今再び黒船が来航し日本の原発は終わっていく | イージー・ゴーイング 山川健一

今再び黒船が来航し日本の原発は終わっていく

 民主党の前原誠司前外相は、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに答え、「日本が原子力発電を今後20年で段階的に廃止することが望ましい」との見解を示し、「新たな原発の建設は基本的に中止すべきだ」と述べた。
 ※民主党の前原氏:段階的な脱原発を呼び掛け、今後20年で-FT紙 - Bloomberg.co.jp
 http://t.co/5goJfYK

 これは、何を意味するのだろうか?
「日本のエネルギー政策が全面転換していきそうなことを示している」と英紙フィナンシャル・タイムズは書いている。
 前原誠司前外相は6月にも神戸で行った講演で、「20年後までに原発をなくすことに賛成だ」と表明している。
 もちろん、前原誠司前外相はポスト菅直人──ようするに次期首相を狙っているのだろう。そのための方便だというとらえ方もできるだろうが、しかし、注目しなければならないのは、前原前外相がずっと対米従属の路線を歩いてきた人物だということだろう。アメリカへ行った時も、言葉は悪いがたかが外相だったのに首相なみの扱いだった。
 アメリカの原子力安全委員会は、3月11日の事故発生の直後から、「東電福島原発の事故の規模は日本政府の発表よりずっと大きいものだ」と言いつづけてきた。日本の安全委が20km圏内の避難指示を決めた際にも、80km圏内に非難指示を出すべきだと発表したのは記憶に新しい。東北新幹線の汚染程度まで調べて発表している。
 こうしたアメリカ側のデータが日本国民に「日本の政府はどうも信用できないぞ」という印象を与えたのは事実だろうと思う。
 さらに、菅直人首相がいかにも唐突に浜岡原発の停止を決めたのも、アメリカの政府筋から圧力がかかったからだという説が囁かれ──これは、ぼくは個人的には事実だろうと思っている。たしか、ブログにもそう書いた。
 アメリカの政府当局は、アメリカに近い前原誠司前外相に「原発はあきらめろ」という強いメッセージを発していて、だからこそ対米従属路線を歩んでいる前原前外相は「20年後までに原発をなくすことに賛成だ」と言ったのではないだろうか。

 ぼくはあちこちでよく「おまえは楽観的すぎる」と言われ、それはもっともな指摘だと自分でも納得しているつもりだ。しかし、最近の一連の流れを見ると、アメリカからの外圧という形で日本は脱原発に向かわざるを得ないのではないか。
 これも前にブログに書いたことだが、日本の「原子力の平和利用」はアメリカからの圧力によってスタートした。そいつは、いわば「第二の黒船」だった。そして今、同じ圧力によって日本は望むと望まざるとにかかわらず、脱原発にシフトしていかざるを得ないのではないかと思うのだ。
 本気なのかパフォーマンスなのかはっきりとはしないが、オバマ大統領は「核兵器の廃絶」を目標として掲げた。アメリカ合衆国の一国覇権主義が終了し、新しい世界の青写真が構想されるのならば、大国だけに核兵器保有を許される今の世界のあり方は問い直されなければならない。核があちこちに拡散してしまうよりも、むしろ全世界的に核兵器の廃絶を目指すべきだ──と、オバマ大統領は考えているのではないだろうか?

 話は変わるが、佐賀県の玄海町の岸本町長が、九州電力玄海原発の再稼働を了承したのは7月4日のことだった。そのわずか2日後の6日、菅直人首相は「すべての原発のストレス試験(耐性テスト)を実施すると」発表。これもいかにも唐突で、民主党内がバラバラであることを露呈した。
「菅直人はそこまでして延命を図りたいのか」という声があるが、これもアメリカからの外圧があったと考えるほうが自然なのではないかという気がするのだが、どうだろう。
 アメリカ合衆国は遠いようだが、太平洋を挟んだ隣国だ。カリフォルニアからプルトニウムが検出され、海が汚染されつづけている今、「これ以上に日本に原発をやらせるわけにはいかない」と米政府当局が考えたとしても不思議ではない。
 原発を止めようという声をあげるのは、やはり、今をおいて他にはないようにぼくは思うのだが。
 敗戦後ずっと、いやじつは黒船が来て鎖国をといた時からずっと、日本はアメリカ合衆国を無視できなかった。戦後は特に対米隷属路線を歩ゆむしかなかった。前にもツイートしたが、今のまま東電福島を放置すれば、もっと強い外圧をかけられ日本は主権をさえ失いかねない。だからそうなる前に、国連安保理の席上ですべてのデータを公開し、「世界の叡智とお金を貸していただきたいのです」と頭を下げるべきだと思うのだが…。

 昨夜、大柴美子さんと加藤早人さん、某社編集者の方々と「みえないばくだん」(お2人の絵本)の打ち合わせをした。その席上で、今重要なことが2つあるという結論に達した。
「福島に限らず一時的に避難したい母子の安価な宿の確保をどうするのか」という問題と「今後長く続く安全な食料の入手方法をどうすればいいのか」という問題だ。
 既に都内も、かなりの線量になり、ホットスポットの存在も指摘されている。
 食料問題も深刻度を増している。
 道は遥か遠いが、しかし、知恵を出し合って解決していかないとね。ぼくらは、生き延びていかなければならないのだから。