新年の挨拶にかえて/2012年の選択 | イージー・ゴーイング 山川健一

新年の挨拶にかえて/2012年の選択

 地球は今ひどいことになっている。進化史上の鬼子とも言うべき人類によって、貪りつくされようとしている。
 その張本人の人類もまたひどい有様になっている。
 何百万人もの人々が想像を絶する貧困の中で生活している。戦争という名の殺し合いがこの地上から消えることはない。新冷戦なんて嘘だ。自由主義や社会主義といった思想は死に、そこにあるのは資源の奪い合いだけではないか。
 だが、人類がこの不公正な富の分配を維持しつづけるのはとうてい不可能だろう。
 もはや人類は、欲望の赴くままにこの過剰な消費生活を持続させていくことなどできないのである。
 経済成長に限界があることも明らかになった。
 現在のあらゆるシステムは、ぼくらの貪欲なまでの欲望によって成立しているように見える。繰り返すが、そんなものをこれ以上維持していくのは不可能なのだ。
 2012年は大切な契機である。
 今こそ、ぼくらは変わらなければならない。人間は知恵を持っている。ぼくら全員が「知覚の扉」を開く者であるはずだ。だとしたら、変化を起こすことは可能なはずだ。そして一つの小さな変化は、ゼロ・ポイント・フィールドを通じて、世界の全体へ、宇宙のすみずみにまで伝わっていくはずだ。
 誰も飢えることがない世界。
 医療を必要とするすべての人が医療を受けることができる世界。
 高齢者が疎外されない社会。
 きれいな空気を吸い、安全な水を飲むことができる毎日。
 この地球から収奪するのではなく、母なる地球と共生する暮らし。
 人生とは努力によって切り拓かれる他人との競争であり、凄まじい苦闘であるという考え方がある。人間は子供の頃から競争原理によって支配されているのだ。
 だがじつは、それは、なんだかんだと物質的に豊かなままでいたい一部の人々が仕組んだまやかしにすぎない。ぼくらは全体の部分であり、あなたという一人の人間には宇宙の全体が宿っている。
 量子の海においては、ぼくらに境界はない。他の人々も生きることができるような方法でしか、ぼくらは幸福になることなどできないのだ。
 ぼくらは変わらなければならない。
 しかも、今すぐに。
 2012年に何が起きるのか、ぼくにはよくわからない。たった一つだけはっきりしているのは、その前にぼくら一人ひとりが重要な選択しなければならないということだ。それは大きな選択にちがいないが、じつは毎日のあらゆる場面における些細な選択の連続なのだろうと思う。
 そんな小さな選択を重ねていくあなたの毎日は、本来的な幸福に包まれるにちがいない。そしてその幸福はまず周囲の人々に、そしてやがては宇宙の全体に伝わるにちがいないのだ。反対にひどく投げやりな気持ちや態度も、ホログラムとして宇宙に記録されてしまう。
 詩人でありロッカーでもあるジム・キャロルが十代の頃の日記(『マンハッタン少年日記 』)に記した言葉を思い出そう。ドラッグと盗みと売春とバスケットボールに明け暮れる少年が、こう言うのである。
「純粋になりたい──」
 やはりあきらめてはならないのだと思う。

『リアルファンタジア/2012年以降の世界』(2008年アメーバブックス新社刊)「エピローグ」より

リアルファンタジア 2012年以降の世界/山川 健一
¥1,470
Amazon.co.jp