おススメ記事 HS政経塾 川辺賢一氏ブログ「日銀もインフレターゲットを導入せよ」 | 加納有輝彦
テーマ:ブログいま、僭越ながらHRPニュースファイル(党発行のニュースレター)を週一のペースでしばらく執筆させて頂いています。
先日、
[HRPニュースファイル165]FRBの「インフレ目標」導入であらわになる「日銀の無策無能」を書かさせて頂きました。
FRBのバーナンキ議長がインフレ目標を導入した事と対比させて、日銀白川総裁の無策を批判した内容でした。
本来は、提供すべき内容を、字数の制限もあり、やむなくカットする事もしばしばございます。
特に今回の内容は、日本ではガラパゴスと言われているリフレ派(インフレ派)の意見を採用していましたので、反リフレ派からすれば「トンデモ・ニュースファイル」ってことになるでしょう。
特に、ネットで積極的に発信し、人気もある池田信夫氏などは、盛んに「リフレ派の敗走」「リフレ派の誤謬」とリフレ論はもはやガラパゴス理論であると喧伝されてきました。
リフレ政策(金融緩和、インフレターゲット等)は、まともな学者は相手にしないというのです。ゆえに、池田氏の三橋貴明氏への態度などみていますと、憎悪に満ちているといっていいくらいの勢いです。
そのような反リフレ派に対してある程度配慮、意識した論点を盛り込むべきだったと思いますが、字数の制限で、やむを得ず捨象しました。
そこで、是非、皆さまにお読み頂きたい、ブログがございます。
HS政経塾の川辺賢一氏のブログです。
バーナンキがインフレ目標を導入した事の、歴史的意味合い、インパクトが、過去の経緯(リフレ派VS反リフレ派)などの情報と共に、よく理解できます。
そういった歴史的経緯を踏まえたうえで、それでもやはり、日銀のインフレターゲットの採用は必要であると結論付けています。
皆さまの教養の一助にもなるブログです。
以下に、紹介させて頂きます。『日銀もインフレターゲットを導入せよ』 川辺賢一ニュースより
米連邦準備制度理事会(FRB )のバーナンキ議長は25日、インフレ率の数値目標を設定することで、FRBの透明性向上という自らの遺産を発展させ、FRB議長としての主要な目的の一つを達成した。
連邦公開市場委員会(FOMC)は、個人消費支出(PCE)価格指数の年間上昇率を2%に維持するインフレ目標を導入すると表明。バーナンキ議長は2006年の就任後、何年も進めてきた議論に結論を出した。05年の指名公聴会以降、バーナンキ議長はインフレ目標が政策決定をめぐる長期的な期待をしっかりと固定し、「一般国民の不安」を抑える効果があると主張してきた。
バーナンキ議長は25日の記者会見で、「政策の透明性の重要な側面は、その目標が明確になることだ。この2%という長期的なインフレ目標を一般国民にはっきりと伝えることが、物価安定を促進し、長期金利の抑制に寄与するはずだ」と強調した。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LYE66B07SXKX01.html
引用終了
ついにFRBも2%程度のインフレ・ターゲット、物価上昇率目標を設定することになりましたね。
バーナンキはプリンストン大学教授の時代から、大恐慌研究家、そして90年代から今に続く日本の大停滞の研究家として広く知られておりました。
また、かねてから日銀の引締め的な政策を批判しておりました。2001年から行われた日本の量的緩和に関しても、規模が不十分だとして批判しております。
同じくプリンストン大学のポール・クルーグマン教授と共にかねてからインフレ・ターゲット、インタゲよりも強力な物価目標の設定を日本に対して、またアメリカに対して提唱しておりました。
しかし、2008年のリーマン・ショック後、アメリカも日本と同じくデフレの罠に陥りそうになりました。巨大な流動性供給によってデフレは避けたものの、失業率は高止まりしたまま、なかなかITバブル後の景気回復のようにはなりませんでした。
そのような中で、バーナンキの「金融政策は万能ではない」という発言やQE3の見送り、またクルーグマンの「日本に誤らないといけないといけない」という発言が日本でもさまざまな憶測を呼び、「あれだけ日銀の政策を批判していた2人も弱気になっている」「結局、日本で90年代から00年代にかけて盛んに行われたデフレ論争と同じ結論に落ち着くのではないか」というような評論が広がっておりました。
日本のバブル崩壊後のデフレ論争、金融政策論争とは、簡単に言えばデフレ不況の責任は日銀にあるという主張と、そうではないという主張の対決です。
日銀の責任ではないという主張は次のようなものです。不況の原因は先進国がどこも陥る長期停滞、イノベーションが起こらないこと、人口低下していること、将来の成長期待が低いことなど構造的要因にあるとします。
実際、日銀は確かに非伝統的な金融政策、量的緩和を行い、バランス・シートを拡張させ、マネーを発行してきました。
しかし、結局、マネーというのは民間銀行が企業に貸し出しをしなければ、膨張しないため、つまり信用創造が起こらないため、デフレは解決されませんでした。
つまり、問題は投資需要の低さ、資金を欲して新しい投資を行おうとする企業が少ないことが問題であるという主張です。
では、どうしたらよいのか。
彼らは第一に、そもそも政府や日銀の政策に期待するのが間違いであると言います。
次にやることがあるとすれば、規制緩和、自由化などの構造改革が必要であると主張します。そのためには、倒産すべき企業が倒産し、新たなイノベーションを起こす企業が出てくるようにすべきだと主張します。ですから、今、デフレ不況なのは、遠い将来のイノベーションのために必要なんだと考えます。
それをしないで日銀がより巨大な金融緩和を行い続ければ、悪性インフレが来るだけだと言います。
つまり、マネーが本当に必要な新たなイノベーションを起こすような企業に行かず、本来は潰れるべき企業にマネーが流れて単なる延命措置になり、投機的な商品、資源、あるいは国債などに流れ、バブルになって、はじけるのが落ちだと考えます。
またヴィクセルの理論を持ち出して、インフレにすると、結局、金利が上がるので投資も増えないと主張します。
彼らの意見はそもそも日銀がマネーを刷っても企業の投資需要が増えず、民間銀行が貸出を増やし、信用創造を行わなければデフレは脱却できない、つまり人工的にインフレにすることはそもそも無理だという主張と、日銀が刷り続ければインフレにはなるかもしれないが、インフレは止めるのが難しくて大インフレになるとか、投機的な商品や資源価格を高騰させるだけの悪性インフレにしかならないという主張です。要するに甘い考えは持つな、ということですね。
竹中平蔵氏や池田信夫氏、日銀の白川総裁などが代表的な論者です。
それに対して、バーナンキやクルーグマンは日本の長期的停滞は、あくまでも日銀の金融緩和が甘いからだと主張してきました。
日本でも若田部昌澄氏、高橋洋一氏、岩田規久男氏などは日銀批判の急先鋒です。
彼らは規制緩和などのように市場の力を引き出してイノベーションが起こりやすい環境をつくること自体には賛成です(市場の力を引き出すことに反対するのはマル経学者くらいだ)。
イノベーションはいつでもどこでも必要であることは認めるものの、90年代日本の長期停滞の原因はあくまでも日銀であるという主張です。
あるいは、企業の投資需要が低いのは、構造改革によって解決するのではなく、経済をインフレ傾向にすることによって解決できるとします。
つまり物価を上昇させ、お金の価値が下がっていくことで消費や投資も増えるということです。
また、いくらマネーを刷ってもインフレにならないと主張する人たちに対しては、もし日銀がインフレにならないのであれば、いくらでもお金を刷って公共事業をすることができるし、無税国家だって実現できると言います。しかし、実際はそうならない、そうなる前にインフレが実現できると考えます。これはバーナンキの背理法とか、ヘリコプターマネーとか言われております。ちなみに『一般理論』で流動性の罠(金融政策が無効になる状態)を考察したケインズも、同じことを言っております。
またウィクセルの理論を引き合いに、インフレは金利を上昇させるために企業の投資には影響を与えないと主張する人たちもおりますが、インフレ目標というのは、大恐慌期においてウィクセルの弟子たちによって世界で最初に導入されたものです。当初はインフレを抑えるために、導入されたインフレ・ターゲットですが、大恐慌期においてはデフレと闘うための目標になったと言われます。結果、スウェーデンは他の国々と比べて大恐慌から割と早く抜け出せることができました。
こういった論争の結果、日本の現状では、デフレ不況は日銀の責任ではないとする人たちが、政策運営にあたっております(日銀はそもそも自分たちの責任を認めないので、必ずしも論争の結果ではないが)。
アメリカでも日本と同じような論争が行われ、日本とは逆にバーナンキのような金融政策を重視する立場の人物が政策運営を行っております。
そういった中で、そのバーナンキですらQE3を見送り、「金融政策は万能ではない」などと発言したことで、日銀を擁護する人たちは、バーナンキも考え方が変わったのだと流布しておりました。
彼らは、これがグローバル・スタンダードだと言い、リフレ派(日銀批判)は「ガラパコス経済学」だと言っておりました。
そんな折にバーナンキがかねてからの主張であった2%程度のインフレ・ターゲットを導入したわけです。
一体、どちらがガパゴスなのでしょうか。
確かにバーナンキが言った通り、金融政策は万能ではありません。シュンペーターが言ったように、経済を成長させるのは民間企業のイノベーションだからです。そしてイノベーションというのは経済政策によって起こりやす環境をつくることはできても、起こすことはできません。
しかし、金融政策が全く無効であるというのも間違いであるし、インフレ傾向の経済環境は投資と消費を増やし、企業家のイノベーションを促進させるはずです。
さらに財政政策と組み合わせ、インフラ整備は新産業につながる開発投資にお金を使うことで、政府が経済成長を牽引することもできるはずです。
これは別に新しい考えではありません。若田部昌澄氏曰く、90年代以降の経済学の合意事項であり、インフレ・ターゲットは90年代以降のマクロ経済学の政策的帰結です。
世界的に読まれているマクロ経済学の教科書の著者たち、グレゴリー・マンキューやブランシャール、スタンリー・フィッシャーなども(クルーグマンはもちろん)インフレ・ターゲットを提唱しております。
そろそろ日銀もガラパコス経済学から脱却すべきなのではないでしょうか。
日本はアメリカとは異なり、90年代後半から(つまり、消費増税の後くらいから!)デフレが定着しております。
2%では不十分、3%や4%のインフレ・ターゲットが必要です。元祖インタゲ論者のクルーグマンは日本は4%のインタゲを15年続けろと言っております。
消費増税などせず、まずデフレを止めよ!インフレを起こせと主張して参りたいと思います。
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