【船橋市立中学校の部活動の現状(サッカー部と野球部)】

まず見ていただきたい表は、船橋市立中学校ごとのサッカー部員と野球部員の人数です。

サッカーと野球以外にも部活動はありますが、代表的な運動部活動を抽出しました。

これは本年5月1日現在での報告になりますので、現在は3年生が引退している状況になります。

ご存知の通り、野球は9人、サッカーは11人の競技です。

来年度には新入生の入部が見込まれますが、現時点で試合をするための人数が足りていないであろう部活動が複数校に存在することに驚かされます。

人数が不足している学校の中には、複数校にまたがる合同チームを組んで大会に出場している部活動もあるのが現状です。

我が国全体としてもですが、今後、年少人口(15歳未満)が増える見込みのない船橋市においても、これまでと同様の学校単位での部活動は持続可能なのでしょうか?私はそうは思いません。学校部活動は岐路に立っていると考えます。

 

【文科省の方針:学校から地域へ】

 令和2年9月、文部科学省は「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」を公表し、2023年度から段階的に休日の部活動に関する業務を地域に移す方針を示しました。つまり、学校単位の部活動を地域単位に移していくという方向です。

文科省は、急激な変化を避けるために、まずは「休日の部活動」に限定したのだと思いますが、将来的には「平日」もそのような形になっていくことが予想されます。

現時点では、各都道府県や政令指定都市に拠点校(地域)を設けて実践研究を実施しています。

また、4年前に導入された部活動指導員制度も広い意味での部活動の地域移行に含むことができると考えますし、[i]  総合型地域スポーツクラブや民間スポーツクラブとの連携も考えられます。

 

【部活動を地域活動へ移行することの長所と短所】

部活動を地域活動に移行していくことにどのようなメリットとデメリットが考えられるでしょうか?

最も大切なことは児童生徒への影響です。

最大のメリットは子どもたちが専門性の高い指導を受けられる可能性が高いことだと思います(指導者にもよりますが)。学校部活動では、顧問の半分ほどが未経験の競技の指導にあたっている現状があります。地域には様々な人材がいる可能性がありますし、部活動指導員や地域のスポーツクラブにはそのノウハウが高いと考えられます。

また、学校部活動ではできなかった競技や活動ができる可能性もありますし、入退部の自由度が増すことも考えられます。そして、多様な人たちとの交流により成長できる可能性もあります。

デメリットとしては、学校管理下よりも児童生徒にとって過大な負担となってしまう可能性がありますし、送り迎えや費用など家庭の負担が高まってしまう点はあるかもしれません。

しかし、そこでかかる費用は国や自治体(船橋市)が負担すべきコストであるという考え方もできると思います。何より議論を始めることが大切です。

 

教職員や学校にとっての影響という意味では、やはり、部活動指導の負担が減るということが最大のメリットではないでしょうか。

授業の準備などの本来業務に、より時間と労力を割けるようになります。

端緒としては、児童生徒との関係性をつくりにくくなったり、教師としてのやりがいが下がってしまう教職員もいたりするかもしれません。

しかし、文科省は部活動が地域に移行したならば、教職員に兼職の許可を出し、そこで指導することを認める制度を検討しています。やる気のある教職員はそこで指導にあたること、児童生徒と関係性を築くこともできるのです。

 

地域にとっての影響としては、学校との関係性がより深まることや、地域の文化スポーツ活動が活性化し、地域が盛り上がること、地域のつながりが深まることなどのメリットが考えられます。地域によって差(人材や施設等)が出てしまう可能性はありますが、資金拠出やインフラ整備、人材の派遣など、その差を埋める役割を果たすことが行政(自治体)の役割だと考えます。

 

【地域移行へのロードマップ】

総合的に考えると、部活動は学校単位から地域活動にシフトしていくべきであると考えますし、船橋市はその移行のための準備に着手すべきだと考えています。しかし、現在の学校単位の部活動をそっくりそのまま地域に移そうという発想では非現実的であり、具体的なロードマップが必要になると考えます。私の考えは以下の通りです。

 

(1)    合同部活動を増やす

現在の船橋市では、上述した通り、野球部とサッカー部でそれぞれ4校が2つの合同チームを結成しています。しかし、これは人数が足りないことによる「仕方ない」措置ですが、この動きをポジティブに考えて加速化させることが必要だと考えます。冒頭で述べた通り、すでに船橋市内でも1・2年生だけでは競技規則通りの人数が揃わない部活動が複数あります。まずはそれらを複数校での合同部活動にしていくことです。そうすれば、子どもたちは大人数で練習できます。そして、会場は1箇所(1校)ですみますし、指導者(顧問等)も集約化できます。児童生徒にも教職員にもメリットになります。

 

(2)    人材バンクを整備する

地域移行に備えるにあたって最大の課題の一つは指導者の確保だと思います。平日の夕方に手が空いている成人はなかなかいらっしゃらないと思います。今からでも、地域の協力者をはじめ、定年を迎えた元教職員や大学生などの人材を登録しておくこと。そしてなにより、地域部活動へ移行した後も児童生徒を指導したいという現役の教職員を募っておくことが重要です。また、民間のスポーツクラブなどとの連携(指導者派遣等)の道を構築しておくべきだと考えます。

 

(3)    総合型地域スポーツクラブを増やす

(1)と(2)で対応している間に、地域ごとに総合型地域スポーツクラブの整備を進めておく必要があると考えます。部活動の地域移行には様々な形があると思いますが、最終形態の一つが総合型地域スポーツクラブだと思います。現在、船橋市内には4クラブ存在します。本市では、平成10年から設立の動きはありますが、増えていません。課題は参加者の減少、活動場所や指導者の確保等です。

教育委員会や学校が地域部活動への移行を本格的に進めるようになれば、児童生徒がメンバーになることによって参加者の問題は解決されますし、学校を使えるようになれば活動場所の問題もクリアです。また、現役の教職員や部活動指導員、そして、民間クラブ等のインストラクターなどの参加によって指導者の問題も解決できます。

資金の問題については、一部は参加者の負担も発生すると思いますが、国や市による補助が大いに期待できると考えます。部活動は教育活動の延長でもありますし、集団での活動を通じた人間形成の機会としての青少年育成事業でもあります。さらに、地域の活性化やソーシャルキャピタルの醸成などの効果も考えれば行政が補助をしないことは考えられません(むしろ、こういう活動にこそ行政は支援をするべきと考えます)。

 

長年にわたって学校単位で行われてきた部活動はある意味、我が国の文化・慣習のようなものです。それを地域に移行することは大変なことだと認識しています。児童生徒の中には部活動を楽しみにしている子もいると思いますし、期待している保護者も一定数いると思います。教職員の中にも生きがいとしている人もいると思います。部活動での成績が内申点になる場合だってあります。

私自身、学生時代には野球部に所属し、部活動の良い面もたくさん知っているつもりです。しかし、これまでと同様の部活動の形は、生徒数の面や教職員の負担などの点から、今後は持続可能ではないと思うのです。新しい部活動の形を今から模索していくことは大切なことだと考えますし、すでに文科省は動いています。船橋市も2023年度以降の「部活動地域移行」に備えて、今から準備しておく必要があると思います。

 

[i]  総合型地域スポーツクラブは、人々が、身近な地域でスポ-ツに親しむことのできる新しいタイプのスポーツクラブで、子供から高齢者まで(多世代)、様々なスポーツを愛好する人々が(多種目)、初心者からトップレベルまで、それぞれの志向・レベルに合わせて参加できる(多志向)、という特徴を持ち、地域住民により自主的・主体的に運営されるスポーツクラブです。

  我が国における総合型地域スポーツクラブは、平成7年度から育成が開始され、平成29年7月には、創設準備中を含め3,580クラブが育成され、それぞれの地域において、スポーツの振興やスポーツを通じた地域づくりなどに向けた多様な活動を展開し、地域スポーツの担い手としての役割や地域コミュニティの核としての役割を果たしています。(スポーツ庁HPより引用)

 

2021年10月27日 船橋市議会議員 石川りょう