昨日、福島県南相馬市に行ってきた。
先日、20km圏内の警戒区域における家畜、ペットの取扱いについて、枝野官房長官に申し入れを行ったが、そのことを受け、救える命は少しでも救いたいとの思いから、許可を得て、同僚議員と一緒に警戒区域内に入った。
現地では、福島県選出の石原洋三郎衆議院議員と、福島県の担当として、国との連絡・調整に奔走している高邑勉衆議院議員(山口県選出)が、必要な情報収集やアレンジをしてくれたおかげで、円滑に現地を回ることができた。また、奈良県から来ていただいた獣医師の今本先生にも大変お世話になった。皆さんに、感謝したい。
まず、最初に、南相馬市の原町にある馬事公苑に行き、警戒区域内にいる馬を域外へ移動させる作業に立ち会った。4月22日の警戒区域の指定によって、福島原発から20km圏内に馬28頭が取り残されていたが、国との調整の結果、ようやく、区域外に移動させることができた。
南相馬市では、毎年7月、「野馬追」という伝統行事があり、市民の馬に対する思いには特別なものがある。そこで、市の熱心な要請を受け、国の重要無形民俗文化財にも指定されている伝統行事の継続に必要という理由で、特例による移動が認められた。
もちろん区域外への移動に際しては、全頭対象にスクリーニングを行うなど、安全性には万全の配慮が行われている。ちなみに、スクリーニングの結果は、全ての馬で被ばくは確認されなかった。
厩舎に運び込まれる馬の中には、ひどくやせてあばら骨が浮き出ている馬や、津波の影響だろうか、擦り傷が目立つ馬もいた。ただ、これでやっと十分にエサも食べられるようになるし、治療も受けられる。馬は表情豊だ。とても喜んでいるように見えた。私も嬉しくなった。
しかし、その後、何軒かの畜産農家をまわったが、そこには筆舌に尽くしがたい悲惨な状況があった。
数日前、警戒区域内における家畜の映像がメディアにも流れたが、状況はさらに悪化していた。
ほとんど全ての家畜が死んでいると言っている政府関係者もいるようだが、実際には、多くの家畜がまだ生きている。
ただ、このままでは、いずれ全て餓死する。
放射線の影響で経済価値を失っているから、家畜として保護する必要はなくなっているというのが農林水産省の立場だろうが、移動中、常に空間線量をチェックしていたが、いずれも場所も、毎時3マイクロシーベルト未満であった。
放射線の影響が心配なのであれば、馬の場合や計画的非難区域等における家畜の取扱いと同様、スクリーニングや除染などのルールを定めて、区域外に移動させることができるのではないか。
また、仮にスクリーニングに抵触した場合であっても、原発事故の家畜への影響調査のために、経過観測動物として保護する価値があるのではないか。今回の原発事故の家畜への影響は、世界への責任として、しっかりと分析しておくべきだ。その場合、所管は農林水産省ではなく、文科省や厚労省になると思うが、いずれにしても、20km圏内の家畜の取り扱いについて、国として明確な指針を示すべきだ。
一方、大変辛い決断にはなるが、家畜所有者の皆さんにも、全ての家畜を救うことはできないことも理解してもらう必要がある。著しく衰弱している家畜が多数存在していることも事実であり、そうした家畜については、安楽死させるしかない。悲しい現実だが、救える命を救うためには、避けられない選択だと思う。
そして、私が問題だと思ったのは、死亡畜と生存家畜が混在している状態にあることだ。共食いも起きている。こんな状態を、これ以上放置すべきではない。そのためにも、生かすべき家畜の選定を冷徹に行う必要がある。貴重な種豚などは移動させるべきだと思う。
加えて、死亡畜の処理方法についても、国が明確な指針を示すべきだ。現時点では、死亡畜には消石灰をかけてブルーシートで覆うという指針が、福島県からは出ているものの、国は何も示していない。
朽ち果てていくことを待つというのであれば、余りにも無策に過ぎる。
現地の人はみんな真面目だ。国が入るなと命令したら素直に警戒区域には入らないのだ。だからこそ、出入りを禁止した以上、それに対応する措置を同時に示すのが国の最低限の責任だ。
今回、南相馬市や飯舘村を訪れたが、本当にのどかな農山村だ。福島原発から離れていることから立地交付金ももらっていない。ただ、原発事故の影響だけを被って、多くの人がふるさとを去らざるを得なくなっている。
そして、人がいなくなった町で多くの動物が命を落としている。
静かに満開を迎えている山桜を見ながら、そんな不条理に対する感情の高ぶりを禁じえなかった。
とにかく、少なくとも、以下の措置を早急に講じるべきだ。
・家畜の現況調査
・移動できる家畜と移動できない家畜を分けるための基準・ルール設定
・移動できない家畜(死亡畜を含む)について対処方針
なお、昨日は、家畜を中心に見てまわったが、警戒区域内には、ペットも多数取り残されている。20圏内を移動している最中も、道路をさまよっている犬や猫を見かけた。こうしたペットについても、移動のためのルールづくりや体制整備が急ぐ必要がある。
5月1日に行われた現地対策本部と関係市町村との会議では、今後実施する警戒区域内への一時帰宅の際、ペットの持ち帰りは認めない方針のようだが、自動車と同様、スクリーニングポイントを設け、問題のないペットについては移動を可能とすることも検討すべきだと思う。
明日は、獣医師会の関係者にも同行してもらい、もう一度、警戒区域に入る予定だ。残された時間は限られている。
とにかく、救える命はできるだけ救うとの思いで、できることを全部やっていきたい。