疫病(感染症・伝染病)を防ぐ。その4 | 東日本大震災支援・応援BLOG

疫病(感染症・伝染病)を防ぐ。その4

その3では「災害避難所における感染制御」についてまとめました。
引き続き、被災地の方・避難所生活の方々を守るために、
私たち国民ひとりひとりが疫病についてどのようなものか考えてゆきましょう。

※この記事では、難しい箇所を平易な表現に換えたり、
  医学的で分かり辛い部分を省略している箇所があります。
  個人で収集したデータをまとめたため、内容に間違いのある可能性があります。
  間違いを見つけられた場合にはメッセージよりご連絡ください。早急に訂正致します。
Shining Nippon again
その4では「疫病の歴史」について簡単にまとめ、
最後に「感染予防のための8か条」と「報告するべき症状」を掲載します。
表は簡単にまとめたものですので、各病気の詳細な歴史を表わしたものではありません。


黒死病 -ペスト-
「黒死病」は、中国の雲南省地方に進行したモンゴル軍が、ペスト菌を媒介するノミと感染した
ネズミを中世ヨーロッパにもたらしたことにより大流行したものといわれる。
1348年をピークに流行したペストにより、ヨーロッパの人口の3分の1(~3分の2)が死亡したとも
いわれる。このため農業労働人口の減少と、それに伴う賃金の高騰がおき、領主の地位が脅かされた。これに対して、領主は賦役の強化や賃金統制などの農民への抑制を行なったため、各地で大規模な農民反乱が勃発した。
【主要都市の死者数】
 フィレンツェ  6万人
 パリ      5万人
 ヴェネツィア 10万人
 アビニョン   6万人
 マルセイユ  7万人
 ロンドン    10万人

黒死病(ペスト)



麻疹
一般的に“はしか”といわれ麻疹ウイルスによって感染する。
日本でも古くから知られ、江戸時代には疱瘡(天然痘)・麻疹(はしか)・水疱瘡(水痘)の
「御役三病」の一つとして恐れられた。
流行には季節性があり、初春から初夏にかけて患者発生が多い。

麻疹



天然痘
非常に強い感染力を持ち、全身に膿疱が生じ、治癒しても瘢痕(はんこん-あばた-)を残す
ことから、世界中で不治・悪魔の病気と恐れられてきた代表的な感染症。
恐るべき感染力、死亡率のため、国や民族が滅ぶ遠因となったこともある。
天然痘ウイルスの感染力は非常に強く、患者のかさぶたでも1年以上も感染させる力を持続する。

天然痘



コレラ
コレラ菌による感染症で、その感染力は非常に強く、これまでに7回の世界的流行(コレラ・パンデミック)が発生、2006年にも第7期流行が継続している。

コレラ



チフス
発疹チフスはコロモジラミが媒介するリッチケアによる感染症。
人口密集地域、不衛生な地域にみられ、冬期・寒冷地での流行が見られる。
第一次世界大戦のロシアでは3000万人が罹患、10%が死亡した。
第二次世界大戦のナチス・ドイツのユダヤ人強制収容所(アウシュヴィッツ等)でも大流行した。

腸チフスは、サルモネラ菌の一種であるチフス菌によって引き起こされる。感染源は、汚染された飲み水や食物。衛生環境の悪い地域や発展途上局で発生して流行を起こす伝染病。

 発疹チフス
発疹チフス



梅毒
梅毒トレポネーマによって発生する感染症、性病。
元来はハイチの風土病だったのではないかと考えられ、コロンブス一行がヨーロッパに
持ち帰ったとされる。

梅毒



結核
日本列島における結核はアジア大陸から渡来した人々によってもたらされたものと
考えられている。かつて日本では「国民病」と言われるほど猛威をふるった。
今日では結核の危険性に対する日本国民の関心が低下しており、「結核は過去の病気ではない」というスローガンで注意喚起されている。

結核



スペイン風邪 -インフルエンザ-
スペイン風邪は鳥インフルエンザの一種と考えられる。
スペイン風邪の由来は、第一次世界大戦でスペインが中立国り、主要な情報源がスペイン発
であっためこう呼ばれる。

スペイン風邪



アジア風邪 -インフルエンザ-
1956年に中国南西部で発生し、翌年から世界的に流行したインフルエンザ。
世界では約100万人以上が死亡。
日本では1957年から始まり、およそ300万人が罹患、5千700人が死亡。

表なし。



香港風邪 -インフルエンザ-
香港風邪では、1968年から1969年にかけて少なくとも約50万人が死亡したとされる。
アメリカでも500万人の罹患者、3万3千人が死亡した。

香港風邪



ポリオ
ポリオウイルスによって発症する感染症のこと。
1970年代の日本では、クロゴキブリが媒介生物として人口に膾炙し人々を震撼させた。
季節的には夏から秋にかけて多く発生する。
日本では、1980年に自然感染によるポリオが根絶された。海外ではまだ流行している地域がある。

表なし。



エイズ
1981年6月にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性に初めて発見され、
       これがエイズと正式に認定できる初めての例となる。
1982年7月この病気はAIDS(後天性免疫不全症候群)と名づけられる。
1984年にはエイズウイルスが発見される。

1981年の症例以後10年程で感染者は世界中で100万人までに広がった。

日本では、1985年に始めてAIDS患者が確認された。
当初は大半が血友病患者に対する「血液凝固因子製剤(非加熱製剤)」使用によるもので、
HIV感染者およびエイズ患者を生み出す「薬害エイズ事件」を引き起こした。

アメリカをはじめ、世界各地で患者・感染者が増加している。

表なし。



マラリア
過去には、日本やヨーロッパなどでもマラリアが流行したと考えられている。
現代では、熱帯・亜熱帯地域の70か国以上でマラリアの発生・流行がみられる。
全世界で年間3~5億人、累計で約8億人が罹患、100~150万人の死亡が報告されている。

地球温暖化の影響でハマダラカが越冬できる地域が広がったことにより、
感染地域が広がる危険性も指摘されている。

表なし。



日本脳炎
日本や東アジア、東南アジアが発症分布域。
1954年に日本では不活性化ワクチンの勧奨接種が開始され、1965年には高度精製ワクチン
の使用が始まった。日本での患者は1967年から1976年にかけての積極的ワクチンの接種に
よって、劇的に減少したといわれている。

日本脳炎



SARS
21世紀に見つかったSARSウイルスによる感染症を重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ぶ。
2003年4月3日、日本政府はSARSを新感染症として取り扱うことを発表。
4月17日には原因が判明したため指定感染症へ切り替える方針を発表した。

SARS




以上、世界的に流行した疫病(感染症・伝染病)である
黒死病(ペスト)、麻疹、天然痘、コレラ、チフス、梅毒、結核、インフルエンザ(スペイン風邪、
アジア風邪、香港風邪)、ポリオ、マラリア、ポリオ、エイズ、日本脳炎、SARS 〔順不同〕
の歴史的流れをそれぞれに簡略化してまとめてみました。

現代では既に根絶されたものや、ワクチン接種により罹患率が激減しているものもあります。
しかし、インフルエンザのような毎年流行するもの、最近になってまた流行の兆しのある結核、
世界中で感染者が増加しているエイズ、SARSのように21世紀に入ってから世界的に猛威を
ふるった新興感染症など、これまでの感染症(再興感染症)も含めて、感染症それ自体を撲滅
させることは難しいとされています。

WHO(世界保険機関)ではパンデミック(世界流行)による被害を軽減させるため、
医療体制、ワクチン、公衆衛生対応、個人防御
を組み合わせて実施することの必要性を呼びかけています。


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以下は「感染予防のための8か条」「報告するべき症状」を掲載しています。
被災地の方々、避難所生活をされている皆さま、ご参考ください。


東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学分野、臨床微生物解析治療学、
感染症診療地域連携講座、東北感染制御ネットワーク からのお知らせです。
【感染予防のための8か条】
~可能な限り守っていただきたいこと~
 (1)食事は可能な限り過熱したものを摂るようにしましょう
 (2)安心して飲める水だけを飲用とし、きれいなコップで飲みましょう
 (3)ごはんの前、トイレの後には手を洗いましょう
   (水やアルコール手指消毒薬で洗ってください)
 (4)オムツは所定の場所に捨てて、よく手を洗いましょう
~症状があるときは~
 (5)咳が出るときには、周りに飛ばさないように口を手で覆いましょう
   (マスクがある場合はマスクをつけてください)
 (6)熱っぽい、のどが痛い、咳、けが、嘔吐、下痢などがあるとき、
   特に周りに同じような症状が増えているときには、医師や看護師、
   代表の方に相談してください
 (7)熱や咳が出ている人、介護する人はなるべくマスクをしてください
 (8)次の症状がある場合には、早めに医療機関での治療が必要かもしれません。
   医師や看護師、代表の方に相談してください。
   ◇咳がひどいとき、黄色い痰が多くなっている場合
   ◇息苦しい場合、呼吸が荒い場合
   ◇ぐったりしている、顔色が悪い場合
 ※特に子供やお年寄りでは症状が現れにくいことがありますので、
   周りの人から見て何かいつもと様子が違う場合には連絡してください。





「新型インフルエンザ等の院内感染制御に関する研究」研究班 からのお知らせです。
【次の症状がある場合はすぐにスタッフにお知らせください】
(1)熱(38度以上)がある、または熱っぽい
(2)上気道炎症状(咳、鼻汁、咽頭痛など)がある
(3)インフルエンザ様症状(全身がだるい、寒気、頭痛、関節痛、筋肉痛など)がある
(4)咳があり、血が混ざった痰が出る
(5)からだにぶつぶつ(発疹)が出ている
(6)からだにぶつぶつ(発疹)が出ていて、かゆみや痛みがある
(7)くちびるや口の周りにぶつぶつ(発疹)が出ていて、痛みがある
(8)首がかたい感じがしたり、痛かったりする
(9)下痢便(水のような便、柔らかい便、形のない便、噴出すような便など)が出た
(10)吐いた、または吐き気がする
(11)お腹が痛く、便に血が混ざっている
(12)目が赤く、目やにが出ている
(13)創(きず)などがあり、膿が出たり、赤かったり、腫れていたり、痛かったりする




被災地で疫病が蔓延することのないように、自治体による対応はもちろんのこと、
個人防御も忘れることなく、皆さまひとりひとりによる予防対策もしっかりとしてくださいね。


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〈参考資料〉
独立行政法人 国立国際医療研究センター
メモ感染予防のための8か条 vol. 1.0(PDF)
社団法人 日本医師会
URL感染症危機管理対策室
国立感染症研究所 感染症情報センター
URL東北地方太平洋沖地震関連
メモ第2回「天然痘の根絶-人類初の勝利」-ラムセス5世からアリ・マオ・ラーマンまで(PDF)
メモ第4回「ペスト」―中世ヨーロッパを揺るがせた大災禍(PDF)
『疫病と世界史 上』ウィリアム・H.マクニール著/中公文庫
『英病と世界史 下』ウィリアム・H.マクニール著/中公文庫
『ニュービジュアル版 新詳 世界史図説』浜島書店

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これにて『疫病(感染症・伝染病)を防ぐ。』シリーズは終了とします。
また何か書くべきことが出てきた時には“その5”に続くかもしれません。
これらの記事で疫病に対しての見識が少しでも深まれば幸いです。
ありがとうございました。

タケマツ




5月31日は世界禁禁煙煙デー
2011年世界禁煙デーのテーマは「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」
メモたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO FCTC)(PDF)