第15回湘南国際マラソンの記者発表をザプリンスパークタワー東京で開催した。


 コロナ禍で軒並み市民マラソン大会が中止や延期を余儀なくされている状況下での発表だった。全国には2000万人近いランニング愛好者がいる、市民スポーツで大会が開催されないのは甚だ寂しい思いをずっと抱いてきた。コロナの感染は未だ終息の見通しが立っていないが、ランニング愛好者だけでなく社会自体が前向きに進んでゆかなければ何も解決してゆかない、という思いを含め湘南国際マラソンは開催に向けて模索してゆく、という意思表示のひとつなのである。コロナに関してはワクチンや治療薬の開発だけでなく罹患者の収容施設強化など官民一体で取り組んでいる最中だが、一方でコロナ禍が沈静化した後の社会では次のステージに向かう「目標」や「励みになること」を同時進行で準備することが必要だ。


 数万人規模で開催されるマラソン大会は単に愛好者の走り心を満足させる催し、というだけでなく地域の経済振興、観光振興、救護体制の確立、スポーツボランティアの育成など多くの効果・効用を生み出してきていたが、一方で大会を開催することで大量のゴミや廃棄物が発生するのも事実。これらのゴミ、特に環境汚染につながるような無機物(プラスティックなど)を〝0(ゼロ)〟にすることができれば・・・、という発想が「マイボトル、マイカップ持参」大会開催に繋がっていったのである。

 

 コース上3~5km毎に設置される給水所も多くのボランティアスタッフの協力で賄っていたが、ランナーが自前のボトルやカップ持参であれば補水できる道具を一定間隔で置けば、あとは給水スタッフだけを配置することで給水の用が足りる。この方法が多くの市民ランナーの皆さんに受け入れられ定着するよう根気よく継続してゆこうと思う。


 また2万人規模のマラソン大会では約50トンの飲料水が必要である。視点を変えると局地(コース上)に50トンの給水が可能となるため、この方法を転用すれば局地災害が発生した場合50トンの飲料水供給ができる、ということになるため防災に活かせる、という利点がある。つまり市民スポーツイベントの運営技術を地域防災とリンクさせれば一石二鳥の活かし方ができる、ということである。


 国内で開催されているほとんどのマラソン大会は地元自治体自体が主催者のため、斬新なアイデアや手法を取り入れることがなかなか難しい。欧米や西欧のマラソン大会はそのほとんどが大会ディレクター中心で開催されるので大会内容も運営方法もディレクターの一存で縦横に可変することができる。そういう意味では湘南国際マラソンは国内唯一の海外型マラソンといえる。

 

 今回は脱プラスティック、給水のコンパクト化、防疫対策の3点で大会運営の大幅改善を図ったが、この方法が定着し普遍的に他のマラソン大会にも波及してゆくことを見つめながら、さらに楽しいスポーツイベントに育つよう足を止めることなく工夫と改善をすすめてゆきたいと思う次第だ。