さて、今4号機がアツいです。いろんな意味で。

地震が来ると、「嫌な揺れだったな」の前に「4号機は?4号機は大丈夫?」というツィートがTLを埋め尽くすという異常な状態に。
それもこれも、4号機に関する情報がいろいろと飛び交っているからです※1。
その中身は玉石混合。というか多くが「石」なんですけど。

でも、本気でビビッている人も多いようなので、4号機周辺で飛び交っている噂のポイントだけまとめてみましょうか。

軽くQA形式で。急いでまとめたので乱筆乱文失礼。




Q1:福島で1月に入って放出されたセシウムが大量に降下したって本当?
A1:はい。
福島県の観測地点(福島駅近く)で、定時降下物が1月2日に増大したことは間違いありません。
定時降下物、というのは1日の間に観測地点に降り積もった放射性物質の量を測定したものです。



Q2:その放射性物質というのは福島第一の4号機から放出されたものなの?
A2:いいえ。
東京電力は異常は観測されていないと発表しています。
が、それだけでは信用できないという人もいるでしょうからもう一つ。
各地のモニタリングポストでは、空間放射線の増加は認められていません。
モニタリングポストというのは高いところに設置して、大気中に放出された放射線源をいち早く観測するためのものです。ここが全く反応していません。彼らに見つからずにこっそりと福島の観測地点に降り注ぐ、という事はちょっと考えられません。
従って、4号機はもちろん、福島第一原発から新たに大量に放射線源が放出されたとは思えないのです。



Q3:じゃあ、北朝鮮の原発事故のせい?
Q3:いいえ。
北朝鮮の事故は単なるデマのようです(仕手筋の流した流言飛語といううわさも)。
今のところ、福島で観測された降下物は新たに放出されたものではなく、周囲に降り積もったセシウムなんかが風で巻き上げられて再び降ってきたという説が濃厚です。



Q4:でも4号機から汚染水が漏れているんでしょう?
A4:いいえ。
もともと漏れている、という議論はありますが、ここでは新たに4号機から漏れ出している、という点に絞ると、今のところそういう情報はありません。
4号機のスキマサージタンクの水位低下が早くなった、という初期報道をもとに「漏れ出している」と判断した人もいたようですが、その後の東電の発表では、スキマサージタンクへ流れ込む部分の高さが地震の影響で変わったため、流れ込む量が減った、との事です。
 東電はまた隠ぺいしている、真実を語れ、と主張する人もいますが、本当に隠ぺいする気ならば、そもそもスキマサージタンクの件自体を公表しないのではないでしょうか。



Q5:でも、東京などでも線量値が増加している?
A5:ツィッターなどでは個人がガイガーカウンタなどで測定したそういうつぶやきも散見されますが、大半が誤差や自然変異の範疇です。「上昇はみられない」というツィートも多くあります。
この手のツィートはなにかあるごとに発信されています。
従って、東京での線量増大は起きていないとみていいでしょう(局所を除く)。
それでも不安な方は「環境防災Nネット」などを見てください。



Q6:そんなこと言っても双葉町山田の空間放射線量は過去の200倍以上のすごい値を示している!
A6:いいえいいえ。
これ、時折蒸し返されるネタなのですが、あるページに記載されている「過去最大値」を勘違いしてしまうのです。ここに書いてある「過去最大値」は震災前の最大値なのです。今現在、この町の線量は決して増えていません。むしろ漸減しています。
しかし、確かに誤解しやすいんだよなあ、この表記。。。。



Q7:しかし京大の小出助教は、4号機は危険だ、逃げる準備をしろと言ったはずだが?
A7:限定的にいいえ。
確かに小出氏が4号機の構造的リスクと最悪の事態を語っていますが、これは今起きている状況を話しているわけではありません。
4号機プールが倒壊する可能性があり、その際には制御不能になるから脱出しろと言っているのです。
リスクに備えて避難準備をしておくのはいいかもしれませんが、小出氏が「今すぐ逃げろ」と言っているわけではありません。



Q8:元旦の地震で4号機冷却プールが空焚きになった?
A8:いいえ。
いまネットで話題になっている「ぬまゆ」さんのblogで「作業員からの情報」として「元旦の地震で4号機プールの水が流出し空焚き状態になった」という情報が掲載されています。
しかし、この元ネタの初出は2ちゃんねるの掲示板に書かれていた内容です。
2ちゃんねるだから信用できない、というわけではありませんが、情報源はここしかありませんので、おそらくデマと思っていいでしょう。大体「空焚き」という表現からしてあまり知識のない人の発言では、と。少なくともそれを裏付けるようなデータはどこにもありません。
そんなことがあったら、計測機器に捕まえられています。



Q9:いやいや、さらに現地作業員の情報では4号機は崩壊寸前であと一か月もつかどうからしいが?
Q9:いいえ。
これも「ぬまゆ」さんのblogが発信源です。
「4号機建屋使用済み燃料プール下のコンクリートが剥がれて、下にドス-ン、ドスーンと落ちている。あと1ヶ月もつかどうか」という「情報提供者」からの情報が書き込まれてRTされまくったのですが。
この文章見たことあるなあ、と調べてみたら、「カレイドスコープ」というblogが初出のようでした。というか、「ぬまゆ」氏のblogはこのblogの丸ごとコピペでした。
この元ネタ、実は昨年6月に書かれたものです。それから半年以上経過していますが、少なくとも倒壊はしていません。

<追記>「ぬまゆ」さんが誤情報を作っている、というのではありません。「ぬまゆ」さんは、あくまで情報提供してきた人のコメントをそのまま掲載しているだけです。誤解を招く可能性があると思い追記しました。


Q10:しかしふくいちライブカメラの情報がおかしい!なにかが隠ぺいされている!
A10:いいえ(苦笑)。
ふくいちライブカメラに関しては、定期的に「大変なことが!」と拡散されています。
今回は
・元旦以降、激しい光が4号機で明滅している→それ以前から作業用の照明と思われるものがずっと映っています。録画されたライブは20倍速で再生されているので激しく明滅しているように見える
・黒煙が上がっている→それ以前から発生している水蒸気と思われるもの
・クレーンが途中で切れている。CGだ!→よく見れば背景に同化して見えにくくなっているだけどわかります
という感じで、特に問題は見受けられません。
というか、本当にふくいちライブカメラのネタは定期的に上がってきていますが、まともな「情報」があったためしはありません。



Q11:じゃあ、4号機の事は心配しなくていいの?
A11:いいえ。
4号機が構造的なリスクを抱えていることは間違いありません。
Q4で書いたスキマサージタンクの問題。これは元旦の震度4の地震で構造にゆがみが出来て高さが変わったもの。即ち「たったの」震度4で影響を受けるような状況になっているのです。
ただし、そのリスクが大きいのか小さいのかは、今の僕の知識と情報では判断できません。
小出助教などはそのリスクを過大に見ているように思えますし、東電発表は過少評価のようにも思えます。
しかし、東電は補強工事もしていますし、なんとか事なきを得られるように頑張っています。可能な部分に関しては非破壊検査などで強度を測定したりもしているでしょう。
なにかツィッター民には「もうすぐ崩壊するのはわかっているのに隠ぺいしている」と主張する人がいます。
いったいそれに何の意味があるのでしょうか?
隠ぺいして後で苦しむのは東電そのものなのです。
「ひょっとしたら危険かも」という状況を「まあ、見なかったことにしよう。騒ぎになるし滅多な事はないだろう」と隠ぺいするのはまだ理解できますが、確実に危険な状況にあれば発表・対策をするはずです。
少なくとも、4号機が「崩壊するにきまっている」という人の大半が、上のような怪しげな情報を鵜呑みにしている人たちです。
注意深く見ていく必要がありますが、ちょっとした地震の度に、
「4号機ちゃんは、4号機ちゃんは息をしているの?!」
とあわてるほどのリスクはないと僕は思っています。


※1:リアルタイム検索で「4号機」を見ると、上記のような誤認識を含めた情報がたくさん検索されますが、その中に交じって時折「4号機は爆発したのになあ」というツィートが見られます。
はい、パチスロ4号機の話題でした。