると、全員バラバラー。

僕と下山君は、喫煙所に行き。

喫煙者への昨今のこの扱いを呪い倒した。


荷物検査では僕は何なく通過。

某S氏は、ヘアスプレーを荷物の奥から出さされ、

「非常にロックな表情」をしていた。


雑誌を買い、また喫煙所でずーっとだべって、搭乗。


最近の飛行機は、ずいぶんカジュアルなのね。

ステュワーデスさんとか居ないのね。

ポロシャツ着たパツキンの男の子が、例の救命胴衣の説明。

ほんで、最近は飲み物も買うのね。ちょい安で。

あー、知らなんだ、知らなんだ。

飛行機自体もずいぶん手頃な大きさである。


飛行機が滑走路に向かう途中に走るのは、

あれは噴射で動いているのか、他の動力なのか?

は、長年の疑問なのだが、下山君は「噴射だ。」とキッパリ。


飛行中、まだ雪を被った富士山がきれいだったが、

某S氏は、そういう場合、あまり気を使ってくれない人なので、

窓をがーっつり覗き込んだ某S氏の頭の隙間から、なんとか見ていた。


1時間半で福岡空港。着陸は、やや乱暴にドーン!

強力な前へのGも感じた。「ややヘタね。」と、話しあった。

明太子の看板が懐かしかった。


僕らは荷物は預けていなかったので、とっとと出口へ。

今回の仕掛け人のサンパレスホールの石井さんと、

「人の皮を被った猿」スマイリー原島が、すでに待っていた。

石井さんとは機材の件で、電話でやりとりしていたが、

いつも最終的には、穴井さんの話になっていた。


「人っぽい猿の皮を被った猿」の原島は、いつも旅情緒を台無しにしてくれる。

こいつが居ると、何だか下北沢にいるような気がしてしまうのだ。

つい先だっても下北沢で会ったばかりである。

この「猿っぽい人の皮を被った猿」は、パネル展示会で、

「ROOSTERZとは何か?」についての講演を行うらしい。

体調を崩したように聞いていて、全然心配していなかったが、

案の定元気だった。


全員そろったところで、サンパレス差し回しのバスで出発。

即座に「猿っぽい人かと思ったらホントに猿」の原島が「うどん食おうか。」

んで、「資(すけ)さんうどん」というチェーン店らしきうどん屋へ。

「類人猿?というか猿」の原島いわく「も、何でも有るったい。」

確かにチラシ寿司からオニギリから何でもある。安い!

お持ち帰り用に、九州やっちゅうのに「讃岐うどん」まであった。


地元の花田君にならって「ゴボ天うどん」を注文。

出て来てみたら、ゴボウの天ぷらの入ったうどんだった。

出汁は讃岐や大阪に近くて美味しかった。安い・・・。


ましかし、何だかノンビリしとるのう。九州も良いなあ。


ま、そんな事もありつつ、バスは、サンパレスへ。

見ればでかいホテルとホールである。

下山君に「ミスタービッグもここでやった。」と、聞かされた。

「え?じゃ、ミスタービッグと同じステージに立てるの?ま、俺は、座ってるけど。」

「へー!すごーい!!別に嬉しくないけどー!!」


ま、そんなにファンでもないんで・・・。


ホールの楽屋に入ると穴井さんが居た。

「おー、何かねえ、飛行機ねえ、怖いんよ。」


ステージを観に行くと、なんとセットは同期関係を含めて、

ほぼパーペキにセッティングしてあった。


さてチューニング。

キックにはミュートが一枚入っていたが、もう一枚追加して、

さらにウェートも入れた。こういう場合はアタック優先。

打面は、バコバコ蹴りながらネジがやっと効くくらいに緩める。

表面は、張り具合でアタック優先かローエンドを出すかを変えられる。


スネアは予定通り、DとF#で、ややきつめのリングミュート。

三点で叩いてみても、良さげだった。

閉じた時、よりタイトになるように、ハットの上のシンバルをややきつめに締めた。


タムの配列はどうしようかと一瞬考えて、

3度差にして、鳴りで揃えようと決めた。

全体にボトムは、やや張りめで、

13タムで、「ローピッチの範疇だがやや高め。」を作り、

打面とボトムのピッチ差を取って、

ハイタムとフロアも同様に張った。

ピッチ差が大きいと、倍音が増えすぎてこういう場合、

低域がハウリングを起こしたり、フロアが長すぎたりする。


まあ、しばらく叩いて鳴り出したところで調子を見よう。


ワラワラーっとみんなも出て来て、音出し始めて、

この辺でなんとなーくPAのチェックも始まったのかな?

ワンマンという事で、時間はたっぷりあり、

何となく音出したり、PAの横瀬さんの意見を聞いたり。

ドラムという楽器は、多分死ぬまで自分の外音は聴けない人種で、

基本的に、PAさんの言う事には逆らわない。

というか、信頼するしかない。


ま、ドラムだけの音は良くても全体に混じってみないと分からないので、

ドラムだけのチェックは、いずれにしてもそこそこ。


同期関係も問題なし。

マサキ君サンキュー!


部屋に一度入ってからリハだったのかどうかは忘れた。

そうだったような気がする。


まあ、そんなこんなで全員の音が立ち上がり、

モニター作りで、適当に演奏する。


今回、モニターは絶ーーー対に、全員聞こえる事を目指していた。

でないと楽しくない。本来それでなくては演奏など成り立たない。

ドラムにばかりタイムキープを求めるが、

タイムは、本来、全員の関係性から出てくるものだ。


才能的な意味でいうタイム感なら、僕より下山君の方が断然良い。

穴井も弾き出せば鉄壁のボトム。

東京でのリハは、全員聞こえたので、

スタートテンポに気を使ったくらいで、あとは乗ってりゃ良かった。

乗って、拍とビートさえ提示していれば、このメンバーなら行ける。


そしてボーカル。


ドラムのタイムの問題は、ほとんどのドラマーが思っているように起きる訳ではない。

それは、ドラマーが考えがちな、クリック的な意味でのタイムの問題ではなく、

特にボーカルとの関係性の問題なのだ。

観客やスタッフは、ドラムが特にボーカルを無視して、先に行く事を

無意識のうちに「ドラムがハシった。」と、感じる。

そしてドラマーに文句を言う。


するとそれを上記のように捕らえたドラマーは、

クリック的なキープにしがみつきたくなる。

演奏は、えんえん微妙にバランバラン。

挙句の果てに「俺、ちゃんとやったよ。」と、ぬかす。

しかし、これは解決にはならない。

ドラマーも周囲もそれが分からないので、事態は紛糾。


実際にはハシったとしても、特にボーカルとの

一体感があれば、ほとんど問題になる事はないのである。


もうひとつ、モニターには他の楽器も大きく出ているのだが、

全体感がいまひとつ。

この場合、多くの場合問題なのは、スネアの高域の倍音によるフェードである。

ヌケの良過ぎる音がひとつ混じる事で、他の音が全体に聞こえにくくなってしまう。

この場合のドラマーの置かれている音場のイメージは、

「うるさいんだけど、ハッキリ聞こえない。」である。


これも結果的には良いアンサンブルは生み出さない。

海外のスネアの音が、実はあまり「キンキン、ホワンホワン」言っていない理由は、

多分、ここにある。


ま、長々すんませんねえ。

ま、失敗も成功も、全部アタシ経験した事なんですのよ。オホホ・・・。


ま、そんなこんなで、今回も僕自身のスネアはこういう高域の倍音は切ってある。

モニターもでかくなくて良いから、バランス良いと良いなあ。と。


リハが始まった当初、モニターはなんとなく全体的にバランスは良かった。

が、「ほんのちょっと全体に上げて。」と、ジェスチャーで伝えたら、

物凄くでかくなってしまい、グチャグチャになってしまった。

その後も

「下手、ギター上げて・・・。」

「下げて・・・。」

「赤上げて・・・。」

「白上げて・・・。」

「赤上げないで、白下げない・・・。」


などとやっていたのだが、

そのたびにガーンと上がり、下がり、収集がつかなくなった。


ま、この辺、モニターさんを責めている訳ではないのよ。

ま、昨今「なんか、ガーっと下さい!」っていうバンドに慣れてもいるだろし。

でも、こちとら耳も死にかけのジジイでもあるし、

実際、鼓膜もガサガサ言い出した。

卓を見ると、若い人がモニター卓に居る。


まあ最後の手段で、むくれる事にした。

完全に切れたベテランドラマーになってみた。

バーンと立って「ちょっとって言うと、すんごい上がるんだけど!」

と、怒鳴った。ま、実際ちょっと切れてたんだけどね。


幸い、上の人(?)が飛んで来てくれて、事情を聞いてくれた。

その後、事情は良くなり、慎重にやってもらえるようになり、

最終的には、良い感じになった。


傷付いた人がいたらごめんね。

でも、僕にとっても最後かもしれないこのメンバーでの演奏で、

奥まったところに居るドラマーにとってモニターは「命綱」なのである。

ああせざるを、得なかった。


ましかし、こんな事までして明日、俺ボロボロだったら、ただのやな奴だよなあ・・・。

でも、今回「頑張ったから良いや!」は、ナシにしていた。結果が欲しい。

良い演奏という結果が。

でも、それはどこまで行っても、明日本番が始まって終わるまで分からない。

それが、ムクムクと頭をもたげた緊張感の正体だった。


通しリハの前半は、何だかこんな感じで僕はジタバタしていた。

むくれた後、僕の後ろにずっといるマサキ君が、

僕が振り返るたびに、「え?何ですか!?」とすっ飛んでくるようになった。

しかし実は、その後ただのアホに戻っていただけで、

きついオカズを入れると穴井が「お?」という顔をしつつ、何気に乗る。

ま、リラックスしたいのもあって、イチかバチかのオカズをしばしば叩いた。

んで、決まると、褒めてほしいじゃないですかあ。

ま、花田さんは褒めてくれないので、仕方なくマサキ君を見る。

というだけの話。その後彼も一緒に大笑いしていた。

「高校生かー!」みたいな。


ロックンロールスターの長い間奏で、急にソロが穴井に振られた。

おー、なかなかカッコイイ。

さすがは「キング・オブ・ダウンピッキング」!(指でも弾くけど・・・)

しかし下山君と僕は一緒に足元にずっと注目していた。


踏むぞ・・・踏むぞ・・・絶対踏む・・・・あ、見てる見てる・・・。


踏んだー!!フェイズ100!!


ウィーヨン!ウィーヨン!ウィーヨン!ウィーヨン!


おー、カッコイイような気もするぞー!!


新幹線の中でずーーーっと、タイミング考えてたろう!!


もーーーーーー、大笑い!!

タイコ叩きながら大笑い。


ま、ほんと裏切らない人でね・・・。


ま、この人がライドシンバル越しにこっちを見ていると、

何だかそれだけで、楽しくなっちゃう。

穴井って、ホント穴井なんだよなあ。何なんだろ。ホント。

唯一無二・・・。


は・・・花田さんは、どう思ってたんでしょね・・・。


パッセンジャーで、ちょっとどこやっているのか

分からなくなった瞬間があって、

リハ終了後、花田君が珍しく穴井と「ニキやん、パッセンジャーやけど。」

といって、おさらいをしていた。

でもね、それ間違えたの実は僕で・・・。

おさらい後、穴井がこっちに来て「三原三原、パッセンジャーやけど・・・。」

と来て、僕とおさらい。「すまんすまん、あれ俺、俺!」

お前ら、ほんとになんかあったらすぐ「穴井!穴井!」って、いけませんよ!


でも穴井さん、やっぱしリハ終わってもアンプいじってたけどね。

なんか、その後アンプのヘッド入れ替えてたけどね。

「なんか、太いんよ。」と良いつつ・・・。


懸案の「ストレンジャー・イン・タウン」は、この日も上手く行かず・・・。

僕がちゃんと頭から「チキチキ・・・・」って入れば良いんだけど、

どうもクセで前の小節の4拍目のチー、とかから入ってしまう。

「今、4拍目で入りましたよねえ。」珍しく朝本君、マジだったなあ・・・。

そりゃ、マジになるか・・・。

ま、これで多分「朝本が怖いから頭から」という風に覚えられる。


下山君は、うるさくなかったなあ。何があっても、

むしろ何かあるほど、ニコニコしていた。楽しそーに。


リハの後は、ラジオがあるように聞いていた。

コメント録りかなんかだろ。と思ったら、生出演だという。

あわてて何台かの車に分乗して繁華街(天神?)方面へ。

天神(?)近辺も懐かしかったなあ。

相変わらず屋台が一杯出て・・・。


この辺ねえ、九州人脈にうとい僕は、誰が誰やらよう分からんのよ。

ジョッキーの方は、こちらでは有名な人らしく、

70ン才とか。ずっとロック関係の番組をやっている方らしい。

ま、失礼があったらごめんなさい。

ラジオ出演は、ま、全員で万遍なく少しづつ話し、

最後に「人面猿」スマイリー原島が、やはり乱入して、

花田君がせっかく作った、

ヘビーな、ロックーな、ブルージーな雰囲気を完全にぶち壊して終わった。

「なんよっと?ひゃっひゃっひゃー!げな!」


帰りの車の中では、穴井のいう「俺たち」は「誰たち」か?

穴井の言う「俺たちの時代」は「誰たちのいつ」か?

という大論争が持ち上がり、僕は下山君の肩を持つしかなかった。

確かに、聞き流していたが、よく考えると全然分からん。

分からな過ぎて面白かった。

分からない事が、よーく分かった。


いったんホテルに戻り、

疲れと緊張と笑いすぎでしばしグッタリした後、

この日は、普通の居酒屋で軽く「打ち上げのリハーサル」。

軽ーく飲んで、念のために睡眠導入剤も飲んで寝ようと思っていた。

寝ないと持たない。

朝まで飲んだらアホである。


PAの横瀬さんは、去年のロフトもやっていただいているはずだが、

ちゃんと話するのは初めて、石井さんは初対面、その他上記のように

こちらの人脈にうとい僕には、ライブ前に飲んで話せて和めて助かった。

「猿面猿」スマイリー原島もいた。


リハ中、横瀬さんはライド用のマイクを一本追加しにステージに来たのだが、

確かに僕のライドは、ピン先の音はきれいなのだが、実はドンシャリ気味で、

最近のロック用のライドのようには歪んだギターに囲まれるとヌケない。

それは分かっていたので、横瀬さんがそうしてくれた時、

「あ、ちゃんと考えてくれてる。」というのが、分かった。

「あ、任せよ。」と。横瀬さんの提案でミュートも少し減らした。


ま、そんな話も出来たし、モニターの方も居て、

非礼は詫びた上で、「最後はバッチリでした。」と伝える事も出来た。

九州の音楽関係者は、ホントに地元のバンドや、

そのつながりが、純粋に大好き。

今日は70代、その後60代の人にも何人か紹介されたが、

何だか、そのまんま今でも好き。

という感じなのである。

この辺は、花田君や穴井もそうなんだろうなあ。

トシも関係あるにはあるけど、あんまし関係ない。


好きだから、好き。やりたいからやる。

それをしっかりと生活に結び付けようとも、ちゃんと考えている。

「それで食べていく。」という事も真剣に考えていて、

探究心も極めて旺盛。感心しながら話していた。

ヘタな東京の人より、よっぽど正しく大人。

身の丈で構わないが、やりたい事で食いたい。

これは、やっぱ正しいわな。

東京は、一時お金が簡単に動き過ぎた。


ま、本番の前日にこんな事考えた訳ではないが・・・。


穴井さんは、飲めないのだが、

酒席にいると、いつもだんだん酔ったようになって行く。


経済的だなあ・・・。