稼働率100%の危険性。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

僕は、大きな災害があったときに、そこに大切な人がいたとしても、

安否確認の電話をしません。

 

なぜなら、災害の真っ最中の人にとって、電波も電池も貴重だからです。

それを、僕個人の「ほっとする」ためだけに消費するのは、申し訳なさ過ぎます。

 

僕は、駐車場に車を止めるとき、可能な限り遠くに止めます。

なぜなら、僕は健康で、歩くことを苦にしないからです。

近い場所は、具合が悪い人や、足がいたい人が使うべきだと思います。

 

だからこそ、大きな災害が予測されるときは、

「休んでもカバーできる。」「休んでもリカバリーできる。」会社は、

休むべきだと思います。

 

なぜなら、介護の仕事や、病院など、決して休めない仕事に、

貴重な輸送能力や水や食料や電力というリソースを回すためです。

 

優先度のコントロールは、人生においても、ものすごく重要なことです。

人生には限りがあります。お金にも時間にも限りがあります。

それを、最も効率的に使えるように、よくよく思考する必要があります。

でも、それができていない会社は沢山あります。

僕は、炭鉱の町で生まれたので、一生続く仕事がないことを知っています。

だから常に、今の仕事は遠からず消えるかもしれない、だから新しい道を付けなければ、

と考えています。

そのために必要なのが、会社の余力です。

そのために大切なのが、利益率の向上です。

植松電機は、売り上げを落としてでも、利益率を上げる努力をします。

それは、いざというときのためです。

しかし、すくなからずの会社は「なんとか今の仕事が続けばいいな」という、

自分に都合のよい希望的な観測を基に、おなじ事を繰り返しています。

その結果、利益率が低下し、ついには、いざというときにも、

別なことがまったくできなくなります。

 

アリは、20%が働かない、と言われていますが、

その20%は、いざというときの備えだそうです。

植松電機は、人的資源を、40%〜50%余裕を持っているようにしています。

だからこそ、マグネット以外の新しいことの研究開発ができます。

だからこそ、会社の仲間は、「家族の為に休む」ことができます。

だからこそ、災害が予測されたら休むことができます。

 

太平洋戦争中、日本軍の前線は稼働率100%だったそうです。

毎日毎日出撃。

それに対して米国軍は、しっかり交代と休養をとらせます。

日本軍は、どんどん人が損耗していくのに、米国軍は人が成長していきます。

 

稼働率100%の会社は危険です。変化する社会に対応出来ないでしょう。

稼働率100%では、人を育てる余力もないでしょう。

精神論で商売がうまくいくなら、第二次世界大戦で日本は勝っているでしょう。

 

企業の経営者は、過去から学ぶべきです。

会社の仲間のためにも、そして、社会のためにも、

企業の利益率を向上させる努力をし続けたいと思います。

(うまいことやって儲ける、じゃないよ。付加価値の向上ですからね。)