だいすきな子がいます。


でも、だいすきな子をだいすきになった理由を全然覚えていません。


覚えていないけど、だいすきでよかったなあ、間違いはひとつもないなあといま、思うのです。





格好つけだからあまり自分からは言わないけれど、いろんな人のことを考えて、気持ちを汲んで、自分が引いてことが治るなら迷わず引くようなそんな人。さりげなくさりげなく、縁の下にいることが美学のような人だから、見ていてもどかしくなったし、自分で言わない分みんなにもっと知ってほしかったし、報われた時にはほんとうに誰よりも嬉しかった。


名前の通り、人のことを想うことができる子。もうだめだって時、誰かに言ってほしい言葉ってあるじゃないですか。そのちゃんは、まるで全部見えているかのようにいつも、その言葉をくれるのです。誰のなんの言葉も棘になってしまうような時にでも、そのちゃんの言葉だけはなぜかスッとはいってきて、私は何度も何度もその薬のようなものを飲み込んで立ち直って来ました。


一方の私はというと、事実としての魅力をこんこんと説くくらいのことしかできないのだけれど、きっとそれもそのちゃんは大事にしまってくれていたと自負しています。

私たちの想いの天秤は、傾いてるようでいつだって隣同士にあったのだと、信じられることが心から幸せで、そう信じられるだけの出来事を、みなさんにお裾分けしていた何倍も過ごして来ました。ひそやかに、ひそやかに。


そんなことを言いながら、数えきれないほど出かけたわけでもなく、交友的に言えばお互いもっと他にもいるのです。もちろん仲はいいけど、「仲の良いメンバー」という名前はどこかむず痒く似合わないような感じがして、だけど、やっぱりそのちゃんはそのちゃんしかいなくて、きっとそのちゃんはそれを分かってたし、そのちゃんにとってもそうなのかもしれないですね、もう何ヶ月も前から、少しずつ少しずつ、今日という日の準備をさせてくれていました。



でもやっぱりそれでも、

そのちゃんと見たかった、そのちゃんに見せてもらいたかった景色がまだまだたくさんあったよ。


苦しくて、悲しくて、どうしようもないくらいで、例えば私がそのちゃんみたいになにか薬になるような言葉をかけられてたなら、もう少し一緒にいられたのかなとかそんなことを考えたけど、今日はきてしまって。それでもまだ、私に何かできてたかなとか考えちゃう。そのちゃんは何回も私を助けてくれたのに、って。




ほんの何日か前に不意にかかって来た電話。眺め続けた天井が頭から離れません。

二人して涙が止まらなくなっちゃって、切るのも惜しくなっちゃって、バイバイって言った後もすぎる秒数を眺めちゃって、笑い合ってまた続けて。そんな時間すら恋しくて、でもそうさせてるのは卒業があるからだという皮肉さが切なかった。


そこでもそのちゃんは、ずっとずっと言ってほしかった言葉をくれました。そのちゃんだってきっと、なにかを求めて電話をかけてくれたのに、また私ばかりが助けられてるなあ、敵わないなあと思いました。だいすきだなあ、と思いました。


だいすきのきっかけはやっぱり思い出せないけど、だいすきの正体は分かりました。そのちゃんの、誰かを想う気持ちと、私を想ってくれているという事実。つまりは私は、本質ごとだいすきというわけです。



あと少しの間に、どれだけの想いを返せるでしょうか。いくら時間があっても足りないくらいだけど、限りある時間の目一杯、そのちゃんのことを想い抜いていきます。

ぜんっぜん大丈夫じゃないし、大丈夫なふりしても見抜かれるそのちゃんの前で大丈夫なふりするつもりも毛頭ないけど、できる限り笑顔での記憶を重ねていけるように。




そういえば前に想乃ちゃんに、「同期の卒業発表に立ち会うことがない」とこぼしたことがあって、「じゃあ想乃がHでしようか?」とニヤニヤ言ってたことがあったんだけど、居ることはできました。この時はな〜大丈夫だったんだけど、裏で想乃ちゃんと会った瞬間だめだったな〜


そのちゃんも頑張ってたんだろうね、気づいたら抱きしめあってました。



あ〜〜〜もう

本当にだいすき

どんなに言っても軽くならないだいすきだし、こんなにだいすきになりたくなかったくらいだいすき

愛おしくて、可愛くて、かっこよくて、もう

全部がだいすきだよ

ずっとずっとだいすきだから

そのちゃんはそのちゃんのまま

どこまでも自由でいてね