福田・麻生氏演説つまみ食い ブーメラン野田首相

 ある意味、異例の演説だったといえる。

 「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論を出し、国政を動かしていくことこそ国民に対する政治の責任だ」

 演説の序盤、首相は力強く宣言したが、続けて「これは4年前、当時の福田(康夫)首相がこの演壇から与野党に訴えかけられた施政方針演説の一節です」と種明かしした。

 首相が「政治生命をかける」とまで言い切る社会保障と税の一体改革。その話し合いに野党も応じてほしいという誘い水に、野党・自民党の元首相の言葉を用いた。

 しかし、当の福田氏は「あのころを思い出すと、(民主党は)むちゃくちゃひどかったね。話し合うどころじゃなくて、すべて拒否された。反対、反対でね」と4年前を振り返った。首相の演説は、まさに「我田引水」だ。

 首相は麻生太郎元首相の「持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要だ」という言葉も引いたが、麻生氏の反応もつれなかった。

 「いいとこ取りされて残念だ。拳闘用語でクリンチというんだが、抱きつかれているような感じだな」

 野党に抱きつこうとした異例の演説は、逆効果だったかもしれない。


政権凋落の鬼門

 そもそも最近の政権にとって、施政方針演説は鬼門といえる。

 「いのちを守りたい。いのちを守りたいと、願うのです」

 こんな印象的なフレーズで本会議場を大いにわかせた鳩山由紀夫氏はその後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で発言を二転三転させ、約4カ月後に退陣。普天間問題の迷走で、日本人の命を守るための根幹といえる日米同盟は大きく揺らいだ。

 後を受けた菅直人氏は「最小不幸社会の実現」や「不条理をただす政治」を掲げた。しかし、その後起きた東日本大震災と原発事故への対応で、国民の「不幸」を招き、退陣表明から3カ月も政権の座に居座り続けて「政治の不条理」をまざまざと見せつけた。皮肉としかいいようがない。

 自民党政権でも、首相の施政方針が実現したケースはまれだ。「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えた安倍晋三氏は志半ばで退陣。「どんな困難があろうともあきらめず」と誓った福田氏は内閣総辞職。麻生太郎氏は消費税増税を含む税制抜本改革に意欲を示したが、衆院選敗北で政権交代を招いた。

ブーメラン

 こうした過去の失敗に学ぼうとしたのか。今回の野田首相の演説は、自民党の元首相の言葉を引用することで、その責任の一端を野党に押しつけようという意図が見え隠れする。


 さらに、自民党の過去の主張を、政策実現のテコにしようとしがちな民主党政権の特質も現れている。

 菅氏は昨年1月の施政方針演説で「自公政権下で設置された安心社会実現会議は社会保障給付と負担の在り方について『与野党が党派を超えて討議と合意形成を進めるべき』と提言した」と指摘し、与野党協議への参加を呼びかけた。

 ただ、他者への攻撃が必ず自分にはねかえってくる「ブーメラン名人」と評された菅氏。民主党も野党時代には、社会保障や消費税をめぐる与野党協議から逃げてきた経緯がある。

 ここにきて、ネット上では野田首相の“ブーメラン疑惑”が話題となっている。平成21年の衆院選の応援演説で、首相はこう語っている。

 「マニフェストは書いてあることは命がけで実行し、書いていないことはやらないのがルール。書いてあったことは何にもやらず、書いてないことは平気でやるのではマニフェストを語る資格がない」

 民主党マニフェストには「消費税増税」とは書かれていない。首相が3年前に放ったブーメランが、今国会中に首相に命中するかもしれない。


引用元:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120125/plc12012500270000-n1.htm


 自分に都合のいい所だけを選んでしゃべられたのではたまらない。口ひげ?いや、口先首相、ここにありでした。首相の話を信じる国民がどのくらいいるのか知りたいものである。