ソーシャル美人の時代・・・坂之上洋子さんという人 | 白河桃子オフィシャルブログPowered by Ameba

ソーシャル美人の時代・・・坂之上洋子さんという人

ソーシャル美人の時代・・・坂之上洋子さんという人

 毎年「今年あった注目の女性」を年頭のご挨拶ブログで書いています。その人が後々WOMAN OF THE YEARを取ったりすると、「私昔から注目していたんです」と密かな喜びにひたります。その女性たちを選ぶポイントは「日本のために必要な人」です。

 2011年度、私が出会ったもっとも素敵な女性は、坂之上洋子さん。女子高生から国会議員まで、あらゆる女性を取材してきた私にとっても、なぜ、今までこの人に出会わなかったのか・・・と思うほどインパクトがありました。

 それでは、どんなところがすごいのか?

 彼女の周りでは常に早いスピードで物事が実現していくのです。それも良い方向へ。近年閉塞感の漂う日本。「どうせ、何をしても良くならない」と諦めてしまいがちな人が多いはず。風通しが良くて、物事が動いていく場所だから、彼女の周りには「協力したい」という人が集まります。

 例えば昨年11月24日、東京タワーが紫色にライトアップされたことを知っていますか? 点灯式で始まった3年で世界のポリオを撲滅させるためにイベント「世界ポリオデー2011」チャリティレセプション、記者会見などの企画を裏方として仕切ったのが洋子さん。ビルゲイツ財団のJIGH(日本グローバルヘルス協会)でチーフストラテジストという役職名です。資金集めのオークションにはAKBも協力し、ロンブーの敦さんもノーギャラで記者会見に出席しました。(現在ポリオがインドで発症ゼロという知らせが! あとはナイジェリアとパキスタンなど、もう少し)

 そんな大きなプロジェクトをやっているかと思えば、突然「児童買春問題を何とかしたい」と六本木ヒルズで子供服を集めたバザーを開く。売られるのは寄付してもらった女の子の服。ブランド服もあります。幸せな女児の服を買うことで、誰にも恵まれない女の子のことを考えてほしいという狙いもあります。「小さなことでも動いていけば何かが変わる」と彼女は言います。

 そして年末に開かれた「モザンビークの子供たち」のための寄付パーティは、なんと「女子が男子をオークションする」という、前代未聞の企画。
「チャリティはウィンウィン。寄付するほうも楽しくないとダメ」とは洋子さんの持論。

 洋子さんに頼まれたらイヤとは言えないIT社長や、アナウンサーに内定している大学生など、正真正銘独身彼女なしの男子たちが「デートプラン」を提出し、それに無記名で女子が入札する。パーティは大いに盛り上がり、寄付も集まりました。

 あっという間に人を動かし、世の中を動かしていく彼女の魔法は何なのか? 

 もともとアメリカでは建築デザイナーとしてすごい賞を取り、ニューズウィークの「日本の女性100人」に選ばれたほどの人。IT企業の経営者でもあった実力の持ち主。今の仕事はブランド戦略コンサルタントで、政界にも経済界にも人脈もある。ただ、それだけじゃないんです。彼女のパワーを何倍にも増幅するのはソーシャルネットワークの力です。

 洋子さんにはツイッターのフォロワーが一万人以上います。彼女のつぶやきが秒速で「リツイート1位」になることが多い。

 彼女がツイッターでつぶやく言葉はとても力がある。体験と体から発せられた言葉は人を動かします。それをまとめた「結婚のずっと前」という写真とツイッターの言葉のコラボレーションの本は、宣伝もしないのに5刷を重ねています。

 そして、その一万人はただの一万人ではない。ある人が分析したところによると、その一万人は社会起業家などを含めた一人ひとりが影響力のある一万人。だから洋子さんの影響力は日本でもかなり上位なのだとか。良質なフォロワーを一万人持つと、どんなことができるのか? 

 その例が、去年の12月8日にオープンした、外遊びができない福島の子供たちのために郡山市「ふくしまインドアパーク」。この開業までには洋子さんとツイッターのパワーを感じさせる裏話がありました。

 NPO法人フローレンスの代表、駒崎弘樹さんが洋子さんに「福島でインドアパークを作りたい。良い土地が西友内にあるんだけど、誰か西友の人を知らない?」と、お茶飲み話のときにふと相談したそうです。洋子さんがツイッターで「誰か西友の人知らない?」とつぶやいたところ、「副社長を知っています」という人が名乗り出て・・・突破口が開け、12月8日、インドアパークは無事オープン。3カ月で3000人の子供たちが遊ぶ場所となりました。

 詳しくは洋子さんのブログを参照してほしいのですが、この話はまさに「ソーシャルパワー」。それもマイナスではなくプラスの方向へのソーシャルパワーの実例です。

 「お礼を言いたいんだけれど、その間に入ってくれた人が未だに名前もわからないんだよね」と洋子さん。うーん、こんなところも洋子さんらしい。

 誰もが善意で善意のために動く。私欲がないからこそ、成立する魔法。
 その中心にいるのが洋子さんという人なのです。

 なぜ、彼女の周りには無償で彼女のやることに協力する人たちが集まるのか? 
それは彼女に「私心」がないからだと思います。

「もう、毎月必要なお金は決まっている。家族が食べられて、一枚洋服が変えて、お友達とたまにおいしいご飯が食べられたらいい」と彼女は言います。人生のある時点から「必要なお金だけを稼いだら、その他は社会貢献に関わることだけをやっていこう」と決めたそうです。

 若い社会起業家に無償でアドバイスをしているうちに、どんどん「社会を変える」大きなプロジェクトが向うからやってくるようになったのです。

 でも彼女には私心はないけれど、「正義と志」がある。そして、なかなかどうしてしたたかな戦略家でもある。アメリカにいたとき、まだ無名だったオバマを応援しながら、ずっとその戦略を見てきて、「そうか、世の中はこうやって動くのだ」と勉強していたそうです。

 女は正義漢で現実主義者。四の五の言う前に、小さなことから、どんどん実行してしまう・・・私が常々思っている、働く女性の良いところを、まさに体現したような人です。

 ある朝、彼女の新しいプロジェクトの朝食ミーティングが開かれました。アンティークの家具に、庭のあるヴィンテージマンション。おいしいパンにフランスの蜂蜜。もともとインテリアのプロである彼女のテーブルセッティングもあいまって、女性誌に載る「ステキな朝ごはん」を絵に描いたよう。

 でも、ミーティングの内容は「放射能や原発」に関わる深刻な問題。メンバーには国会議員もいます。

「いつか、この光景を歴史の始まる一ページとして思い起こすことがあるかもしれないな」とふと思いました。

 社会貢献とは良いことをやるだけでなく、ある種の革命なのだと言う人がいます。「こんな平和な主婦の食卓から、社会は変わるのだ」と洋子さんといると信じられる。

 日経新聞で年頭からC世代という連載が始まっています。東日本大震災以来目立つ、20代30代の動きを追っています。この世代のリーダーたちの特徴は「社会貢献」と「ソーシャルネットワーク」。そして、女性たちも多い。ホリエモンの頃は「お金をガツガツ儲けること」がカッコよかったのに、今の20代は「社会貢献することがカッコいい」と思っている。そして、女性たちも「お金儲け」ではなく「良いことをする」ためなら、参戦したいと思っています。

 次世代をけん引する20代のリーダー女子たちは、「社会貢献」を志向し、ツイッターのフォロワーを千人以上持っていることが条件と、あるマーケッターの人が言っていました。この女子たちの中から、第二、第三の洋子さんが出てくるに違いない。「ソーシャル美人」の時代が来ているのだと思います。


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