20日 5:36 @ Ensenada.MX

遠征から帰って来ました。
ネットが使えんかったー。


今日の日記は長いぞ。
帰りのバスの中で書いたから。
心して読むように。




前回登板から中8日。
アクシデントにより登板回避をし、4日間飛ばしてもらいました。完璧では無いけど、いつまでも休んでられないのがここでの外国人選手の責任です。


今回、登板回避をして時間に余裕が出来たことで自分の今の気持ちを整理してました。

2009年12月に肘のクリーニング手術をし8ヶ月のリハビリトレーニング。
2010年8月にメキシコのウインターボールで復帰。

お金も時間も掛かったけど今年のメジャー挑戦への布石として昨年11月にメジャー数球団のプライベートトライアウトを受けました。ここでも好感触を貰ったんですがもう一歩。契約には至らず。解ってはいたものの好評価が契約に至るとは限らない。シビアだ。


さすがに今年は今回の活動にあたり大きな葛藤がありました。しかし千載一遇のチャンスだと言う事で周囲の後押しや協力を得ることが出来、僕も万を時して渡米してきました。

肘の状態も、自己の技術、体力共にベストで望める!僕の野球人生で一番の勝負の時が来た!と感じていました。


しかし…。

アメリカでの2度のトライアウトはキャンセル…。その後、メキシコに渡りメキシカンリーグ(LMB:MLBのAAAにあたります)のスプリングトレーニングに参加。外国人選手の中では一番アピール出来ていたんですが契約には至らず、結局MLB傘下でもない、【メキシコ北部リーグ】のエンセナーダ・マリネロスというチームでプレーをする事となりました。

マリネロスはAAAのチーム(メキシコシティ・レッドデビルズ、オアハカ・ゲレーローズ)のマイナーチームなんですがAAと言う訳ではなく、外国人助っ人もマリネロスが単独で雇う助っ人外国人なんだと言う事です。(なんの説明も無く、開幕後に選手から聞いて察したんですが…)

ブログもLoad to MLBと題していますがここにメジャーリーグへのチャンスはありません。日本を出た時にこう題し始めたのでそのまま。一握りの希望を込めてこう題しています。


不安なままシーズンが始まりました。
一年以上の準備の成果、調子の良さを表す様に前半戦は5勝0敗防御率1.87でオールスターゲームにも選ばれました。

が、オールスターゲーム前週には食中毒になってしまい5日間で2敗を喫しました。翌週には体調も回復し、またここから!と、病み上がりながら復調の兆しとなるゲームメイクが出来たんですが…その翌日にアクシデントにより首を痛め、始めての登板回避…。成績も急降下してしまいました。(´Д` )



正直、なぜここにいるのか?自分でも意味が分からない上に無駄な病気や怪我をして…
「こんな事をしに来たんじゃねえぞ!」
と毎日、思っていました。

応援して下さってる人達にも本当に申し訳ないし…。

明確な目標も無ければ仕事への価値観や楽しさをどこに見いだせばいいのか。全く分かりませんでした。

野球人生の中では出場機会に対し選手数が多すぎてチャンスもなかなか貰えなかったあの頃。自分が何をしたいのか何を必要とされているのかも見出すことが出来なかったロッテのファームにいた頃の様な時間を感じていました。

「俺、なにしてんだろ…」って。
(今は必要とされてローテーションで投げていると言う大きな違いはありますね。そこは素直に感謝してます)


ずーっと、ずーっと。
3月中旬にここに配属?されてから3ヶ月ずーっと考えてました。

「なんで、俺はここにいるんだ?」
そこまでして野球をする事に意味があるのか?自分の求めてきた道がここには無いのに、なぜ?色んな人が協力してくれて、自らも頭を下げて日本を出てきたのに結局チャンスのある場所にも立ってない…。


じゃあ、辞めればいいじゃん、って聞こえてきそうですね(笑)



でも…辞める、諦めるという選択肢が僕の中では"違う答え"だと感じてました。

目に見えた計算ではなく心の中で感じるモノ。に素直にいたい。

ここには何もないと感じてもいるし。ここから逃げ出す事も違うと感じるし。どうしたらいいか、わからないまま時間は過ぎ、淡々と仕事をこなす事で時が過ぎるのを待っている?

「なぜ?なんでなんだよ。俺。」

特にここ3週間は食中毒になったり、怪我までさせられて…更に深く考えさせらました。


そんな中でふと…。
肩の力がすとーんと抜ける様な感覚陥りました。

あ。なるほど…。と。



それは今回登板の2日前の出来事でした。
朝10時前。遠征に出発する直前、日本から妻が送ってくれた小包が届きました。既にバスに乗り出発待ちをしていたところ、本当にギリギリのタイミングでした。中身は依頼してた新しいスパイクと健康維持にいつも飲んでるアサイーベリーのフルーツジェル。それに妻が差し入れのインスタント食品を
いれてくれてました。手紙も。デジカメの充電器は忘れたみたいでしたが…(^_^;)

出発まで時間が無かったので慌てて荷物を解いて、フルーツジェルと手紙を取り出してバスに乗り込みました。

手紙もいつもの様に頑張れー!って感じで特に何か特別な事が書かれてた訳でもありませんでした。



ただ、手紙を読み終え、音楽を聞きながらしばらくバスの外の風景を眺めていたんですが…


「なぜ?こんな思いをしてまでも俺はここに留まっているんだろう?」


と、ここでの"いつもの問題詞"が景色の中に浮かんでいました。

すると、ふと。
本当に…あれ…なんだ…この感覚は?って感じで。

気づかされたというか、悟されたというか。


それは。


皆さんが家族を愛したり、自分の仕事を愛する事と同じ事だと言うことです。


僕の妻はなぜこんな僕と結婚したんだろう。なぜ、野球を辞めろと言わず、いつも背中を押すんだろう。ということ…の中にあったんです。


分かるかなぁ。


こんな事を書くのは恥ずかしいんですが…




愛。です。(書いたな)

愛…なんだと思います。



「恋とは奪い合い続け 愛とは与え続けてく事」
と、B'zの歌にありましたが別に関係ないです。(^_^;)





よく、人に海外でも野球を続けてる僕に
「お前も好きだなぁ。」
っと、多少呆れ気味に言われます。まぁ、間違ってないですけどね。でも、そうじゃない。好き、だけじゃこんなとこで野球は続かないです。だって正直、嫌いな事も嫌になる事も沢山ありますもん。
むしろ今なんて不満の方が大っきいし…(-_-;)


勝手なイメージでお金が儲かるからとかかっこいいからとか、チヤホヤされて良い思いが出来るから。だから、海外に出てまで野球選手に拘るんだ、なんて思う方もいるかと思いますが…。
違います。

そんな表面上の目に見える理由は、

それを褒めてくれる誰か、評価してくれる誰かの為にあるものなんです。

それを否定しようとは思いません。それも大切な事で野球人生の一つでそれを目的に時間を懸命に使ってる人達もいます。"それでも"良いんです。

恐らく野球ファンの方達の中にはそれが野球選手が現役に拘る当然の動機だと思われてる方が沢山いると思います。でも、それは違うと僕は思います。


その欲望が目的が叶わなければ、または評価されなければ…意味がない?

僕が野球は結果が全て。ではない。と感じていたのもここに理由があるんです。


目に見えるものへの評価や体裁だけを求め考える人には続かないんです。嫌になる。野球選手として生きる意味を感じなくなります。


でも、今の僕は誰かに褒めて欲しいわけでもなく。(ここでの評価は僕が欲しいものではないんですが)お金が儲かっている訳でもありません(現地ではそれなり…なんでしょうが)


それでもここにいるのは、今までも野球と人生を重ね合わせた上で自分自身が愛するモノ(野球、家族、人)と共に歩む事を、生きる事の価値や喜びと感じて来たからなんだ。と気づいたんです。だから、諦めるとか辞める、は違うと感じてたんですね。そもそも表現自体に違和感があるんですよね。


家族みたいな。
どんなに辛い事があっても、喧嘩をしても時にはひどい事を言ったり言われたり。それでも家族を辞める、諦めるとは思わないですよね。良い事も悪い事も全てを受け入れる覚悟をしているから。
それが愛なのかな。と。

愛しているから悪い部分も良い部分も理解して一緒にいれるし人生という時間の中で共に成長させてくれる。

父の様に威厳があって母の様に寛大で兄弟のように安心できる。そして妻と居る様に自分らしくあれて、子供に何かを残す様に、後世への使命感、責任感を抱く事が出来る。

僕にとっての野球はそういう家族の様な存在なんだと気づいたんです。

今まで自分でも気づいてなかった。だけど、きっと野球に対して真摯にそう接して来ていたと思います。

一度は離れてしまった(中日で打撃投手を3年しました)けれど戻って来たのも。ごくごく自然の流れだったんだなぁ。と。家族の元に帰る様に。家族への愛も野球への愛も自然な感情行動。無意識ですもんね。

好きとか嫌いとかとは違う次元の感情
というか。

「たとえ今はここにいる意味を見出せなくとも、それでも野球と一緒にいる事を無意識に選択しているのは僕が野球を愛している証なんだ」

家族といれる時間が永遠ではない様に僕が野球と一緒にいる時間も永遠ではない。今しかない。今、愛を持って野球と相対さなければ一生後悔する。

今シーズンの残り数試合で僕の野球人生は終わってしまうかもしれません。もしかしたら次の登板でも…。それは誰にも分かりません。だから今は思いっきり野球を愛そう。と心から感じたんです。




そう悟った瞬間になぜか、目頭が熱くなって…バスの車窓から見えるサボテンを眺めながら、涙をこらえてました。


ここの選手達がどれ程の愛情を持って野球に対しているのか…は別として。(。-_-。)そんな僕の野球人生を通じて出会った仲間なんだ、と思うと大切な仲間ですね。今はマジでムカつくけど(笑)


見てる人にとっては大した事じゃないんですよね。でも、僕、昔から頑固なんで、裏付けや動機がはっきりしないと嫌なんですよ。気持ち。入りませんもん。時間が勿体無く感じてしまって。でも、もう大丈夫だと思います。

だって、野球は家族ですからね。



こんな事を悟ったんですが、現状が変わる訳でも無く"仕事"としては不安と不満の時間を過ごしてます。まぁ…それも僕の運命なのかもしれませんね。アメリカ人の担当エージェントからは
未だに連絡も説明もなにも無く…ほったらかし…。だし。(^_^;) もう…期待も信頼もありませんけど。


それでも自分の運命を受け入れる意味を見つけた事は僕なりの収穫だと強く感じています。感謝。(^-^)




前置き?が長くなりましたが登板報告です。


そんな気持ちの整理をつけて臨むことが出来たゲームでした。久しぶりに登板前には武者震いが来ておおー!って感じでマウンドに上がりました。

結果は

9回7安打7三振1四球1失点0自責点 120球

エンセナーダ 3-1 サンルイス

蒸し暑い中、タフな流れでしたが、辛抱強く投げれました。首もまだおかしかったけど慎重になるくらいなら攻めてやれ!後は無い!と。強気になれました。ピンチでも落ち着いて投げれました。

今シーズン2度目の完投勝利です。


そう言えば前回の完投勝利は母の日でした。今回は偶然にも父の日かぁ。(^-^)こんな形で家族と野球とがリンクするなんて不思議だけど、野球の神様は僕に何かを悟らせたかったみたいですね(笑)

また成長。まだまだ成長。







あなたは愛するモノとの大切な一瞬を、今を、懸命に生きていますか?








o(・∀・)o 「ざぁぁぁっす!」