ここ2、3日、ツイッターで何度も拡散された、重要文書があるのですが、PDF形式のため、ケイタイユーザーには見る事ができないので、デジカメで撮ったのをアップします。表紙を入れて合計26枚。

"2004年春、経済産業省の若手官僚たちが「19兆円の請求書~止まらない核燃料サイクル」[PDF]と題する文書を手に永田町や霞ヶ関を走り回り、「今こそ立ち止まって考え直すべきだ」と訴えた"[日経ビジネス2011.07.07]のですが、そのときに使われたプレゼン資料のようです。

公僕とは何かを心得た優秀な人たちが官僚で存在するのであれば、国民もそれを支えて(但し原点は今後は地方で)一緒にいい国を作っていきたいですね。(この6人の志士らはその後飛ばされました。)

(各画像のALTタグに、音声で読んで下さる方のために、スライドの内容を手入力で入れました。パソコンの場合、ブラウズすると文字が表示されます。)
19兆円の請求書_00 (表紙)19兆円の請求書 (副題)止まらない核燃料サイクル

19兆円の請求書_01 日本における原子力発電の位置付け<br />現在日本の電気の約3割は原子力発電に依存<br />原子力発電電力量の推移の図<br />*本ペーパーは原子力発電そのものの是非を問うものではない(脱原発は中長期的課題)

19兆円の請求書_02 核燃料サイクル構想の背景<br />〇昭和29年に中曽根康弘が宇宙開発とセットで予算化(2億3500万円→平成15年度4671億円)<br />→昭和31年に国の原子力政策を定める原子力長期計画で核燃料サイクルを位置付け<br />○1970年代の2度にわたる石油危機→石油から原子力への転換→原子力発電の燃料となるウランの量にも限界→核燃料をリサイクルする核燃料サイクル構想が具体化⇒純国産エネルギー、夢のエネルギーとしての原子力!<br />

19兆円の請求書_03 核燃料サイクルとは<br />原子力発電所で発電した後の使用済燃料を化学的に処理(再処理)し、含まれているウラン、プルトニウムを回収して再び燃料として再利用すること。<br />図:<br />軽水炉サイクル、燃料の利用効率は1.1倍(ウラン鉱山→原子力発電所→使用済燃料→再処理工場→MOX燃料加工工場→MOX燃料として原子力発電所に戻る<br />図:<br />高速増殖炉サイクル、燃料の利用効率は約60倍(MOX燃料加工工場→高速増殖炉→使用済MOX燃料→高速増殖炉再処理工場(投入量の60倍のプルトニウムを回収)

19兆円の請求書_04 高速増殖炉サイクル構想の挫折<br />欧米諸国は技術面、経済面の理由から高速増殖炉サイクル構想から相次いで撤退<br />ドイツ、1991年に計画を断念<br />アメリカ、1994年に計画を断念<br />イギリス、1994年に研究炉が運転を終了し、その後の計画を断念<br />フランス、1997年にスーパーフェニックスの閉鎖を決定<br />日本、もんじゅの事故(1995年)→名古屋高裁で設置許可無効判決(最高裁で係争中)

19兆円の請求書_05 軽水炉サイクル<br />―過渡的位置付けから主役へ―<br />高速増殖炉サイクルの挫折により、本来過渡的な位置付の軽水炉サイクルが突如主役に!!<br />⇒「プルサーマル計画」と命名(プルサーマルとはプルトニウムとサーマルリアクター《軽水炉》を組み合わせた日本の造語)<br />[前の図から高速増殖炉サイクルの部分を罰印で削除]

19兆円の請求書_06 軽水炉サイクル構想すらも停滞<br />欧米では経済的に見合わず、資源的にメリットも少ないことから、軽水炉サイクル(プルサーマル)を放棄し、再処理せず直接処分へと移行する国が続出<br />アメリカ、1977年カーター大統領の核不拡散声明により直接処分へ<br />ドイツ、1998年以降軽水炉サイクル路線から直接処分へと路線転換<br />スウェーデン、1970年代に一時軽水炉サイクルを行っていたが、現在は直接処分路線を選択<br />スイス、軽水炉サイクルは行うものの、2006年から10年間の再処理凍結<br />イギリス、軽水炉サイクル路線を維持(将来も継続するかについては検討中)<br />フランス、軽水炉サイクル路線を維持(将来も継続するかについては検討中)<br />日本、軽水炉サイクル(プルサーマル計画)を推進中

19兆円の請求書_07 日本がこだわる軽水炉サイクル①<br />軽水炉サイクルに欠かせない再処理工場(青森県六ケ所村)の建設費用は鰻登りに膨らんでいる<br />6,900億円(構想当初昭和54年頃)→7,600億円(平成元年3月)→1兆8,800億円(平成8年4月)→2兆1,400億円(平成11年4月)→2兆2,000億円(構想当初の約3倍!)<br />※関西空港の人工島ですら建設費は1.6兆円

19兆円の請求書_08 日本がこだわる軽水炉サイクル②<br />それほどの巨額を投じた再処理工場→完成を間近に控え、相次いでトラブルが発生<br />☆使用済燃料貯蔵プールからの水漏れ<br />☆補強用の金具を不正に切断<br />☆施設内での相次ぐボヤ<br />☆パッキンを間違えて、配管から化学薬品が噴出<br />☆化学薬品の状態をみる温度計を、間違った位置に設置<br />等々通常では考えられないトラブルが発生

19兆円の請求書_09 日本がこだわる軽水炉サイクル③<br />建設費2兆円工場を実際に動かすと、総額で19兆円のコストが発生することが明らかに!<br />→再処理工場建設費の前例(3倍)を見れば<br />総額で50兆円を超えることも!<br />→これほどの巨額費用をかけてなぜ軽水炉サイクルに固執し、推進するのか?←様々な異論が噴出

19兆円の請求書_10 核燃料サイクル推進の根拠と批判①<br />1.ウラン資源の利用効率の向上の観点から<br /><推進根拠><br />○使用済燃料の再処理により、元の燃料の約2.5~4割りに相当する新燃料を再利用することが可能<br /> ↑<br /><批判意見><br />☆ウランの需給及び価格は長期的に安定(一般物価よりも低位に安定)<br />☆海水ウランの回収技術の開発もあり得る<br />☆高速増殖炉の利用なしでは、核燃料サイクルの資源節約効果は限られている<br />☆高速増殖炉の実用化の目処が立っていない

19兆円の請求書_11 核燃料サイクル推進の根拠と批判②<br />2.放射性廃棄物の処理処分の観点から<br /><推進根拠><br />○最終的に処分する高レベル放射性廃棄物の放射線量を低減<br /> ↑<br /><批判意見><br />☆低レベル放射廃棄物まで合計すれば、廃棄物体積は大幅に増加<br />☆再処理の過程で、原発とは桁違いの放射線被曝が発生<br />

19兆円の請求書_12 核燃料サイクル推進の根拠と批判③<br />3.使用済燃料の搬出先の観点から<br /><推進根拠><br />○原発の地元と使用済燃料を再処理工場に搬出することを約束。核燃料サイクルをやめれば、原子力発電所の運転が止まり、電気の供給に支障が生じるおそれ<br /> ↑<br /><批判意見><br />☆原発の稼働停止が直ちに電力供給に影響しないことは昨夏の東電問題からも明らか<br />☆原発立地他県からも、福島県知事のように、使用済燃料の搬出先問題をもってサイクルを正当化することは「問題のすり替え」との批判あり<br />

19兆円の請求書_13 核燃料サイクル推進の根拠と批判④<br />4.費用の観点から<br /><推進根拠><br />○再処理を行えば費用が生じることは事実だが、原発全体の経済性に遜色ない<br /> ↑<br /><批判意見><br />☆少なくとも六ヶ所再処理工場を動かせば、19兆円の費用が発生することは事実<br />☆六ヶ所再処理施設の稼働が順調に進まなければ、再処理単価は高騰。ひいては原発全体の経済性にも支障を及ぼす可能性あり

19兆円の請求書_14 核燃料サイクル推進の根拠と批判⑤<br />5.核不拡散の観点から<br /><推進根拠><br />○積極的な理由はない(核オプション!?)<br /> ↑<br /><批判意見><br />☆プルサーマルの目処も立っていないのに、なぜ余剰となるプルトニウムを再処理により、更に回収するのか<br />(日本は既に38tのプルトニウムを保有しており、核オプションを考えてもこれで十分)<br />☆日本が民生用の再処理を維持する結果、国際的に北朝鮮やイランの再処理施設をストップできない

19兆円の請求書_15 現在の議論の状況<br />国の原子力政策を司る原子力委員会では、核燃料サイクルの是非について議論がスタート<br />ところが…<br />その結論を待たず、前述の様々な批判意見に耳を傾けることもなく官民あげて核燃料サイクルの実現に向けてばく進中!

19兆円の請求書_16 電力業界の姿勢<br />核燃料サイクルの実現を一手に担う日本原燃(電力会社の出資により設立)は、本年4月にウラン試験を実施予定<br />→工場全体が放射能で汚染<br /> ↓<br />来年4月には更にアクティブ試験(プルトニウムを用いた最終試験)を実施予定<br />→工場全体が更に高濃度の放射能で汚染<br /> ↓<br />工場全体の解体費用だけで1.6兆円のコストが発生!<br />工場の他の用途への転用も不可能に…(後戻りできなくなる)

19兆円の請求書_17 国の姿勢①<br />○経済産業省では昨年から経済的支援策の検討を開始<br />○今夏には審議会で結論を出し、年末には経済的支援策の内容が決定される見込み<br /> ↓<br />原子力委員会の結論を待たずに、既成事実化を狙う

19兆円の請求書_18 国の姿勢②<br />本来ならば原子力政策を司る原子力案委員会が、核燃料サイクルの是非を真剣に議論すべき<br /><br />原子力委員会メンバー構成(出身元)<br />委員長:近藤俊介、東大原子力研究総合センター長<br />委員長代理:齋藤伸三、日本原子力研究所理事長<br />委員:町末男、原子力産業会議常務理事<br />委員:前田肇、関西電力特別顧問<br />委員:木元教子、評論家<br /><br />5人中4人が原子力関係者!→これでほんとに中立的なの?

19兆円の請求書_19 やめられない止まらない<br />―国の事情―<br />行政の無謬性へのこだわり<br />-今まで核燃料サイクルを推進してきたことが時代遅れになったという政策の誤りを認められない<br /><br />行政訴訟の危機<br />- 政策変更すれば、電力会社から再処理工場建設費の2兆円の損害賠償請求が起きる<br /> (「電力会社は国策にしたがって再処理工場を建設してきたんだ!」)

19兆円の請求書_20 やめられない止まらない<br />―電力業界の事情―<br />2兆円もかけて作った再処理工場へのこだわり<br />- 今更やめるといえば、電気料金で再処理代金を回収してきたものを返せといわれる<br />- 使用済燃料は六ケ所に持ち出す、といて原発の地元を納得させてきた。今更やめるといえば、使用済燃料が持ち出せなくなり原発がとまる

19兆円の請求書_21 やめられない止まらない<br />―原子力ムラの事情―<br />原子力工学科卒業生の存在<br />- 国、電力会社、特殊法人、重電メーカーには原子力工学科の卒業生が多数存在し原子力ムラを構成<br />- 国家予算4,700億円、電力の原子力発電費2兆円へのたかりの構図<br /> ↓<br />サイクルをやめれば、もんじゅ、次世代原子炉といったプロジェクトの意義が喪失し、プロジェクトにまつわる利権が失われる

19兆円の請求書_22 やめられない止まらない<br />―政治の事情―<br />- 六ヶ所村には毎年多額の交付金がおちる<br /><br />選挙の事情<br />- 自民党議員は電力会社から、民主党議員は電力労連、電機労連から様々な支援を受けている<br /><br />ある民主党議員の声<br />「この問題を取り上げるとすぐ労組から電話がかかってくるなぁ、<br />もっと世の中が騒いでくれると取り上げられるのになぁ」

19兆円の請求書_23 やめられない止まらない<br />国と電力業界の原子力利権を巡る政界、官界、業界、自治体のたかりの構図<br />→既得権への固執<br />  ↓<br />制作意義を失った19兆円(果ては50兆円?)ものお金が国民負担に転嫁されようとしている…(一人当たり19万円(果ては50万円?))

19兆円の請求書_24 ちょっと待った!サイクル!<br />この核燃料サイクルを巡る構図は、古くは国鉄、住専、最近では道路公団、年金問題と同じ<br />(問題先送りによるツケが国民に回ることに)<br />  ↓<br />核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないか

19兆円の請求書_25 核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、国民的議論が必要ではないか<br /><br /><参考><br />核燃料サイクルに疑義を唱える有識者<br />○山地憲治 東京大学教授<br />○飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長<br />○河野太郎 衆議院議員<br />○佐藤栄佐久 福島県知事<br />○鈴木達治郎 電力中央研究所主任研究員<br />○加藤秀樹 構想日本代表<br />○吉岡斉 九州大学大学院教授


できるだけ余白を削って文字をアップにしました。ただしページ番号は残して。

コピペできない設定なので手入力で内容を打ったわけですが、読むだけよりも怒りが沸々とこみあげてきました。こんなことがまかり通る国というのは、民主国家の入り口にさえ立ってないじゃないですかぁぁぁぁ!ヽ(`Д´)ノ

こちら↓は最終ページに出てくる「核燃料サイクルに疑義を唱える有識者」のひとり、前福島県知事の佐藤栄佐久氏、直近の著書です。
福島原発の真実 (平凡社新書)
栄佐久氏はこの文書に名を連ねた2年半後、冤罪逮捕で知事職を追われました。

ところで、放射能対策には、この500円の本↓と、ネットの情報でかなりカバーできるとか。
世界一わかりやすい放射能の本当の話 完全対策編