今回は福岡で話題になっている下関北九州道路についてです。塚田議員の自分を大きく見せようとした発言が、また公共事業に悪いイメージを印象づけることにならないか危惧しています。

 

詳細は福岡の方はご存知と思いますが、4月7日投票の福岡県知事選挙に立候補している武内氏の支援の会合にて、応援に来ていた国道交通省副大臣の塚田一郎氏が、麻生副総理を忖度して「下関北九州道路事業を国の直轄調査に格上げした」ということを応援演説でぶち上げて、大変な批判を受けたというものです。

 

この「下関北九州道路構想」ですが、歴史は古く、1991年に関係自治体により「関門海峡道路整備促進期成同盟会」が設立されています。九州と本州をつなぐ交通基盤は、道路の関門トンネルと関門大橋、鉄道は新幹線のトンネルと普通の鉄道トンネルの四本があります。このうち、道路の関門トンネルは昭和33年開通で、できてから60年経過し非常に老朽化しています。また、関門大橋も昭和48年完成(橋長1,068メートル (m) 、最大支間長712 m)で、完成後45年が経過しています。

このように老朽化していることと、災害などがあってこのルートのどれかが止まってしまう場合のリスクも考慮して、もう一本、九州と本州をつなぐルートの建設を地元は要望していたのです。

 

ところが、民主党政権になる前の2008年3月に、麻生政権の前の福田康夫首相の時代に、民主党から公共事業全体が激しい批判にさらされたこともあり、下関北九州道路の事業についての調査も中止となりました(民主党政権下ではなく、自民党が自分でやめた事業です)。

その後、自民党政権になったこともあり、地元からの要望活動が復活し、政府は2017年度予算で福岡県庁と山口県庁が共同で行う調査事業に補助金を支給する予算をつけまして、調査が再開されました。

 

両県は下関北九州道路調査検討会を設置し、2年にわたって検討を重ねていました。調査検討会は、山口、福岡両県を含めた地元4自治体と経済団体、国土交通省の出先機関で構成されています。概略のルートをどうするのか、構造は橋にするのかトンネルか、PFIなど民間資金の活用をどうするのかなどについて検討を続けていたのですが、先月の3月8日に最終の検討会が行われ、両県の検討会としての報告がなされました。

 

産経新聞の報道によりますと、調査検討会は「山口県下関市と北九州市を結ぶ関門新ルート(下関北九州道路)について、地元自治体などで作る調査検討会は8日、両市の中心部を最短(約8キロ)で結ぶ下関市彦島迫町付近~北九州市小倉北区西港町付近とするルートが望ましく、構造形式は、トンネルよりも橋が「比較的優位」とする検討結果を取りまとめた。」とのことです。

 

 

 下関北九州道路調査検討会の会合について資料を検索したのですが、両県からは発表されていないようですので、詳細はわかりません。新聞報道では、事業費は「1600億~1800億円のプロジェクト」と書いてありましたが、その根拠も見当たりません。また、「事業評価や環境アセスメントを経て着工した場合、橋だと完成は最短で「2030年代半ば」(国交省幹部)になる。」との報道もなされていますが、これもはっきりしません。

 

 果たして塚田議員が自慢したように自分が忖度したから政府の直轄調査に格上げされたのかどうかはわかりませんが、地元自治体が調査をして、その後、政府が直接に調査を行う。この流れに不自然なところはなく、塚田議員が「麻生副総理に忖度した」などという発言は、自分の力を大きく見せようとしたもので、福岡県の自民党としては全く迷惑なものだと思います。

 そもそも、人の選挙応援に来て自分を多く見せてどうしようというのでしょうか。財務省の緊縮財政路線が効いているので第二次安部になってからも公共事業はほとんど増えていませんので、忖度したとしても、限りはあります。

なお、塚田一郎さんは、新潟県選出の参議院議員。55歳。二期目で今年が選挙。二回落選しようやく当選した方で、初当選の時には選挙違反で罰金刑を受けているらしく、今年の選挙のことが頭にあったのかもしれません。

 

この両県の調査では、需要調査やルートの優位性の優劣程度はしているはずですので、資料を全面公開すべきと思います。そうでないと、この事業がどこまで効果があるのかが判断できません。資料を公表していないという点は非常に問題です。

 政府の直轄調査では、費用対効果(BC)をきちんと評価すると思いますが、県庁の予備的な調査でも何らかの需要調査や、費用対効果を検討していると思います。そうでないと、トンネルが良いとか、橋が良いとかなどは言えるものではありません。費用対効果をきちんと示してくれさえいれば、まともな公共事業だということが分かったはずなのですが。また公共事業のイメージが悪くなったようで、とても残念です。資料を公表して、根拠ある行政をやってもらいたいと思います。