皆さん、こんにちは。

船橋市議会議員の石川りょうです。

 

表題の通り、今日は、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の均衡という観点から船橋市の財政について考えてみたいと思います。

プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは、歳入のうち公債(船橋市でいえば市債)発行以外の収入(税収等)と、公債費(借金返済額)を差し引いた歳出との収支のことです。この均衡を図るということは、歳入面における新規の市債発行と、歳出面における公債費との収支均衡を図るということです。これは、過去に借りた債務(借金)の返済に充てる費用以上には市債を発行しないということでもあります。つまり、プライマリーバランスの均衡を目指すということは、市債残高を現在以上には増やさないことを意味します。

 

それでは最初に、船橋市の市債残高を見てみましょう。

 

▲グラフ①:財源調整基金と市債残高の推移

 

▲グラフ②:市債残高の推移

 

大変な金額に膨れ上がっています。

全体では3,000億円以上、一般会計でも1,900万円以上です。

この金額を返済できるのか?と思ってしまうくらいです。

実際に、その借金を返すために、毎年何十億という公債費を支払っており、その額は年々膨らんでいます。

 

▲グラフ③:公債費の見込み

 

グラフ③は令和元年度に策定された船橋市の将来財政推計による公債費の見込みですが、その額は令和元年度では148億円ですが、令和4年度以降は毎年170億円を超えると見込まれています。

 

それでは、プライマリーバランスの考え方に沿って実際に計算してみましょう。

上述した通り、プライマリーバランスとは、歳入のうち公債発行以外の収入(税収等)と、公債費を差し引いた歳出との収支のこと。

令和元年度の決算で見てみると、

 

▲令和元年度と平成30年度の一般会計歳入決算額

 

▲令和元年度と平成30年度の一般会計歳出決算額

 

【令和元年度】

①公債発行以外の収入=213,107,787千円-20,502,100千円=192,605,687千円

②公債費を差し引いた歳出=209,598,311千円-15,487,251千円=194,111,060千円

③収支=192,605,687千円-194,111,060千円=-1,505,373千円

収支はマイナス15億円ということになります。

 

【平成30年度】

①公債発行以外の収入=208,489,570千円-21,196,940千円=187,292,630千円

②公債費を差し引いた歳出=204,901,108千円-14,570,072千円=190,331,036千円

③収支=187,292,630千円-190,331,036千円=-3,038,406千円

収支はマイナス30億円ということになります。

 

令和元年度と平成30年度との間に倍の差があるため、平成29年度も見てみます。

①公債発行以外の収入=212,923,330千円-26,307,000千円=186,616,330千円

②公債費を差し引いた歳出=208,221,875千円-14,641,767千円=193,580,108千円

③収支=186,616,330千円-193,580,108千円=-6,963,778千円

収支はマイナス70億円に近いということになります。

 

平成28年度は、

①公債発行以外の収入=207,898,271千円-23,930,100千円=183,968,171千円

②公債費を差し引いた歳出=203,902,256千円-14,381,114千円=189,521,142千円

③収支=183,968,171千円-189,521,142千円=5,552,971千円

収支はマイナス55億円ということになります。

 

つまり、船橋市において、プライマリーバランスの均衡を目指すとなった場合には、令和元年度をベースにすると、15億円の歳出削減が必要になるということです。それ以前の水準だと、30億円以上の削減が必要となってしまいます・・・。しかし、以下では最新の値をである15億円を使うことにします(今後の値がこれ以上悪くなっていないと信じて)。

*理論的には歳入増でも可能ですが、15億円を生み出すほどのことはできないと思います。

 

一時的に(単年度で)15億円減らすという意味ではありません。

毎年コンスタントに約15億円の歳出削減を図らなければならないのです。

つまり、毎年恒常的にかかる経費(経常経費)から15億円も削らなければならないということです。

経常経費には、人件費や扶助費などの義務的経費も含まれますので、この削減は容易なことではありません。

しかし、そのくらいしなければ、本市のプライマリーバランスの均衡は図れないということになります。

 

だったらプライマリーバランスの均衡なんて目指さなくてもいいじゃん?という考えに至るかもしれません。

しかし、それは将来世代(未来の船橋市の子どもたち)への負担の先送りになります。

そしてそもそも、このままの財政状態だと、本市の財政は立ち行かなくなってしまいます。

 

なぜ、これまで船橋市は現在のレベルの財政状況を保てたかと言うと、市の貯金である財源調整基金(財調)を毎年40億も35億も切り崩して予算に組み入れ、決算で余った金額をまた貯金に入れるという方法を繰り返してきたからです。余った金額はありますが、使った金額の方が多かったので、残高は右肩下がりになっています。この金額だと、あと数年で貯金はゼロになると思います。ゼロになったらどうなるのか?当然、これまでと同じような財政運営はできません。それが意味することは、これまでと同等の市民サービスが維持できなくなるということです。例えばではありますが、現在は子どもの医療費が1回300円ですが、この金額を維持できなくなるかもしれない。道路に穴があいていてもすぐに直らないかもしれない。敬老会への補助金がゼロになってしまうかもしれない。つまり、強制的に身の丈に合った行財政運営に変更を余儀なくされるということです。

 

そうなったときに考えればいい、実際にお金が無くなったときに強制的に行革をすればいいという考え方もあるとは思います。

物理的に無理な状況を作って「仕方がないからやる」という方法を取った方が行政としても楽だと思います。

しかし、そうなってしまった場合、その時の世代にはかなりの痛みとショックを伴います。

そうならないために、私は、今から徐々に行財政改革を進めていかなければならないと思っているのです。

 

すでに船橋市は行財政改革をやっているじゃないか!?というご意見があると思います。

はい、確かにやっています。

令和元年度から2年度の2年間で約22億円削減したという成果もあります。

しかし、これでは足りないのです。

なので、令和元年度もプライマリーバランスの均衡を図るためには約15億円も足りないのです。

 

じゃあ、どうすればいいのでしょうか?

上で少し触れたように、徴税をさらに強化するなど、歳入を増やすこと。そして、人件費や扶助費といった聖域(義務的経費)にも踏み込んで大幅に歳出を減らすことです。しかし、何より大切なこと、と言いますか、絶対にしてはならないことは、これ以上の借金(市債)を増やすことでだと考えます。

 

今後の船橋市に絶対に必要な政策には、老朽化・狭隘化した医療センターの建て替えや、耐震性の著しく落ちた消防本庁舎の建て替えなどが控えています。ここに児童相談所も加わるかもしれません。これらの事業を実施するためには、さらなる市債の発行が控えています。しかし、市民の生命財産を守るという自治体の基本を考えると、これらは必要な政策だと思います。

 

しかし、海老川上流地区のまちづくり(メディカルタウン構想)はどうなのか?この開発事業に100億円以上の市費を投入するというのは現実的なのか?できるものならやった方がいい事業だとは思います。しかし、この財政状況で果たしてできるのかどうか?私にはとてもできるとは思えないのです。

 

2021年5月10日 船橋市議会議員 石川りょう

石川りょう公式ホームページ