東大の児玉龍彦先生は「徹底して除染」とのお教えですが、
私は「場所によっては除染は難しく、移住を優先せざるを得ない」と思っています。
その理由を記載してみます。
①ベラルーシの農地利用禁止基準55万5千Bq/m^2は1つの参考になります。
農地なので換算係数を100とすると5000Bq/kgであり、農作物への移行係数を1%
と思えば、おおよそ50Bq/kgの(現地の)食品基準を満たすことが期待されます。
ただ日本では(混ぜて薄めればともかく単独で売るには)恐らく10~20Bq/kg以下
が現実的には許容されるレベルで、最終的にその辺りに落ち着くと予想します。
とすると図の6万Bq以上の地域(濃い青)~10万Bq以上の地域(中くらいの青)が
混在する地域がボーダーラインになると思われます。Cs134も合わせると今後数年は
10万~20万Bq/m^2の土壌汚染。農作物は10~20Bq/kgの地域ということになります。
これ以上の地域では農作物を出荷して経済を維持するのは難しいと思われます。
ただし福島から郡山の新幹線・高速道路ルートは農業以外の経済活動もあり、除染を
考えるべき地域かも知れません。費用は(児玉先生のカドミウム汚染の例を引用すれば)
青の楕円内だけで100兆円規模かも知れません。これは農業地域では難しいと思います。
仮に100兆円を50年で原価償却すると無金利でも年間2兆円です。福島全県の農業出荷額
が0.1兆円/年のオーダーなので、それが2.1兆円になるという事です。100円で売ってた
モノを2千100円で売る計算になります。それも「20Bq/kgの汚染を心配しながら」です。
児玉先生に比べればはるかに卑しい考え方ですし、単純な比較はできませんが、
100兆円というのは福島の全県民200万人に均等に配っても1人5千万円です。家族4人に
2億円支給すれば充分に生活を再建できますし、街全体を再建することも可能な予算です。
②(勿論、子供や妊娠可能な女性は避難権利を有する区域だとは思いますが)福島ー郡山の
除染を考えるもう一つの要素として3~4年の間に土壌表面の汚染は10%から20%程度に急速
に低下するのでは?という期待もあります。
斑目委員長ら諸先生方が(8月24日の第64回原子力委員会で14:00から14:15までの
たった15分間の会議で)納得した土壌汚染の減衰カーブは大気核実験の頃の国内調査を
重視していて(現在と比べればですが)非常に微量の汚染、それも蓄積量に比べ有意な量の
「注ぎ足しアリ」のデータです。実際の地下や周辺への移行を遅く評価していると考えます。
・第64回 原子力安全委員会「、、将来の空間線量率の予測について」
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan064/siryo1-1.pdf
・わが国の米、小麦および土壌におけるSr90とCs137濃度の長期モニタリングと変動解析
http://www.affrc.go.jp/agrolib/RN/0000096962.pdf
・チェルノブイリ事故による環境の放射性汚染
http://www.enup2.jp/newpage31.html
チェルノブイリの例も放射性物質は地下に潜ったり拡散しただけで「無くなった」わけでは
ないのですが農作物への移行という意味では初期には急速に低下。その後は周囲や地下
からの循環がバランスし?殆ど一定な状態が続くというモデルを示唆しています。
つまり福島ー郡山ラインの農地は2~3年様子を見ながら生産を続けることで、
現在の1/10程度までは(殆ど自然に)汚染レベルが下がる可能性があると期待します。
理想的には多くが降り注いだ今年は耕作をせず、徹底して放射性物質を取り除く事に集中
すれば将来的な平衡レベルはもっと下げられたかも知れませんが、現実的にはムリでした。
とはいえもしも数年後に農作物が1~2Bq/kgのレベルで安定すれば検査と流通を誤魔化さず、
正直な処置(汚染されていない作物と混ぜ、内訳を公表)をする事で農地としての利用も
可能性があると考えます。つまり生活圏を含めた除染を検討しうる地域だと思います。
③問題は赤のカーブで囲った南相馬を含む「高汚染地域」の近隣です。例えば南相馬市は
人口7万人に対し農業人口2万人です。これから観光や(補助金は無かったとはいえ)
原発関連の就労、消費が無くなるとすると、もし「除染補助金」で暮らすので無いとすれ
ばかなり厳しいと思われます。理由は「汚染地域に近すぎる」からです。
1例として水系を考えます。上流域の殆どは飯舘村を含む超高汚染地域に含まれます。
④南相馬の農地も運良く3年後に10%に低下したと仮定して、その時点の循環を考えます。
上流域は手のつけようが無い山間部が主です。表層からは沈降しても、浸みだしに寄与
する成分として半分は残るかもしれない?と想定してみます。
これからの3年に加えそれ以降も巨費を投じ続け、数m以上深いところまでの除染を
継続したとしても高汚染地帯からの水系を通じた移行が0.1%でもあれば、減少どころか
増える可能性すらある。そういう地域なのだと思います。
(南相馬市の土地利用割合は以下の資料を参考にしました
http://www.city.minamisoma.lg.jp/mpsdata/web/3012/2syou.pdf)
もともと地下水利用に頼り、地盤沈下が問題になった地域です。ダムや溜め池事業でやっと
維持してきた農域の水が今回汚染されました。チェルノブイリでは地下水への浸透は少な
かった様ですが、多雨であることや地層構造によっては地下水汚染は今後数十年から
数百年のオーダーで続く恐れがあります。
(環境省 全国地盤環境情報ディレクトリ
http://www.env.go.jp/water/jiban/dir_h21/07fukushima/haramachi/detail.html)
高汚染地域の周辺が除染し得るのかどうか?は困難な問題だと思います。その理由は
経済的にも技術的にも不可能に近いからだと思います。除染か?移住か?はいつかは
決断しなければならない問題だと思いますし、その決心は早ければ早い程ダメージは
少ないと考えます。除染を優先するならするでそれなりの根拠とメドは示すべきだろう
と考えます。
※捕捉:「まず測定ありき」という意見も正しいのですが、河川を経由した汚染移行
の程度を判断する為には、それなりの測定精度が必要な様です。
最低でも1Bq/kgの検出感度が必要なことと、泥をどれくらい含むかによって
セシウムの汚染度はかなり違うと思います。水質の濁り具合の基準も定め
何水準かのサンプルを採取する必要がありそうです。
私は「場所によっては除染は難しく、移住を優先せざるを得ない」と思っています。
その理由を記載してみます。
①ベラルーシの農地利用禁止基準55万5千Bq/m^2は1つの参考になります。
農地なので換算係数を100とすると5000Bq/kgであり、農作物への移行係数を1%
と思えば、おおよそ50Bq/kgの(現地の)食品基準を満たすことが期待されます。
ただ日本では(混ぜて薄めればともかく単独で売るには)恐らく10~20Bq/kg以下
が現実的には許容されるレベルで、最終的にその辺りに落ち着くと予想します。
とすると図の6万Bq以上の地域(濃い青)~10万Bq以上の地域(中くらいの青)が
混在する地域がボーダーラインになると思われます。Cs134も合わせると今後数年は
10万~20万Bq/m^2の土壌汚染。農作物は10~20Bq/kgの地域ということになります。
これ以上の地域では農作物を出荷して経済を維持するのは難しいと思われます。
ただし福島から郡山の新幹線・高速道路ルートは農業以外の経済活動もあり、除染を
考えるべき地域かも知れません。費用は(児玉先生のカドミウム汚染の例を引用すれば)
青の楕円内だけで100兆円規模かも知れません。これは農業地域では難しいと思います。
仮に100兆円を50年で原価償却すると無金利でも年間2兆円です。福島全県の農業出荷額
が0.1兆円/年のオーダーなので、それが2.1兆円になるという事です。100円で売ってた
モノを2千100円で売る計算になります。それも「20Bq/kgの汚染を心配しながら」です。
児玉先生に比べればはるかに卑しい考え方ですし、単純な比較はできませんが、
100兆円というのは福島の全県民200万人に均等に配っても1人5千万円です。家族4人に
2億円支給すれば充分に生活を再建できますし、街全体を再建することも可能な予算です。
②(勿論、子供や妊娠可能な女性は避難権利を有する区域だとは思いますが)福島ー郡山の
除染を考えるもう一つの要素として3~4年の間に土壌表面の汚染は10%から20%程度に急速
に低下するのでは?という期待もあります。
斑目委員長ら諸先生方が(8月24日の第64回原子力委員会で14:00から14:15までの
たった15分間の会議で)納得した土壌汚染の減衰カーブは大気核実験の頃の国内調査を
重視していて(現在と比べればですが)非常に微量の汚染、それも蓄積量に比べ有意な量の
「注ぎ足しアリ」のデータです。実際の地下や周辺への移行を遅く評価していると考えます。
・第64回 原子力安全委員会「、、将来の空間線量率の予測について」
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan064/siryo1-1.pdf
・わが国の米、小麦および土壌におけるSr90とCs137濃度の長期モニタリングと変動解析
http://www.affrc.go.jp/agrolib/RN/0000096962.pdf
・チェルノブイリ事故による環境の放射性汚染
http://www.enup2.jp/newpage31.html
チェルノブイリの例も放射性物質は地下に潜ったり拡散しただけで「無くなった」わけでは
ないのですが農作物への移行という意味では初期には急速に低下。その後は周囲や地下
からの循環がバランスし?殆ど一定な状態が続くというモデルを示唆しています。
つまり福島ー郡山ラインの農地は2~3年様子を見ながら生産を続けることで、
現在の1/10程度までは(殆ど自然に)汚染レベルが下がる可能性があると期待します。
理想的には多くが降り注いだ今年は耕作をせず、徹底して放射性物質を取り除く事に集中
すれば将来的な平衡レベルはもっと下げられたかも知れませんが、現実的にはムリでした。
とはいえもしも数年後に農作物が1~2Bq/kgのレベルで安定すれば検査と流通を誤魔化さず、
正直な処置(汚染されていない作物と混ぜ、内訳を公表)をする事で農地としての利用も
可能性があると考えます。つまり生活圏を含めた除染を検討しうる地域だと思います。
③問題は赤のカーブで囲った南相馬を含む「高汚染地域」の近隣です。例えば南相馬市は
人口7万人に対し農業人口2万人です。これから観光や(補助金は無かったとはいえ)
原発関連の就労、消費が無くなるとすると、もし「除染補助金」で暮らすので無いとすれ
ばかなり厳しいと思われます。理由は「汚染地域に近すぎる」からです。
1例として水系を考えます。上流域の殆どは飯舘村を含む超高汚染地域に含まれます。
④南相馬の農地も運良く3年後に10%に低下したと仮定して、その時点の循環を考えます。
上流域は手のつけようが無い山間部が主です。表層からは沈降しても、浸みだしに寄与
する成分として半分は残るかもしれない?と想定してみます。
これからの3年に加えそれ以降も巨費を投じ続け、数m以上深いところまでの除染を
継続したとしても高汚染地帯からの水系を通じた移行が0.1%でもあれば、減少どころか
増える可能性すらある。そういう地域なのだと思います。
(南相馬市の土地利用割合は以下の資料を参考にしました
http://www.city.minamisoma.lg.jp/mpsdata/web/3012/2syou.pdf)
もともと地下水利用に頼り、地盤沈下が問題になった地域です。ダムや溜め池事業でやっと
維持してきた農域の水が今回汚染されました。チェルノブイリでは地下水への浸透は少な
かった様ですが、多雨であることや地層構造によっては地下水汚染は今後数十年から
数百年のオーダーで続く恐れがあります。
(環境省 全国地盤環境情報ディレクトリ
http://www.env.go.jp/water/jiban/dir_h21/07fukushima/haramachi/detail.html)
高汚染地域の周辺が除染し得るのかどうか?は困難な問題だと思います。その理由は
経済的にも技術的にも不可能に近いからだと思います。除染か?移住か?はいつかは
決断しなければならない問題だと思いますし、その決心は早ければ早い程ダメージは
少ないと考えます。除染を優先するならするでそれなりの根拠とメドは示すべきだろう
と考えます。
※捕捉:「まず測定ありき」という意見も正しいのですが、河川を経由した汚染移行
の程度を判断する為には、それなりの測定精度が必要な様です。
最低でも1Bq/kgの検出感度が必要なことと、泥をどれくらい含むかによって
セシウムの汚染度はかなり違うと思います。水質の濁り具合の基準も定め
何水準かのサンプルを採取する必要がありそうです。