USB充電器 Lilnob 3C1A 100W CIO-G100W3C1A を入手しましたので、

 

他の 100W クラスの充電器同様の測定 をしました!

 

Apple純正96W品との比較

 

スペックの似ている TUNEMAX 100W GaN との比較

 

最大出力以外の機能が同等の UGREEN 65W GaN 3C1A との比較 

 

 

 急速充電機能:

 急速充電の為の機能は、筆者が所有する充電器のなかで最強でした。

 #1 / #2 ポート

 

 #3ポート

 

 #4ポート

 

 試しに#4ポート(Type-A)に接続してQC3.0でトリガを掛けて20Vまで上げた後にRampUpで少しづつ負荷を上げてみたところ 20V 2.4A 付近で出力がカットされましたので 48W までは取り出せました(仕様では30W)。実際には 45W 辺りが限界と思います(当然ですが常用域は仕様通り30W前提)。

 

 

 

負荷応答/電圧補償:

 90~100Wクラスでは最も優れた負荷応答と電圧補償の性能を示しました。

この様に、負荷を0から最大まで上げ、かつ突然ゼロまで下げてもケーブルによる電圧降下を補償しつつ負荷変動にも瞬時に応答しており、電圧に全く変化が無く(最大で0.06V)素晴らしいです。Apple純正品の電圧変動が0.3Vですが1/5です。上の画像とは別の個体で矩形波の極端な負荷を掛けてみましたが、やはり電圧変動が殆どないく素晴らしいです。

 

発熱:

 他の機種同様に95%負荷で2時間経過後の表面温度を観察する予定でしたが、開始後40分で90℃を超え、70分で100℃を超えました。ほぼ同じ状況下でApple純正96W充電器は2時間経過しても60℃なので、大きな差です。

 同じ物を2台購入して、2台とも40分で90℃を超えましたので初期不良や個体差ではないと思われ、しかも、この時点で高温による保護回路は働かず、このまま温度が上昇し続けそうで怖かったので、残念ながら2台とも測定を中止しました。ほぼ同じ温度上昇カーブの AUKEY PA-B5 は92℃で保護回路が働き充電ストップするので放置していても温度が下がってゆきますので、その点でも大きな差です。

 クラウドファンディングの時点では 170g という軽さが売りでしたが、発熱問題への対策から放熱樹脂注入により210gになった報告が有り確かにキッチン用の秤で測定すると 200g 以上でした。が、放熱樹脂の注入にもかかわらず 40分で90℃、70分で100℃超えるのは、どうなんでしょう。。。

 環境温度 22℃ で、風通しの良い状態での測定です。ちょっと残念。

 

 上の温度測定画像は FLIR 製サーモグラフィで撮影したものです。

 追試:

 2番目のType-C ポートで試したところ2時間完走できました。

 下記のログでは81.5℃ですがセンサの位置での温度なので最大温度の部位では94℃でした。2番目のポートに変えた事で熱が分散され廃熱が多少改善したのかもしれません。高温になる場所が違いました。

 

 開始20分辺りで温度のグラフに急激な落ち込みが有りますが、これはセンサを固定していたシールが剥がれてきた為、張替えた際の落ち込みです。この手前から徐々に下がっている部分はシールが徐々に剥がれてきてセンサへの熱伝導効率が悪化した結果を記録した形になっています。20分以降は正常です。

 また、開始時点で既に負荷が掛かって温度も室温より2℃高いところからスタートしていますが、これは、ロガーソフトがバグっていて、ゼロスタートで温度センサの値を取り込もうとするとするとExceptionが発生してログソフトが落ちる為で、仕方なく負荷を少し掛けて数分経過してからログを取り始めた為です。

 

 

リプルノイズ:

 全体的に通常のリプルノイズとは別に大きな正弦波が重畳されている様で、負荷 50% 辺りで最大になり、他の機種の4倍くらいのノイズが出ている可能性が有ります。

 

 下のオシロスコープ画像の通り重畳されている正弦波が何らかの外的要因の可能性も捨てきれませんが、GNDを接地して測定しており、かつ、同じ環境で測定しても他の機種では、この様な正弦波の重畳は無いのです。。。D級アンプの出力波形みたいですね。時々単発の大きなエッジが立つ事や、小さな正弦波の重畳は他の機種でも有りますが、これほど大きな正弦波が定常的に重畳しているのは、この機種だけです。

 下図の様に 0.4V ほど出力が常に変動しています。PPSではなく旧来の Power Delivery 固定電圧でトリガを掛けて 20V 設定にしていますのでPPSでトリガした影響では無いです。また、この正弦波は、この時5.6kHz(波形から計算すると4kHzくらい)ですので可聴帯域ですから高音域のキーンという音でコイル鳴きが発生する直接の原因になる可能性があります。電源回路・充電器回路にコイルは必須パーツですし、コイル鳴きの原理はスピーカの原理と同じですからスピーカの振動膜相当の何らかの物体が(場合によってはコイルそのものや基板などが振動膜の代わりとして)コイルに接触している場合に5.6kHz(4kHz)の音が充電器から聞こえてくる事になると思われます。

 

 

 追試:

 2番目のType-Cポートで計測したところ、上図と同じ負荷ですが下図の通り、むしろ平均以下の良好な値です。何度か1番と2番を差し替えてみましたが変化は無く、また、コンセント側も L/N を何度か挿し変えてみましたが、こちらもやはり変化なしでした。

 ※ Type-C #2ポートのリプルノイズ

 

 

 追試2:

 1台追加購入し、同じ事をしてみました。結果、#1ポートの正弦波重畳がありました。たぶん、何かと共振してるんじゃないかと、、、#2ポートに近い状態の時もありましたが、負荷を上げてゆくと大きな波がうねりだしてから正弦波がぱっと出てくる事があり、1台目と出方がちょっと違いますが、2台目も400mVppくらいの正弦波がでました。何度か試していると#2ポートや#3ポートでも発生する事がありました。

 2台とも 400mVpp の正弦波が出ましたし、同じ測定方法で他の機種や他のポートでは発生しない事から、初期不良ではなく、この機種固有の問題もしくは測定に利用した負荷と本充電器を組み合わせた場合にだけ出る現象のどちらかになると思います。そこで、全く異なる仕様の電子負荷を3種類用意して正弦波が最大になる 20V 3A 付近の負荷を掛けた場合の波形を後ほど比較してみようと思います。

 実用面では、接続した機器やケーブルによっては全く問題ない場合が殆どと思いますが、特定の機器を接続すると動作不良になる場合があるんじゃないかと思います。

 

 追試3:

 4種類の電子負荷×4機種のUSB充電器で波形を撮り直してみましたが、波の大小はあるものの何らかの波が重畳している状況に変化はなく、共振もしくは発振していると思います。

 一緒に測定した4機種の充電器は、

 ① 本機

 ② 直接の競合品と思われる TUNEMAX 100W GaN

 ③ 最大出力以外の機能が同一の UGREEN 65W GaN 3C1A

 ④ 基準としてApple純正96W品

 

 追試3-1:電子負荷一号機(電子負荷 180W)

 

   
 元々使っていた電子負荷です。製造元不明。2時間耐久試験用に購入しましたが発熱が少なくて静かなので、電子負荷は普段これを使っています。
 下図の通り発振しているのは CIO 100W 3C1A のみです。
 

 

 追試3-2:電子負荷零号機(電子負荷 100W)

 筆者が一番最初に購入した電子負荷です。製造元は不明です。当初は65Wまでしか使わなかったのでコレで充分でしたが100W充電器を購入してからは、これだと余裕が無い事と、爆音ファンが長時間は厳しいので上記した負荷一号機を購入後は利用していませんでした。
 この負荷を利用した場合、波打ってはいますがエネルギー的には負荷一号機の時と比べて1/10以下で発振と言える程ではなく、この程度なら問題ないと思われます。むしろApple純正品よりノイズが少ないと言えるかもしれません。
 
 

 追試3-3:電子負荷弐号機(HD35 QCトリガ付き電子負荷 並列接続)

 この電子負荷単体では35Wまでしか利用できませんが、Yケーブルなどを使って並列に接続してゆけば100Wでも大丈夫です。この負荷の良い点は 0.01A 単位で負荷の微調整が簡単に出来る事と他に電源を必要としない事、それと電源切っても負荷設定値を覚えているので扱いが簡単です。ファンが自動でOn/OffしますがCT-3で見る限りではファンによる電源側への影響が出ない不思議さがあります。他の電子負荷は別電源をとっており、別電源からファン動力を得ていますが、この電子負荷はファン動力も負荷と合算して対応しているのかもしれません。

 この負荷を利用した場合、負荷零号機の時と傾向は全く同じと言えます。

 

 

 追試3-4:電子負荷初号機(AVHzY CT-3 SM-LD-00)

  

 CT-3と一体型の電子負荷で、CT-3本体側からGUIを使って負荷を詳細に設定できますが負荷コントロールやファン動力などには別電源としてmicroUSB端子から5V供給が必要です(負荷に影響しない様にするには、本来そうあるべき)。PCと接続して専用ソフトを利用する場合は直接キーボード入力で1mA単位で最大6Aまで入力でき、概ね設定した負荷(精度は20mAくらい、電源側の変動にもよる)になります。この電子負荷はGUIからRampUp設定で負荷を自動で変化させる事が出来る優れもので、充電器やバッテリの限界性能を引き出しログを残す事が出来ます。小型なので長時間には向きませんが100Wに耐えますし非常に細かく設定できるので数分程度の短時間の負荷なら物凄く使い易いです。しかしPC用アプリはバグっていて時々異常終了するので筆者の様にアプリ開発に慣れた人でないとアプリを利用するのは厳しいかもしれません。PC用アプリの完成度はβ版程度です。

 ここで紹介した電子負荷の中では(PC用アプリの件を除いて)最も安定して測定できています。本来のリプルノイズ成分と思われるものは 7mVpp / 2mVrms 程度しかなく、それだけならもの凄く低ノイズなのですが、別の大きな波が重畳しているのが本当に惜しいです。

 

 

 

出力:

 

 

 

カタログスペック重視の製品:

 こちら↓のグラフは、Apple 純正 96W 充電器(赤線)と LilNob (青線)の比較です。Apple純正品は頻繁に比較対象として随所で登場していますが、外見上のサイズの比較ばかりで、こういったグラフの形で比較しているのは目にした記憶が無いです。

 グラフは前の記事に機種毎に掲載しているものと同じ測定値を元にしています。

 CIO Lilnob 3C1A 100W は目に見える部分のスペック(グラフ右上側)に特化している事が判ります。

 逆に、Apple 純正品は、どちらかと言えばグラフ左側、目には見えませんが、常用する上で大切な部分の品質が高くて好感が持てます。

 

 サイズが小さくて軽い事は、確かに一見するとスマートに見えますが、CIO LilNob 3C1A はカタログに書かれるスペックに偏っていて中身が疎かに成っている感じが否めず、それって本当にスマートなのだろうか?と思うのです。特に熱対策は安全上の点でAppleが信頼できると思う一方で CIO LilNob 3C1A G100W3C1A は中華品質の怪しさが中身に漂っています。また、発送時の梱包もCIOは要注意です。過剰梱包を避ける意図が有るそうなのですが、届いた時に箱が綺麗な状態で届く事は無いだろうと思えるほどの簡易包装で、むしろ傷が有ったり故障していたりしてもおかしくない程の簡素な梱包(具体的には、紙の封筒に入っているだけ)で、中身が重量物なので衝撃や落下による損傷は不可避と思われます。

 
 
後書き、、
嬉しい記事を書きたかったので残念ですし、この記事自体、ちょっと掲載を躊躇しましたが、あえて、掲載させて頂きました。
PC電源の場合は、80PLUS という規格が有り、この規格に適合するには事実上 ActivePFC 搭載でノイズ対策が必須ですが、対して、USB充電器には、恐らくそういった規格が無く(但しEU圏では100W以上の電源にActivePFC必須)、なんと言うか中華の怪しい町工場の内製品がいつのまにか公然の規格みたいになってゆく風潮が有るのが少し悲しいです。結果、筆者の様に数多く買ってしまい、痛い目を見るという・・・
強いて言えば Type-C PD の様な規格は有りますが、それは USB 部分限定の規格であってコンセント側への配慮や充電器として発熱の
問題に対して、どの様に対処するかなどは恐らく決まりがなくて、PSEを取得している状態でありながら高負荷時に表面温度 100℃ を超えて動作し続けるっていうのが、どうなんでしょう。工場に任せっきりにしている場合、PSE取得時にはちゃんとしていたけど原価を抑えて利益を出す目的で連絡無しに保護回路を省いたなんて話は、中華サプライヤを相手にしていると常に想定されうる状況です。
 
爆発炎上事故とかの原因にならない事を祈るばかりです。。。
 
怖いけど、#1ポート側で爆発覚悟で屋外で2時間耐久に再チャレンジしてみようかな・・・ 
 
中華サプライヤと交渉する際には『チャンピオンサンプルに気を付けろ』という言葉が有りますが、クラウドファンディング時に登場した170gのサンプル品には特別に高価なパーツを利用して高効率で低発熱を実現して信頼させて発注を勝ち取り、量産時には廉価パーツを使って製造原価を抑えて利益を出し、低効率で高発熱で重量が重くなったものを大量納品した。そんな裏の事情が透けて見えてきます。上海や深圳の電子工場を巡って商談を前提とした工場見学に行くと概ね工場長クラスの熱烈な接待を受け、お土産まで頂く事も多々あります。そこで友好を感じてしまうのが日本人ですが、その表情を見てしめしめと思うのが中華の文化です。実際に発注して生産を委託する際には工場内の立ち合いと個々のパーツの抜き取りによる検品など現地に常駐して細かくチェックを実施すべきで、完全に任せてしまうと現場の勝手な判断で、どんどん安いパーツや特許侵害パーツに置き換えてしまいますし、工程を省いたり勝手に仕様変更して保護回路を省略したり落下品を梱包して出荷したり、パッケージが凹んでいても全く問題ないという顔で出荷します。信じられない事を平然とやってしまうので、いちいち指摘して状態を維持しておかないと、どんどん劣化してゆきます。それが中華工場の実態です。大手メーカや中堅メーカは現地駐在員がコントロールし、あるいは品証部門に日本人を常駐させたり、工場長そのものを日本人にしたりして対応し品質を維持しています。しかし、中堅以下のメーカには、そういった現地駐在を置く体力が無い場合があり、エッジの立つ製品が出やすい反面、品質面で危うい状況があると今回改めて思いました。