福岡のサンパレスの30周年という事で、5月に最終型のROOSTERZをやりたい。
という話をもらったのが、今年の1月。
昨年、ロフトでやった再結成が楽しかったし、日程も空いていたので、
「やります!」と答えた。

その後、仙台の4月29日のARABAKIロックフェスティバルへの出演も決まった。


ここ数年、音楽業界は決して景気は良くなく、
「まあ、今年はヒマだろう。」と覚悟していたところが、
意外と忙しくて、1月、2月は瞬く間に過ぎ、3月に入り、
ぼちぼちARABAKIの話が詰まってくるかな?
というあたりで、3月11日の地震が来て、
その後の世間は衆知のように大混乱。


ARABAKIは、どうなるのだろう?と思っていたら、
8月に延期が決まったのだが、
この時期他のメンバーの仕事が決まっていて、
ARABAKIロックフェスティバルには結局、出演できなくなった。


このあたりの時点では、福岡はまだフロントアクト在りの
2バンドでやる予定になっていたのだが、
いつの間にか、ROOSTERZだけの出演になってしまっていた。
「ひえー!!」である。
下山君に「2時間やれってかい!」とメールしたら、
「出来ればな。」という返事が返ってきた・・・。


ワンマンなんて10年前のサニーデイサービス以降やった事ないし、
やっていたといってもパーカッションだし・・・。
その後の主な仕事は、主にレコーディングのドラムテクニシャンで、
ドラム叩いてワンマンなんて何年やってないんだろう?
しかも、ROOSTERZ・・・。トシは51になったばかり・・・。


ま、この辺から「体力付けなきゃ・・・。」という思いはあったのだが、
地震後、地元下北沢近辺に多くある仲の良いライブハウスが
気にかかって、久しぶりによくのぞきに行くようになっていた。
「ダイジョブだった?」というのもあるし、
こういう時期には、多くの音楽関係者が、
なんとなく下北に集まってくる。
ライブの公演中止などで、暇になったミュージシャンなどもである。


出かけると、久しぶりの人に会っちゃって、
「うわー、久しぶりー!元気ー!」んで、飲む。
みたいな事が、どうしても多くなってしまい、
日ごろのウォーキングも滞りがちで、
電車もまともに動かないので、山歩きにも行けず・・・。

5月の連休直前には、耳の下のオデキが腫れたり、
歯が痛くなったり、数年ぶりに風邪引いたりと、
体力は、かなり落ちていた。


連休中にも仕事があったので、
「さあ、ROOSTERZモードだあ!」と思えたのが、
16日の初リハのちょうど一週間前。

4月の末に花田君からの候補曲のリストが来ていて、
昨年のロフトでのセット
 01.Gun Control
 02.再現出来ないジグソウ・パズル
 03.Naked Heavy Moon
 04.Oh! My God
 05.Everybody's Sin (Vocal.下山淳)
 06.鉄橋の下で
 07.Hurt by Love
 08.Land of Fear
 09.曼荼羅
 10.(Standing at)The Cross Road
 11.Passenger
EN
 12.(So You Wanna Be A) Rock'n' Roll Star
 13.Searchin'


に、


Criminal Rock
Neon Boy
Transmission
no no no
Stranger In Town
Femme Fatale
Lady Cool


を加えた、20曲という事になっていて、
ミドルテンポの良い曲が増えているのは、嬉しかった。

一応全曲、譜面を書くところから準備を始めた。
トランスミッションは、23年前のライブで僕が叩いたものが
ボックスセットのコンプリートライブには入っているのだが、
ぶっぱやくキメも合わせ過ぎの忙しいだけの演奏になっているので、
スタジオ音源を送ってもらった。


送られてきた音源を聞くと、シンプルで楽しいロックンロールである。
ネオンボーイも同じくで、これも23年前は、やり過ぎ。
逆にクリミナルロック、ストレンジャーインタウンは、
音源版はシンプル過ぎ、
ライブアレンジは少し考えなければならない印象だった。

4月にロックンロールジプシーズのクラブ251でのライブに
お邪魔して、そこでは池畑君によるオー・マイ・ゴッドなどを観て、
そこでの池畑君、下山君との会話も、大いに参考になり、
かつ刺激的だった。

元々、ROOSTERSの連中は、R&B等が大好きな連中で、
多分、花田君の曲であるトランスミッションなどは、そういう解釈で
シンプルに楽しくやれば良いのだ。


今回は、こういう「原典の心を知る」といった作業が楽しかった。
実は、23年前も、こういう事をちゃんとやるべきだったのであろうが、
そこまで気が回らなかったなあ。


ま、こちらはこちらで、ちょうどR&B、ファンクといった
「ドラムはシンプルに聞こえるが、全体がものすげえカッコイイ」
音楽に興味が出てきて、いろいろ調べたり考えたりしていた。
そういやこの時期にサンレコに「この時期のこのジャンルのドラムの作り方」
という原稿を書いて、初期ファンクについて書くために、
いろいろ観たり聞いたりしたのも面白かった。
23年前の僕には、この辺の知識や体験が決定的に不足していた。


R&Bやそこから派生したファンクなどは、
ロックのルーツである事は、間違いのない事実であり、
そこを歴史的にも調べなおし、考え直す事は、
実はドラマーとしての僕に大きな安心感をもたらした。
「ドラマーは何をやるべきか?」がハッキリ分かったのである。

僕好みの言い方で言えば、
「ドラマーは、これさえやっていれば、ダイジョウブ!」である。

これだけやっていれば、観客はノリ、共演者はやりやすい。
「すんごいオカズ」とかは、出来るならやれば良い。
出来ないならやらなくても演奏は成り立つ。
「パワー!」に関しても同じである。


リハーサルに入る直前に、こういった確信が出来ていたのは、
非常にラッキーだったなあ。

24年前かな、ROOSTERZに入ったばかりで右往左往している僕に
花田君が「三原君、叩いとりゃええよ。」と言った事の理由が、
今にして分かる。

ま、花田君は、理屈っぽい人間ではないので、
最近の僕のような論理的な説明はしないだろうが、
多分、同様のことである。
花田君は理屈っぽくない分、早くから体でそれを知っていた。
という事であろうと思う。
池畑君は、子供のころ、そういった音楽を
ラジオにかじりついて聴いていたという。
まあ、そこである。


僕は、エマーソン・レイク&パーマーに始まり、
フィル・コリンズ、ビル・ブラッフォードのドラムを
レコードが擦り切れるほど聴いた。
レコード擦り切れて、裏の曲が聞こえたほどである。


ウソである・・・。


大学時代はフュージョン全盛で、スティーブ・ガッド全盛。
ま、こうして結果的に16ビートは、体に入っていた。
その後、パンク、ニューウェーブが来て・・・と。


どうも「ちょっとハネたドラム」などには馴染めなかったのだが、
最近は、許容出来るようになった。
そこが分かってみると、がぜん8ビートが面白くなる。
面白くなると「シンプルでも良い。」と信じられる。


どうも、自分のドラムに関して「多彩ではあるが中核を欠く。」
という気はしていたが、どうやら、そこは埋められた。
と、感じられるようになって、ROOSTERZ!

なので、まあ基本的には「ダイジョブだろう。」とは思っていた。

ま、あとは体力と段取りである。
が、今さら筋トレしたって間に合わないし、
まだセットリストも来ていない。


家でやっていたのは、
昨年の再結成の前に始めて半ば趣味になっていた
フィンガーコントロールの練習ぐらいか。
スネアの音決めも兼ねてリハスタの個人練習も何度か入った。


下山君からは、時折メールが来た。
来たのは来たが、ROOSTERZに関する話は無し。


「スベア123R(アウトドア用のガソリンコンロ)持ってるのか?」

「持ってるよん。」

「かわいいのか?」

「かわいいよん。」

「そうか!かわいいのか!」


何の話やねん・・・・。


スベア123Rは、真鍮で出来た小さな円柱で、無骨だが非常にかわいい。
下山君は絵描きなので、こういうものはたまらんらしい。
買って、部屋でコーヒーを淹れて飲もうとか思っていたらしいが、
それは必死に止めた。
池畑君に、めくるめくアウトドアグッズの世界の話を聞いて、
興味を持ったらしい。

えーい、こっちはそれどころではないわ!


ちょうど直前に、レコーディングに僕の楽器を使う機会があって、
けっこう良く鳴ったので、
ドラムは僕のヤマハのYDー9000RCDを持ち込む事にしていた。

スネアのレシピも、下山君の要望も聞いて、
リハの初日の前には決めてあったし、結局それで本番も臨んだ。
大ホールという事で、ロフトの時より若干高めで、タイトめ。


ありゃあ、リハの初日について書くはずが、
「リハーサル前夜」になってしまった。


ま、いいか。