昨日から新学期が始まった地域もあったようです。

甲子園が終わり、夏休みが終わるとなんだか夏まで終わってしまうようで寂しいですね


中学生は殆どのチームが新チームとしてスタートを切っています。日頃、コビーズで自主トレを行なっているベースボールスクールの生徒さん達も、それぞれ良いスタートを切ったようです。


さて、今日は野球文化のお話しを。


僕(小林亮寛)も若い頃、陥ってしまった「空回り思考」についてです。


実はPL学園から千葉ロッテマリーンズに入団した頃にハマってしまった落とし穴があります。


それは、「練習」「ゲーム」と言う考え方。


?????って感じですよね。

実は日本の多くの人がこの流れで野球に取り組んでいるので特に違和感は感じないと思います。




僕は2006年、アメリカに渡って独立リーグでプレーし気付きました。ロッテ時代に「上手くいかなかった理由」が。


子どもの頃から野球が大好きで、弟や友達といつも野球をして遊んでいました。対戦をします。ゴムボールをカラーバットで打って。「

江川のカーブ」「東尾のシュート」「落合の神主打法」など、プロ野球選手のモノマネをしながらゲームを楽しんでいました。小学校も中学校もレギュラーとしてゲームを沢山経験して最高に楽しい時間を過ごしました。


しかし、高校に入り大きな故障をして一年半を棒に振り最後の夏にやっと間に合いましたが、甲子園出場はならず。高校ではあまり試合経験を積むことが出来ませんでした。それでも、潜在脳力を買われマリーンズにドラフト6位で指名され入団します。


更にそこから5年間、高卒下位指名の故障持ち選手はなかなか安定した試合出場の機会が貰えず5年で退団しました。


この5年間、試合に出たくて出たくてたまりませんでした。しかし、上手くいきませんでした。

この頃の僕の思考は「試合に出るためには練習でアピールしなくちゃ!」でした。


昼もブルペンで投げ込みをし、ランニングメニューも人よりも多く走り、夜も夜間練習でシャドーピッチングをする毎日。コーチの言うことは何でも聞いて、兎に角練習でアピールする。プルペンでのコントロールや変化球のキレなどをアピール。出来るアピールは何でもやったつもりです。しかし、たまに出してもらった試合では試合感もなく、結果を出したいと言う気持ちが焦りになり良い結果を残せませんでした。


しかし2006年、アメリカでのテストで驚かされました。数週間、数試合を掛けて選手の評価をするショーケースと呼ばれる方法が取られていたからです。ブルペンで投げたり、フリーバッティングを見たり、1試合だけをしてテストをする12球団合同トライアウトのような日本のやり方とは随分と違いを感じました。


数試合を戦う中で、打力・走力・投手力・守備力だけでなく、野球選手としての順応力・適応脳力・観察力・洞察力・学習脳力・チームワークを見定めるのです。


つまり、「試合の中でしか選手の評価はできない」と言う考えです。しかも、それはアメリカ野球の歴史の中で常識とされ文化として定着していました。


練習や1試合程度でゲームで選手を評価するのは正しいやり方でないと感じさせられました。



僕はそれまで

「シュート回転しないように」

「肘が下がらないように」

「クイックは速く」

「コントロールはコーナーに丁寧に」

「変化球はこう言う軌道じゃないとダメ」

「初球を打たれちゃダメだ」

「先頭打者に四球はダメだ」

などなど

そんな事ばかり気にして練習をしていました。


しかし、気にしていたことの評価は誰もしませんでした。逆に、

ボールは動いた方が打ちにくいじゃん。

フォームが個性的な方が良いじゃん。

走られても点を取られなければ良いじゃん。

と、言われ目からウロコ。


実際に無茶苦茶なフォームでも抑える投手がゴロゴロいて、、、自分はこれまで何をやって来たんだろうとカルチャーショックをうけました。


アメリカでは練習で評価されないと試合に出られないと言う概念はなく、ゲームを戦う中で見つけた自分の長所を伸ばし、短所を減らす、若しくは誰かにカバーしてもらう、と言う文化が長い歴史の中で出来上がっていたのです。


「練習」「ゲーム」ではなく「ゲーム」「復習」です。


たとえ、ブルペンでどんなに綺麗なフォームで投げようが、コントロールが良かろうが評価のしようがなく、逆に無茶苦茶なフォームでも抑えて壊れなければ評価をされます。つまり、良い結果が出ていると言うことは選手の中で正しい方程式ができているという事であり、他人がその方程式を壊すことはあってはならないのです。


日本では「その投げ方だと故障をするからもっと肘をあげなさい」と言った指導を耳にしますまぁ、心配して言ってくれてるのは分かるんですが要注意です。


実際に僕も、そんな指導を真に受け、フォーム修正をし、イップスにまで落ちていった経験があります。なぜそこまで改悪してしまったかと言うと


そのフォームが正しいのか?は実際にプレッシャーが掛かる試合で投げていかないと分かりません。更にはローテーションで回らないと疲労のかかり具合や回復力とのバランスなどは分からないのに、ブルペンでの「カタチ」だけで評価をしてしまうと正しいと思い込みます。正しいと思い込んでることで上手くいかないと何が正しいのか?と言う判断基準そのものが狂います。そうなると、加速して落ちていきます。


僕も自分の感覚よりも客観的アドバイスに依存した結果、自分の感覚を失ってしまったのです。


例え、普段どんなに良いフォームで投げていても投球過多で疲労がたまればフォームは崩れ、フォームが崩れれば故障に繋がります。逆に少し気になるフォームでも、投球過多にならない程度に抑え、しっかりとしたケアと休養期間を空けてあげれば故障に繋がる確率はグンと下がります。それが個性となって打者には厄介だったりするのです。「故障をしないで抑えられる」フォームとしては、これが正解ではないでしょうか。


なので、選手がゲームで抑えれている時には僕はフォームについては何も言いません。むしろ、ゲームでの抑え方の話をして抑え癖付けさせます。貴重なゲームでの勝ち方を覚える方が楽しくなります。楽しければ努力する意欲が湧くのでトレーニングもランニングも頑張ります。そうすると身体の機能も強くなって来て、結果的に自然にフォームが出来上がって来ます。


日本で「空回り思考」に陥りながら、海外でゲーム経験を積むことで成長できました。だからこそ、気付いたことです。


日本の指導者さん達には寛容な心と勇気を持って、子どもたちに試合経験を積ませてあげて欲しいと思います。出来れば、負担のかかるトーナメント方式ではなくリーグ戦方式で。野球のルールの奥深さや人間の持つ心理の面白さ、競い合うことの楽しさや助け合いの精神が持つ素晴らしさなどなど。野球チームでやらなくてはならないことも山盛り盛りですが宜しくお願いします。


最後にそもそも論ですが。

「野球チームの部費は選手がチームに所属し試合をするために掛かる経費なのに、部費を払っているのに野球をさせないのは詐欺じゃないか。ゲームをしていないのに練習で故障をして、なぜ、親は訴えないんだ?」とアメリカ独立リーグ時代にアメリカ人から言われました。ハッとしました。


たしかに。キャッチボールが上手くなっても、ブルペン投球が上手くなっても、足が速くなっても、捕球が上手くなっても…、野球が上手くなっている訳じゃないんですよね。「野球をする」って「ゲームをする」ことなんですから。


日本とアメリカ。選手と裏方。失敗と成功を経験した僕が見た文化の違いでした。




No Baseball, No Life.