兼好法師のこの感覚、なんだか、分かる気がする。

 

鎌倉時代の終りころ、今から700年ほど前の日本人の大先輩の感覚が、理解できると思えることは、素晴らしいことよ。

 

歴史ある国に生まれた喜びに他ならない。

 

 

徒然草 139 (吾妻利秋訳)

家に植えたい木は、松と桜。五葉の松も良い。桜の花は一重が良い。「いにしえの奈良の都の八重桜」は、最近、世間に増え過ぎた。

 

吉野山、平安京の桜は、みな一重である。八重桜は邪道で、うねうねとねじ曲がった花を咲かせる。わざわざ庭に植えることもないだろう。遅咲きの桜も、咲き間違えたようで白ける。毛虫まみれで花を咲かせるのも気味が悪い。

 

梅は白とピンクが良い。一重の花が足早に咲き、追って八重咲きの花がルージュを引くように咲くのは嬉しい。遅咲きの梅は、桜のシーズンに重なり、適当にあしらわれ、桜に圧倒されて、情けなく悲惨である。

 

「一重の梅が、最初に咲いて、最初に散っていくのは、見ていて潔く気持ちがよい」と、藤原定家が軒先に植えていた。今でも定家の家の南に二本生えている。

 

それから、柳の木もオツなものだ。初春の楓の若葉は、どんな花や紅葉にも負けないほど煌めいている。橘や桂といった木は年代物で大きいのが良い。

草は、ヤマブキ・フジ・カキツバタ・ナデシコ。池に浮かぶのは、ハチス。秋の草なら、オギ・ススキ・キキョウ・ハギ・オミナエシ・フジバカマ・シオン・ワレモコウ・カルカヤ・リンドウ・シラギク、そして黄色いキク。ツタ・クズ・アサガオ。どれも、伸びきらず、塀に絡まらない方が良い。

 

これ以外の植物で、天然記念物や、外来種風の名前の物や、見たこともない花は、まるで愛でる気にもならない。どんな物でも、珍品で、入手困難な物は、頭の悪い人がコレクションして喜ぶ物である。そんな物は、無いほうが良い。

 

 

吉田兼好 原文 徒然草 139

家にありたき木は、松、櫻。松は五葉もよし。花は一重なるよし。八重櫻は奈良の都にのみありけるを、この頃ぞ世に多くなり侍るなる。吉野の花、左近の櫻、皆一重にてこそあれ。八重櫻は異樣のものなり。いとこちたく〔くどく〕ねぢけたり。植ゑずともありなむ。遲櫻またすさまじ。蟲のつきたるもむつかし。梅は白き、うす紅梅、一重なるが疾く咲きたるも、重なりたる紅梅の、匂ひめでたきも、みなをかし。「おそき梅は、櫻に咲きあひて、おぼえ劣り、けおされて、枝に萎みつきたる、心憂し。一重なるがまづ咲きて散りたるは、心疾くをかし。」とて、 京極入道中納言 〔 藤原定家 、 俊成 の子〕は、なほ一重梅をなむ軒近く植ゑられたりける。京極の屋の南むきに、今も二本(もと)はべるめり。柳またをかし。卯月ばかりの若楓〔楓の若葉〕、すべて萬の花紅葉にも優りてめでたきものなり。橘、桂、何れも木は物古り、大きなる、よし。草は山吹、藤、杜若、撫子。池には蓮(はちす)。秋の草は荻、薄、桔梗(きちかう)、萩、女郎花、藤袴、紫苑(しをに)、吾木香(われもかう)、刈萱、龍膽(りんだう)、菊、黄菊も、蔦、葛、朝顔、いづれもいと高からず、さゝやかなる垣に、しげからぬよし。この外世にまれなるおの、唐めきたる名の聞きにくく、花も見なれぬなど、いとなつかしからず。大かた何も珍しくありがたきものは、よからぬ人のもて興ずるものなり。さやうの物なくてありなむ。

 

 

以下は、与謝野晶子訳

 

 

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