吸血鬼の弱点 | 乾燥日記

吸血鬼の弱点

この世界に吸血鬼が跋扈し、その存在が公式に認知されてから5年になる。
夜行性のため、夜になると被害が拡大し、防衛策はほとんどないと言ってよかった。
彼らの厄介なところは、通常の人間と見た目上の見分けがつかないところだ。
口を開けても牙があるわけでもない。
噛み付かれ、血を吸われてしまったら、干涸びて死を迎えてしまうか、
または、吸血鬼へと転生し、吸血鬼として生きていくか、どちらかであった。
その区別は吸血鬼側にも分からないらしく、噛み付いてみて初めて分かるといった具合だ。
遺伝子的な要因があるのかもしれないが、いまだ解明はされていない。

そんな中、人類に初めて希望の火が灯った。

吸血鬼は、おとぎ話のようににんにくも十字架も効かなかったが、
ついに「弱点」が見つかったのだ。

それは、「パクチー」であった。

人類に紛れ込んだ吸血鬼は「パクチー」が食べられない。

そのことが分かってから、政府は全人類に「パクチー」の接種を義務づけた。
人類の中にまぎれている吸血鬼を一掃する作戦だ。

軍の立ち会いの元、整理券が配布され、
ひとつの街ずつパクチー検査が行われた。
食べられないものは捕らえられ、収容所へと送られた。

その収容所の名は、「パクチーハウス」と呼ばれており、
吸血鬼達が、パクチーを用いた料理を作り続けていた。

パクチーには、吸血鬼を弱体化させる力があり、
それだけではなく、吸血鬼を人間へと転生させる力まであった。

パクチーハウスは吸血鬼のリハビリ施設としても活躍している。

そして、その店は、日本、東京の街にひっそりと佇んでいる。
そのことは、あまり知られてはいない。