問題発見能力と問題解決能力 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

今月の19日にニコニコ生放送で郷原信郎元検事と対談をすることになっているが、まだ司会者が誰なのか、対談のポイントは何なのかについての連絡が来ない。
要するに郷原氏と私を噛み合わせてみよう、というだけのようだ。

同じ弁護士でも郷原氏は自ら政治資金規正法違反事件の捜査指揮をしたこともある刑事畑の人である。
東京地検特捜部にも在籍したことがあるから、検察の中身に詳しいことは当然だ。
検察官時代に検察の在り方について何らかの改革提言を行ったことがあるかについては良く知らないが、現職の検事として法科大学院に特任教授として出向し、そのまま法科大学院の教授になった方だということは何かの機会に知った。

現職の検事が検事の身分のままで法科大学院で教えている、しかも普通の教員以上に司法試験の受験指導に熱心だ、法科大学院が司法試験予備校のような授業をやっていていいのだろうか、などという議論が永田町やマスコミ筋でなされたことがあったが、郷原氏はその渦中にいた人だったようである。

生放送なので何が飛び出してくるか分からないが、郷原氏と私では立場がそもそも違っているのでお互い言い放しになるのだろうと思って、特に準備をするつもりがなかったが、郷原氏がまた時の人になったので先ほど郷原氏のブログを見たところだ。

ずいぶんお忙しい方のようである。

九州電力のやらせメール問題で佐賀県知事や九州電力の社長と激しくバトルをされているようだ。
枝野氏まで口を出すようになっているから、どうやら19日ごろには九州電力やらせメール問題ばかりが取り上げられ、小沢裁判についての関心はグッと落ち込んでいるかも知れない。
ひょっとして郷原氏の獲得競争でマスコミは大童かも知れないので、今回の対談は成立しないかも知れないな、と思い始めているところだ。

まあ仮に今回対談が成立しなくとも、どちらかが逃げたなどと言わないことだ。

郷原氏とは一度村上正邦氏が主宰される「日本の司法を考える会」でお会いしたことがある。
2010年5月19日のことである。
「検察の現状と問題点・改革の方向性」というテーマで講演された。
少し違うなという感想を持ったが、折角の講演に水を注すのはどうかと思い特に私の方からは口を挟まなかったのだが、郷原氏と面識があることは確かである。

私と郷原氏の立脚点の違いは、私が生粋の弁護士だということだ。
調べる立場よりも調べられる立場に、より近い。
調べる側の問題点の認識は足りなくても、調べられる立場からの問題意識はより強い。

自民党の衆議院議員として終始法務委員会に所属しており、政治資金規正法の改正作業の中心メンバーを務めてきたから、立法者サイドの問題意識がある。
これは郷原氏には窺い知れない世界であろう。

大学を卒業してから自治省に入省し、富山県に赴任して選挙管理委員会の職員を務め、市町村選挙管理委員会の選挙事務の指導をしたこともあるから、選挙管理委員会サイドから見た政治の在り方も多少は分かる。
これも多分郷原氏には縁のない世界のはずだ。

何よりも平成7年から政治活動に携わってきたから、政治の現場のことが分かる。
政治資金収支報告書の作成の現場の状況も分かる。
多少の違いはあっても、どこでも似たようなことをやっている。
秘書同志互いに相談しながら、時々はよその事務所の経験豊富なベテラン秘書や党本部の経理の部署にいる職員に教えを乞いながら必死に収支報告書を作っているのが、私には分かる。
どこでもかしこでも使途を明らかにし難い支出は領収書の添付がいらない事務所費で一括して処理していた、ということも知っている。

こういう世界にいたことがない人にとっては、人の話でしか分からないことばかりである。

勿論私が何でも知っている訳ではないが、取り調べる側の立場にたっての問題提起を除けば、私の方が良く知っていることが多いはずだ。
こんな風に立場の違いがあることが分かれば、検察側の問題点の指摘は郷原氏の方がより詳細かつ正確だということがお分かりになるだろう。

しかし、これはあくまで問題点の指摘の範囲であって、解決のための処方箋は違う。

腫瘍があることを見つけたからと言って、直ちにこれを滌除しろということにはならない。
良性か悪性か。
手術に耐えれる健康状態かどうか。
投薬治療や放射線照射という選択はあるのかないのか。
そういった様々な要素を総合勘案して治療方法を決定するのが通常だろう。

郷原氏と私が決定的に違うのは、私が法務大臣政務官として法務行政・司法行政の一翼を担っており、法務行政や司法行政について責任を負う立場にあったということだろう。

郷原氏は、問題発見能力に長けた元検事である。
私は、提起された問題についてこれをどう解決すべきかということを懸命に考え、知恵を出す一人である。

ということで、郷原氏から私がボコボコニされるのを楽しみに待っている人の期待には応えられないかも知れない、ということを予めお断りしておく。